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インチアップ&低扁平タイヤはスポーティ でもなぜ最高峰F1のタイヤは13インチで厚いのか

くるまのニュース / 2020年8月19日 11時50分

いまでは18インチは当たり前、ハイパフォーマンスカーでは19インチや20インチ、21インチタイヤが純正装着されていることもあるように、大径ホイール&扁平タイヤはスポーツカーの代名詞となっている。では、なぜ自動車レースの最高峰、フォーミュラ1(F1)は13インチで、ぶ厚いタイヤを履いているのだろうか。

■薄い扁平タイヤはなぜ高性能なのか

 スーパーカーなどハイパフォーマンスのモデルは、大径のホイールに薄い扁平タイヤを装着している。このように、薄い偏平タイヤは高性能というのが常識だが、ではなぜ、自動車のレース最高峰であるF1のタイヤは、小径ホイールにぶ厚いタイヤを装着しているのだろうか? これは簡単そうで結構奥が深い問いだ。

 F1のタイヤの話をする前にまず「偏平タイヤがなぜ高性能なのか?」という理由を説明しておこう。

 タイヤの性能を測定する機械は色々あるが、その機械で測ったデータ(数値)を、比べてみたい特性に合わせて計算で数字を出していくこともある。そのひとつが、タイヤに掛かる荷重に対するCP〈コーナリングパワー〉のグラフがある。CPは、簡単にいうとタイヤが発揮できるグリップ力だと思っていい。

 タイヤに掛かる荷重が増えていくとCPも増えていくが、荷重が増え過ぎるとCPは荷重に比例して伸びず、落ちていくケースもある。横軸に荷重、縦軸にCPをとったグラフで見ると、82%偏平の場合にはカーブになり、70%偏平、60%偏平、50%偏平になるに従い直線的になっていく。つまり荷重が増えていってもグリップの低下が少ないということだ。

 これがなぜ高性能になるかというと、カーブを曲がるクルマのタイヤのグリップを想像してもらいたい。

 直進時に一定スピードで走っていれば、左右のタイヤに掛かる荷重は1輪あたり100%のままだ。カーブになって重心が遠心力で外側に引っ張られると荷重は外側のタイヤに多くかかり、その分内側のタイヤは少なくなる。極端に表すと、外側150%、内側50%になったとする。外側のタイヤが大きな荷重を負担しなくてはならないが、そこで荷重が大きくなってもCPが比例して大きくなれば、左右のタイヤの合計のCPは低下しないことになる。

 これが、荷重が増えてもそれに比例してCPも増える低偏平タイヤのメリットだ。

 これは前後のグリップ力にも表れる。ブレーキングしたときに前輪の荷重が増えるが、増えた分だけグリップ(この場合は縦方向のブレーキングフォース)が増えてくれれば、強いブレーキングでも止まる能力を高く保てるのだ。

 では、なぜ偏平になるほど高荷重になってもグリップを保つことができるのかというと、偏平タイヤになってトレッド幅が広がり、スチールやアラミドでできたベルトの剛性も高くなり、大きな力が掛かっても変形しにくくなるからだ。

 トレッド面が変形しにくいということは、接地部分(路面とトレッド面)がしっかりとコンタクトしてくれるということでゴムのグリップ力を発揮できるということだ。またタイヤのサイドウオールが低いから、その剛性も高い。つまり強い力が掛かっても、タイヤが変形しにくいのだ。

 またハイパフォーマンスカーはエンジンの出力が上がるが、それに対応してブレーキの能力も高めなくてはならない。偏平タイヤによってホイール径を大きくすることでブレーキのディスクローター径を大きくできる。

■フォーミュラ1のタイヤも近い将来18インチになる!?

 では、なぜフォーミュラ1のタイヤは偏平タイヤではないのか?という問いに答えよう。

 いろいろと調べてみたが、結局は「それはレギュレーション(規則)で決まっているから」という簡単な結論でしかない。長年、13インチホイールを使うことが決められていたからだ。

ピレリは以前から18インチのF1タイヤをテストしている。写真左は現在の13インチF1タイヤ、右が18インチのF1タイヤピレリは以前から18インチのF1タイヤをテストしている。写真左は現在の13インチF1タイヤ、右が18インチのF1タイヤ

 1976年と1977年に、6輪ティレルというF1マシンが走ったことがある。空気抵抗を減らすために前輪を10インチにして、接地面積が不足する分はフロントを4輪にして対応したマシンだ。しかしホイールは13インチでなくてはならないというレギュレーションができて終わった。

 もし今のレギュレーションを変更することになったら、チームはマシンを作り直さなければならない。サスペンションアームのレイアウトを変えなくてはならないのはもちろん、シャシ側の取り付け点も見直さなくてはならない。サスペンションセッティング、強度のチェック、エアロダイナミクスも全面的に見直しになるだろう。当然これには莫大な費用がかかることが予想される。

 もしタイヤとホイールのサイズが自由に選べるようになったら、違うサイズを選ぶチームが現れるかもしれない。しかしタイヤを供給するタイヤメーカー側からは、全チームの全車が同じサイズだから供給できるのであって、チームごとにサイズがバラバラになったら供給さえおぼつかなくなる。

 F1は、同じ条件でレースをしていればいい。タイヤのレギュレーションが昔のままでも成り立つので、いままで長い間13インチのままだった。

 じつはワンメイクでタイヤを供給するピレリは、インチアップされたF1タイヤのテストを続けており、2021年にはついに18インチ化が予定されていた。

 ただし新型コロナウイルス感染拡大により、2020年シリーズのF1は開催国を欧州に限定し、規模を縮小して開幕した。これにより、来年2021年に予定されていた18インチタイヤ化も先送りとなったようだ。

※ ※ ※

 ちなみに電動フォーミュラカーによる国際レースシリーズのフォーミュラEは、18インチタイヤを採用している。

フォーミュラEは18インチタイヤを装着する。写真は第10戦ベルリン大会で優勝した日産e.damsのオリバー・ローランドフォーミュラEは18インチタイヤを装着する。写真は第10戦ベルリン大会で優勝した日産e.damsのオリバー・ローランド

 フォーミュラE自体、2014年から開始された新しいカテゴリーのフォーミュラレースで、まったく新しいレギュレーションで始まっている。最初から全車が18インチのホイールで、フロントは245/40R18、リアは305/40R18というサイズになる。しかも溝付きの全天候型タイヤ、つまりF1タイヤに比べたら、ほぼ市販タイヤに近い。

 フォーミュラEにワンメイクでタイヤを供給するミシュランによると、市販タイヤにより近いサイズのタイヤを使うことで、レースから得た多くの情報を市販タイヤにフィードバックできるという。

 ようするに現在の13インチというF1のレギュレーションは、世の中の変化、技術の進化に追いつけなくなったのではないか、というのが結論である。

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