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ダイエット110キロに成功したBMW「M3 CSL」はいま

くるまのニュース / 2020年9月5日 19時10分

BMWのスポーツモデルである「M3」は、歴代スペシャルなモデルが存在していた。初代の「スポーツエボリューション」、2代目の「GT」、そしてここで紹介する3代目の「CSL」などがそうだ。CSLという称号の意味と、現在の市場での価格を最新オークションから見てみよう。

■レースに勝つために生まれた「M3」の系譜とは?

 BMW「M3」は、E30型がその原点となる。

 ファミリーセダンとして作られたE30型3シリーズをベースに、ツーリングカーに参戦するためのホモロゲーションを得るために開発された初代M3は、ブリスターフェンダーの装備やボディ剛性の改善を施し、サスペンションなどは5シリーズ用を流用。

 エンジンは当時の最上級スポーツモデルである「M1」にも搭載されていた、M88型3.5リッター直列6気筒から2気筒を削除した、S14型2.3リッター直列4気筒エンジンを搭載していた。BMWはこのマシンで、当時のツーリングカーレースにおいて、メルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」と熾烈なバトルを繰り広げていたのだ。

自然吸気の直列6気筒エンジンを搭載した最後のM3のスペシャルモデルとして、いまなお人気が衰えないM3 CSL自然吸気の直列6気筒エンジンを搭載した最後のM3のスペシャルモデルとして、いまなお人気が衰えないM3 CSL

 その後、3シリーズのモデルチェンジにともないM3もE36型へと進化する。これには当初、直列6気筒3.0リッターエンジン(S50B30型)が搭載されていたが、マイナーチェンジ時に排気量を3.2リッターとしたS50B32型エンジンに換装。

 前期モデルはM3B、後期モデルはM3Cと呼ばれていて、そのM3Cには6速MTに加えて、6速SMGを搭載。シングルクラッチ式のセミATであるSMGは、現代のツインクラッチ式セミATと比べれば変速ショックの大きさなどに問題はあったが、アクセルを微妙に操作してやれば、マニュアルミッションよりも変速に要する時間が短く、ラップタイムの短縮も可能だった。ただし、機械的なトラブルが多いという問題があった。

 そして2000年に登場したのが、E46型M3である。

 エンジンは吸排気に可変バルブタイミング機構(ダブルVANOS)を搭載した、3.2リッター直列6気筒(S54B32型)を搭載したこのクルマは、E30型はもちろん、E36型と比べてもラグジュアリー性が高くなっている。

 ミッションはゲトラグ社製の6速MTと、シングルクラッチ式ながら制御が大幅に進化し、機械的なトラブルも減少した、SMGII 6速セミATを搭載。

 フルオートエアコンやオーディオ、電動シートなども装備されていて、スポーツ走行だけではなく、グランドツーリングカー的な用途にも使えるクルマとなっていた。その点が、純粋に走ることを楽しみたいというユーザーからすると、いまひとつ突き抜けていない、と感じられる部分でもあった。

●クーペ・スポーツで軽量を意味する「CSL」

 では、CSLとはなにか。「CSL」というのは、クーペ・スポーツ、そしてLeichtbau、すなわちライトウェイトの略称となる。

 1970年代、「2002」をベースとしたマシンでツーリングカーレースを闘っていたBMWは、より高い戦闘力を求めて、ビッグシックスエンジンを搭載した「3.0 CS」での参戦を決定した。

 しかしそのベースとなった3.0 CSは、コンパクトな2002と比べると大きく、重いという弱点があった。そこで開発されたのが、「3.0 CSL」である。

 左右ドアのアルミ化やリアウインドウのアクリル化、パワーウインドウレスなど、さまざまな手法を施すことで、3.0 CSと比べると3.0 CSLは約200kgもの軽量化を実現し、コンペティションの世界で大活躍した。

 そのCSLの名を冠したのが、今回紹介するE46型「M3 CSL」というモデルである。エアコンやナビ、オーディオ、フォグランプの排除や電動シートからフルバケットシートへの変更、標準モデルよりも薄いリアウインドウガラスの採用、遮音材の簡素化、ルーフのカーボン化などによってこのクルマは、ベースとなるM3から約110kgの軽量化を実現している。

 その上でブレーキはM5と共通の大径ローターを採用したり、ステアリングギア比のクイック化や専用サスペンションの装備など走行性能の向上が図られている。

 インテリアはドアパネルやセンターコンソールをカーボン化。エンジンはCSL専用に開発されたS54B32HP型を搭載し、エキゾースト側カムプロフィールの変更や排気バルブの軽量化、内部の摺動抵抗の低減などによって、最高出力はオリジナルの343psから355psへとパワーアップしている。

 SMGIIには専用プログラムが用意されたことで、シフトチェンジに要する時間が短縮された。

 そんなE46型M3 CSLが生産されたのは2003年、生産台数は1383台。新車当時の日本での販売価格は、1150万円だった。

■注目の「M3 CSL」の落札価格は?

 そんなE46型M3 CSLがシルバーストーンオークションに登場した。

 今回オークションに出品された個体は右ハンドル車。といっても日本で販売されたものではなく、イギリス仕様車として生産されたものだ。そのためメーターは、マイルとkmのダブルスケールとなっていて、走行距離は9000マイル(約1万4400km)でしかない。

トランクリッドやリアディフューザーなど、控え目な空力特性を改善するパーツが装着されるトランクリッドやリアディフューザーなど、控え目な空力特性を改善するパーツが装着される

 装備的には、標準ではレス仕様となっていたエアコンやオーディオ、HIDヘッドライトは、オーナーがオプションとして装備をしていたため、CSLとはいえ、快適に公道を走行することができるようになっている。ただし、PDC(パーク・ディスタンス・コントロール)については、工場出荷時にオーナーのリクエストで削除されているため、装備されていない。

 さらにブレーキは、オリジナルからAPレーシング製キャリパーへと変更されているほか、サスペンションはKW製に交換済みだ。

 ここまでの好コンディションなE46型M3 CSLとなると、かなりの高額となることも予想され、実際シルバーストーンオークションの予想落札価格も、7万5000ポンド−8万5000ポンド(邦貨換算約1060万円−1200万円)となっていた。

 そして実際の落札価格は、7万3125ポンド(邦貨換算約1035万円)であった。

通常モデルのE46型M3なら、すでに初期型は20年、最終モデルであっても14年が経過していることから、現在、500万円程度の予算で手に入れることは可能だ。

 しかし希少なCSLであり、かつオリジナルの状態を保っている個体であるので、1000万円を超えた落札価格は納得できるものといえるはずだ。

 ちなみにこのE46型M3には、アメリカン・ル・マンシリーズに参戦するための、ホモロゲーションモデルとして生まれた、公道走行が可能な「M3 GTR」というモデルも販売されていた。

販売台数は、わずか10台のみ。こちらは4リッターV型8気筒でドライサンプのP60B40型エンジンが搭載されていたが、当時の販売価格は25万ユーロ(邦貨換算約3150万円)と、非常に高額であった。筆者はM3 GTRの実物を目にしたことはなく、もちろん運転したこともない。これがオークションに登場してきたら、はたしていくらくらいになるのだろうか。

 興味はもちろんあるが、M3 CSLよりも高額になることは間違いないだろう。どこかのオークションに出品されるのをウォッチしておこう。

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