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安倍政権終焉でクルマの自動運転どうなる? トヨタも関わる「SIP」現状と課題とは

くるまのニュース / 2020年9月5日 11時10分

これまで、国の自動運転に関する政策は東京2020オリンピック・パラリンピック大会の時期を目標に、東京臨海部を世界に向けた「自動運転のショーケース」にすると謳ってきました。しかし、東京2020大会の1年延期や、長期政権だった第二次安倍政権の幕引きに伴い、今後が心配されます。自動運転技術の現状は、どのようになっているのでしょうか。

■「自動運転のショーケース」となるはずだった2020年夏 今後の研究はどうなる

 これまで国は、東京2020の競技会場や選手村があるお台場など東京臨海部を、世界に向けた「自動運転のショーケース」にすると銘打っていきました。

 レクサス「LS」ベースのレベル4相当、ホンダ「レジェンド」のレベル3、また自動運転バスなど、さまざまな自動運転車が東京に集結して、日本の技術力を世界にアピール。

 本来ならば2020年7月には自動車メーカー各社の自動運転車によるイベントが華々しくおこなわれるはずでした。

 ところが、東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)は2021年に延期され、自動運転関連イベントについても休止が決定。さらには2020年8月末、これまで自動運転の普及に対して大きく旗を振ってきた安倍首相が衝撃的な辞任を表明しました。

 少し心配な状況ですが、これから先、日本での自動運転がどうなってしまうのでしょうか。

 一方、新型車では自動運転技術を用いた量産車が次々と登場しています。なかでも注目は、2020年10月15日に発表される、スバル新型「レヴォーグ」です。

 ステレオカメラを刷新した次世代アイサイトを搭載。オプション設定のアイサイトXはスバル独自開発の三次元地図と衛星測位を活用して、料金所周辺での自動減速に対応するなど、自動運転技術を活用した高度運転支援システム(ADAS)機能が満載です。

 ただし、アイサイトの技術開発統括者は「これから先、完全自動運転に向けた開発はかなりハードルが高い」と本音を漏らします。

 背景にあるのは、道路側(インフラ)とクルマとの協調です。もちろん、法律の壁や、走行の安全性、またサイバーセキュリティ対策など、自動運転レベルを完全自動運転に向けて上げていくには、自動車メーカー1社では対応しきれません。

 さらにいえば、自動車産業界だけでも、社会全体を見据えた課題解決は難しいと思います。

 そうしたなか、産学官連携で自動運転の実現に向けて取り組んでいるのが、内閣府が取りまとめる、次世代の日本に向けた国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(略称:SIP)」です。

 第1期SIPはエネルギー関連、海洋関連など合計11課題あり、そのうちのひとつが自動運転でした。第2期SIPでも自動運転はシステムとサービスの拡張を踏まえて継続されています。

 この第1期SIPが大きな目標と掲げていたのが、東京2020。それまでに技術面、法律面、そして社会需要性などについてオールジャパンで取り組んできました。

 その東京2020が1年延期となったことは、具体的にSIPに対して、つまりは日本の自動運転技術開発の全体にどのような影響を与えたのでしょうか。

 SIP自動運転プログラムディレクターで、トヨタ自動車先進技術開発カンパニー・フェローの葛巻清吾氏に聞きました。

「(本来は)2020年7月に日本自動車工業会と連携して、東京臨海部で(報道陣向けなどの)自動運転車の試乗会をおこなう予定でしたので、(実施の休止は)影響は大きいと思います。

 ただし、幸いにも実証試験自体は2019年10月から開始し、今年6月には(インフラなど実験基盤の)整備も終わりました。

(緊急事態宣言による)約2か月間の空白があり、各メーカーの経済的な状況が厳しくなりましたが、それでも各社が自動運転技術の開発はしっかり進めようと(経営判断し)、実際に実証試験が進んでおり、(研究開発として実質的な)影響はありません。

 2021年に(改めて)試乗会をおこないたいと思っており、それまでの間でもさまざまな形で情報発信を続けていきます」

 その一環として、「SIP cafe」があります。国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏が中核となり、2019年10月に立ち上げたウェブサイトやSNSを通じて、各方面への取材による記事を掲載するなど、SIP自動運転の現状と未来について情報発信を始めています。

■情報発信に課題? 自動運転研究の今後は

 そうしたなか、今回、一部報道陣向けに実施された、東京臨海部実証試験の視察での見所は大きく3つありました。

 ひとつめは、お台場地域での「信号協調」です。

 交差点近くのクルマに対して、信号機の色とそれがあと何秒続くかの情報を、周波数帯760MHzで常に発信しています。

 情報を受信するクルマとして、SIPに参画している金沢大学・菅沼研究室で開発した、レクサス「RX450h」をベースとした自動運転車を使いました。

 菅沼直樹教授は「この車両は、カメラ、ミリ波レーダー、ライダーなどフルスペックのセンサーを搭載していますが、信号機の情報は自動運転の精度を上げるためにとても有効です」と指摘します。

 ふたつめは、首都高速1号羽田線への料金所から本線に同流する際、本線側の交通情報を同流するクルマに伝える装置です。本線側に走行の優先権があるなかで、合流側の速度を適宜コントロールします。

 アイサイトXをさらに一歩先に進めるには、こうした路車間通信が必然となります。

燃料電池バスの自動運転の様子燃料電池バスの自動運転の様子

 そして、2020年7月にオープンした羽田イノベーションセンターを起点とした、燃料電池バスの自動運転も車内で体験しました。

 道路側に磁気マーカーを一定間隔で埋め込み、その位置をバス側のセンサーが感知して進みます。さらにバス側にカメラ、ミリ波レーダー、ライダーなどを配置しています。

 羽田空港第三ターミナル周辺のバス専用レーンも使いましたが、一般交通も混走する交差点での右折もスムーズにこなせました。

※ ※ ※

 現在、今回のSIPのみならず、全国各地で自治体や個別企業が独自におこなっている自動運転実証試験が数多く存在していて、庶民にとってはどれが重要なのかが分かりにくい状況にあると思います。

 日本で自動運転は、いつまでに、どこで、どのような形で実用化するのか。クルマのユーザーに対して、また自らはクルマを運転しない人に対して、分かりやすい形での情報発信が必要だと感じます。

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