魔改造ポルシェ「356」は9000万円!! クラシックカーのカスタムもセンス次第!
くるまのニュース / 2020年9月7日 8時10分
ポルシェ「356」は、根強いファンの多いクラシック・ポルシェの代表といえるクルマだ。この356を大胆にモディファイ&チューニングしたクルマに価値があるのか。その答えを最新オークションで見てみよう。
■MOMO製ホイールを装着することからプロジェクトはスタート
2017年のSEMAショー。アメリカはもちろんのこと、世界各国から多くの出展者を集めるカスタムカーが主役のトレーディング・ショー(業者のための商談を目的としたショー)の会場に、今回紹介するポルシェ「356」はあった。
それをポルシェ356と呼ぶことに興奮を隠せないアウトローなファンもそこには多くいただろうし、逆に顔をしかめる正統派のファンもいたはずだ。
なぜなら、貴重なポルシェ356を世界で唯一無二のスタイルにカスタムビルドした、「MOMO 356 RSR アウトロー・バイ・エモリー」とネーミングされた、確かにアウトローな世界を狙った1台の356だったからだ。
2017年のSEMAショーで発表されたポルシェ「MOMO 356 RSR アウトロー」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
RSRアウトローを製作したのは、ポルシェ356のチューニングとドレスアップでは世界的に有名な、ロッド・エモリーだ。
エモリーは、このRSRアウトローのベースとなる半ば朽ち果てた356を2012年に発見し、そこから新しいデザインのレンダリングをSNSに投稿する。
それにいち早く反応したのが、ステアリングホイールなどのレーシング・エクイップメントのメジャー・ブランドであるMOMOオートモーティブグループの会長である、エンリケ・シスネロスだったのだ。
エモリーに全面的な信頼を寄せていたシスネロスからのオーダーはわずかにふたつ。
「MOMOのホイールを装着し、エグゾーストからはかつての多くのレーシングポルシェがそうであったように、排気とともに炎を吹き出すように」というシンプルなものだったという。
■外は「356」、中身は「964」の正体とは?
製作プロジェクトの始まりは、新ホイールのデザインと製作からであった。
デザインは、1970年代と1980年代にポルシェ「935」や「962C」などの足元を飾った、高性能で古典的なデザインの5スポーク・センターロックホイールからインスピレーションを得た。
964型「911」に使用されていた3.6リッター水平対向6気筒エンジンを4気筒にして搭載した「MOMO 356 RSR アウトロー」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
結果は大成功だったといえるだろう。そのデザインと伝統のイエローのエンブレムからは、一瞬でそれがMOMO製のものであることが認識でき、またそのデザインはアウトローのコンセプトにボディデザインとともに素晴らしくマッチしている。
サイズはフロントが7J×17、リアが8J×17の設定。2020年初頭には、この「ヘリテージ5」ホイールをベースとした「ヘリテージ6」ホイールのセールスもスタートしている。ポルシェのカスタマーには気になるところだ。
ここからエモリーは、2012年に発見した1960年型のポルシェ「356Bクーペ」のレストアを開始……とは、シンプルにはいかなかった。なぜならこのRSRアウトローのボディやメカニズムは、1990年型の964型「911」をマッチングさせたからである。
搭載されるエンジンは、そもそも964型に使用されていた3.6リッター水平対向6気筒エンジンの中間シリンダー2本をカットして、356と同様に水平対向4気筒ツインターボとしたもので、これにはロスポートレーシングとターボクラフトの両社が協力している。
注目の最高出力は、ダッシュボードにレイアウトされた935スタイルのブーストコントローラーを使用すると、325psから375psの間で調整することができる。
一方で車重はわずかに1950ポンド(約884kg)であるから、いかにハイグリップなピレリ製タイヤを装着するとはいえ、その走りには十分なスキルが必要かもしれない。
インテリアのフィニッシュも実にレーシーな雰囲気だ。もちろんここでもMOMO製のプロダクトは多数使用されており、そのままサンデーレースなどにエントリーすることもできる。まさに時空を超えて復活を果たしたポルシェ356といえるだろう。
今回のRMサザビーズでの落札価格は、実に85万8000ドル(約9010万円)と相当な高額となった。
単なるレストアとは異なる、クラッシックカー・チューニングの世界、そしてそれに熱狂的なファンが存在することを証明する、好例であったといえる。
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