競争激化で軽が格安で買える? ダイハツとの首位争い スズキ13年ぶりの奪還なるか
くるまのニュース / 2020年9月3日 7時10分
現在の軽自動車の販売トップはダイハツですが、主力モデルの販売不振などにより、かつて1位だったスズキが首位奪還する可能性が出てきました。2020年後半の軽自動車市場を取り巻く状況は、どのように変わっていくのでしょうか。
■ダイハツが軽自動車トップを譲れない理由とは
昨今は軽自動車の人気が高く、新車として売られるクルマの40%近くを占めます。販売が好調な背景には「ダイハツvsスズキ」の競争があります。
軽自動車販売1位を巡る争いのため、両社の商品は新型車を発売する度に魅力を高め、価格が割安になっているのですが、2020年後半にはこの両社の競争が激烈になりそうです。
2020年1月から7月の軽自動車届け出台数(全国軽自動車協会連合会のデータ)は、ダイハツが29万4073台で、スズキは28万9746台です。
ダイハツが1位を保っているものの、両社の差は4327台とほぼ同等になったことから、今後、軽自動車販売1位を巡る激烈なバトルに発展する可能性が高いです。
ちなみに1973年から2006年までは、34年間にわたりスズキが軽自動車の販売1位でした。それが2007年にダイハツが1位に入れ替わり、スズキは2位に後退したのです。
2014年(暦年)だけはスズキが1位になりましたが、この年を除くと、2007年以降はダイハツが一貫して1位を取り続けています。その状況が2020年は変わる可能性があるのです。
軽自動車を中心に扱うメーカーにとって、販売1位にはどのような価値があるのでしょうか。ダイハツの販売店に尋ねると、以下のように返答されました。
「軽自動車は、全長や全幅、エンジン排気量が同じです。そのために各車の機能と価格も似ています。ダイハツの『タント』とスズキの『スペーシア』では、メカニズムや装備が違っても、外観と車内の広さは同じように見えます。
軽自動車のお客さまにはクルマに詳しくない人も多いので、似通ったダイハツ車とスズキ車で選択に迷うことも少なくありません。このときに大切なのが、軽自動車販売1位の実績です。
たくさん売れている信頼性をアピールすると、納得して購入されます。その意味でも軽自動車販売1位は譲れません」
ライバルメーカーとなるスズキの販売店からは、違う意見も聞かれました。
「いまのスズキは、軽自動車だけでなく、コンパクトカーにも力を入れています。軽自動車の好調な販売が今後も長く続くとは限らず、小型車の『ソリオ』や『スイフト』、『イグニス』なども積極的に扱っています。
従って以前ほど軽自動車の販売1位にこだわりませんが、最近は『N-BOX』を中心にホンダも売れ行きを伸ばしています。日産も『デイズ』に続いて『ルークス』が新型になり、軽自動車を好調に売っています。
軽自動車販売で3位のホンダと4位の日産が伸びてくると、スズキの存在感が薄れる心配もあります。『ハスラー』のライバル車になる『タフト』をダイハツが発売したこともあり、これから競争は激しくなるでしょう」
以前のスズキは軽自動車メーカーとされましたが、いまは状況が変わり、2020年1月から7月の販売実績を見ると、国内で売られたスズキ車の18%が小型/普通車です。
ダイハツもコンパクトSUVの「ロッキー」が売れ行きを伸ばしましたが、小型/普通車比率は11%です。スズキは小型車の売れ行きも着実に伸ばしています。
しかしスズキの販売店のコメントにもあった通り、ホンダの動向も見逃せません。
2020年上半期(1月から6月)の軽自動車のベスト3は、1位がホンダ N-BOX、2位がスズキ スペーシア、3位がダイハツ タントでした。
1位から3位はすべて全高が1700mmを超える軽自動車ですが、車種としての1位はダイハツやスズキではなく、ホンダなのです。
しかも2020年上半期のN-BOXの累計販売台数は10万1454台に達しました。2位のスペーシアは6万5323台ですから、N-BOXは突出して売れています。
ここまでN-BOXに勢いがあると、軽自動車販売2位のスズキはホンダを脅威に感じます。1位のダイハツだけでなく、3位のホンダに対抗する意味でも穏やかではいられません。
■ダイハツの主力車種「タント」が伸び悩むとクルマがお得に買える!?
ダイハツもスズキに追われています。2020年7月時点で軽自動車の販売台数は僅差ですから、今後の売れ行き次第では、スズキに軽自動車の販売1位を奪われる可能性もあります。
2019年7月にフルモデルチェンジしたダイハツ「タント」
そしてダイハツが伸び悩む一番の原因は、2019年7月に現行型へフルモデルチェンジしたタントの不調です。
ダイハツの最多販売車種ですから、新型となったタントは売れ行きが急増して当然ですが、好調だったのは2019年の8月と9月だけです。10月には対前年比が4%減り、11月は一旦増えたものの、12月には再び18%減りました。
そこでタントは販売テコ入れのため、実用装備を加えながらお買い得な特別仕様車を2019年12月に加えましたが、それでも2020年1月の対前年比はマイナス6%でした。2月は4%減、3月も6%減り、4月以降はコロナ禍の影響で減少幅がさらに拡大しました。
さらに2020年6月には、タントのベースグレードから装備を取り去って値下げした特別仕様車の「Xスペシャル」まで加えています。
タントの販売が低調なのは残念ですが、割安な特別仕様車の追加はユーザーにとってメリットになります。
軽自動車は多額の値引きを引き出すのは難しいですが、いまのダイハツならカーナビなどディーラーオプションのサービス装着、下取り車の査定アップなど、商談しやすいといえます。
残価設定ローンについて、ダイハツは年率1.5%の低金利を適用しました。2020年9月30日までの限定ですが、粗利の少ない軽自動車で1.5%の低金利は珍しいことです。
一方で、2020年6月にダイハツが発売したタフトは、1か月後の受注台数が1万8000台に達しましたが、販売が好調な軽自動車では珍しい数字ではありません。
タフトの実際の届け出台数は2020年7月時点で6300台ですが、2020年1月にフルモデルチェンジしたライバルのハスラーの7月が8831台なので、それに比べるとタフトは約3割少ないです。
こうなると軽自動車販売1位を守るため、ダイハツは今後もさまざまな販売促進対策を繰り出してくるでしょう。
スズキも対抗せざるを得ず、特別仕様車の追加や各種サービスを積極的に実施することになるとともに、ホンダもN-BOXの国内販売1位は譲れず、同様の販売促進をおこなうものと思われます。
トヨタ「ヤリス」「ライズ」やホンダ「フィット」といった新しい小型車の販売増加も軽自動車の売れ行きに影響を与えるため、2020年後半は軽自動車がますます買い得になることが予想されます。
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