エンジンの「自然吸気」や「ターボ」ってなんのこと? パワーや燃費はどう違う?
くるまのニュース / 2020年9月13日 16時10分
エンジンの種類で「自然吸気」や「ターボ」、「スーパーチャージャー」といった言葉をよく耳にしますが、それぞれの違いはなんなのでしょうか。
■エンジンの自然吸気やターボってどんな仕組み?
クルマのカタログや新型車紹介の記事などを見ていると、たびたび「自然吸気」や「ターボ」「スーパーチャージャー」という言葉が登場します。
それぞれの仕組みや違いとは、一体なんなのでしょうか。
エンジンは、空気と燃料でできた混合気を吸入、圧縮し、それを爆発(燃焼)させることで出力を得る仕組みです。
ガソリンエンジンでは爆発の着火に点火プラグを利用し、引火(発火)温度の低い軽油を燃料とするディーゼルエンジンは混合気を圧縮して自然発火での着火となりますが、基本的なサイクルは変わりません。
エンジンの出力(パワー)はおおよそ排気量に比例します。排気量とはエンジンの「シリンダー内の容積」×「気筒数」で計算されるもので、シリンダー内の容積は混合気の入る量と考えて差し支えありません。つまり、燃焼する混合気が多ければ多いほどパワーが出るということです。
シリンダー内へ混合気を充填することを「吸気」と呼び、原動力は混合気が爆発した勢いで下がるピストンが発生する負圧です。
「自然吸気」とはシリンダー内へと導かれる混合気を何もせず、自然の大気圧のままということを指し、そのようなエンジンを「自然吸気エンジン」と呼びます。
英語にすると「ノーマル・アスピレーション」あるいは「ナチュラル・アスピレーション」となることから、「NA(エヌエー)」と略されることもあります。
一方で、「燃焼する混合気が多ければ多いほどパワーが出る」ということに目を付けたのが「過給機付きエンジン」です。
過給機とは混合気を作る空気を加圧する機械で、「ターボ」や「スーパーチャージャー」はこれにあたります。
圧縮された空気で作られた混合気は、自然吸気で取り込まれたほぼ大気圧と同等の気圧の混合気より密度が高いため、排気量はそのままで、より多くの混合気をシリンダー内に充填することができます。
つまり、同排気量の自然吸気エンジンより大きなパワーを得られるということです。
ターボとスーパーチャージャーの違いは、空気を加圧する動力源です。ターボは混合気の爆発で出来る排出ガスの流れを利用する機構で、簡単にいうと、一対の羽根車の片方が排気側に、もう片方が吸気側にあり、排出ガスの勢いで排気側の羽根車が回ると同軸上にある吸気側の羽根車が回って空気を圧縮するという仕組みです。
スーパーチャージャーはエンジンの出力を利用する過給機です。混合気の爆発から生まれるピストン(上下)運動を、タイヤを回す回転運動にかえるクランクシャフトからベルトなどを介して動力を取り出します。
ちなみに英語でスーパーチャージャーは過給機全体を指す言葉で、ターボも含まれます。日本でいうスーパーチャージャーは「メカニカル・スーパーチャージャー」といわれて区別されています。
■燃費やレスポンスの悪さなど過給機の弱点は過去のもの?
過給機付きエンジンのメリットは、同排気量の自然吸気エンジンより高出力を得られることです。しかし、その一方でデメリットも存在します。
国産車では珍しいスーパーチャージャーを搭載する日産「ノート DIG-S」
過給機付きエンジンは、自然吸気エンジンより大量の空気をシリンダー内へと送り込みます。
とはいえ、送り込まれるのは空気だけではなく燃料も含んだ混合気で、この混合気には「理論空燃比」というものがあり、排ガス対策と出力の兼ね合いから理想とされる空気と燃料の比率があるのです。
そのため空気ばかりを増やすわけにもいかず、比率が大きく変わらないよう燃料も同じように増量する必要があります。
つまり、どうしても燃料の消費量が多くなる=燃費が悪くなってしまうという欠点があるのです。
排出ガスの流れを利用して過給するターボは、羽根車を回すには強い排出ガスの流れが必要で、ある程度エンジンの回転数が上がらないと性能をフルに発揮できません。
そのためアクセルの踏み始めは思ったようにパワーが出ず、レスポンスが悪いと評されることもあります。
一方スーパーチャージャーは、エンジンの出力が動力源ゆえエンジンをかけた瞬間から駆動します。そのため低回転から過給されレスポンスは上々です。
ただ、エンジンの出力を過給に使う分、機械的な損失=パワーロスがあり、高回転になればなるほどロスが大きくなることからターボほどのハイパワーは望めないという特徴があります。
維持の面で過給機付きエンジンならではの注意点について、都内の整備工場に勤める整備士Sさんに聞いてみました。
「ターボは自然吸気に比べてどうしても部品点数が多くなるので、それだけトラブルの可能性は増えます。
ターボは800℃を超す超高温な排出ガスを利用するのでさまざまな箇所に負担がかかるのですが、その最たる部分がタービン(羽根車)の軸受けです。ここの潤滑油にはエンジンオイルが使用されているので、オイル管理が大事です。
スーパーチャージャーも軸受けがダメになるケースはありますが、こちらはエンジンオイルの流用ではなく専用のスーパーチャージャーオイルが潤滑油です。交換不要としている車種も多いですが、シールなどの劣化から漏れてしまうこともあるので定期的な点検は必須です」
※ ※ ※
レスポンスと燃費を重視するなら自然吸気、マックスパワーを求めるならターボ、スーパーチャージャーはその中間といったところでしょう
過給機付きエンジンの最大の弱点とされる燃費についても、近年は高効率で過給機を作動させるのに向いている直噴エンジンが主流となり、むしろ燃費のためにターボを装着する流れもあるほど改善されています。
また、レスポンスについてもタービンの材質や形状の見直しにより大きく向上しているなど、デメリットはほとんど解消されてきています。
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