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スバル史上最強! STIが手掛けた「S209」がスゴすぎる! 乗り味はいかに?

くるまのニュース / 2020年9月14日 10時10分

スバルが北米で限定販売した「S209」は、同社史上最強のスペックを誇っています。日本では正規販売されていないS209とは、どのようなモデルなのでしょうか。

■日本では売られていない「S209」ってナニモノ!?

 スバルは、2014年に掲げた中期経営ビジョン「際立とう2020」で「STIブランドの強化」を掲げました。

 その内容は、量産ラインで生産をおこなう「STIスポーツ」の導入だけでなく、これまで基本的に日本専用だったコンプリートカーの海外展開も含まれていました。

 その証拠に、2015年のニューヨークショーでSTIの平川良夫社長(当時)は北米ビジネスをおこなうことを発表。

 その後、北米向けモデルとして「BRZ tS」と「WRX STI タイプRA」を各500台限定で発売しましたが、その裏で極秘のプロジェクトが進められていました。それが今回紹介する「S209」です。

 このモデルは「Sシリーズ初の北米向けモデル」であると同時に、「最強のSシリーズ」として開発がおこなわれています。S209とは、どのようなモデルなのでしょうか。

 S209は、北米で209台が限定販売されました。価格は6万3995ドル(約680万円)です。

 エクステリアは前後のオーバーフェンダーやフロントフェンダーのエアアウトレット、フロントバンパーサイドカナードなどで構成される専用ワイドボディで、全幅は1795mmから1839mmに拡大されています。

 オーバーフェンダーは幅広の265タイヤを収めるために採用されましたが、単純に迫力を出すだけでなくシッカリと性能を出すために風洞に入れながらデザインを煮詰めているそうです。

 リアウイングは、国内で限定販売されて即完売した「S207」や限定数を大きく上回る応募を集めた「S208」と同形状のドライカーボン製ウイングが装着されますが、空力バランスはフロント周りの変更を含めてS209用に最適化されています。

 ちなみに平川社長によると、「インプレッサ 22B STi バージョンをイメージするデザイン」とデザイナーにリクエストしたそうです。

 一方、インテリアはシルバーステッチ+シルバーアクセントのレカロシートやウルトラスエード巻ステアリング、チェリーレッドのインパネ加飾、サイドシルプレート、シリアルナンバープレートなど小変更が中心です。

 樹脂系パーツの変更はコスト的に厳しいのは重々承知ですが、もう少し何とかしてほしいと思ったのも事実です。

 注目のパワートレインは、伝統の2リッター水平対向4気筒ターボの「EJ20」ではなく、海外向けWRX STIが搭載する2.5リッター水平対向4気筒ターボ「EJ25」をベースに専用チューニングがおこなわれています。

 HKS製の大容量タービンや専用ECU、吸気系、排気系の変更により、ノーマルの310hp(314馬力)/393Nmから、341hp(345馬力)/447Nmにアップしています。

 とくにトルクは中回転域以降で大幅にアップしており、全域で力強い特性に仕上がっています。

 EJ20に比べるとチューニングの知見が少ないEJ25は、サーキット走行などの厳しい環境下での信頼性が気になる所ですが、その辺りも抜かりはありません。

 バランス取りされた鍛造ピストン/鍛造コンロッドの採用により、量産エンジンと全く変わらない信頼性が備えられています。

 フットワーク系には、出力アップしたエンジンに負けないシャシを目標に専用アイテムを数多く投入。

 より安心感のあるリアスタビリティと旋回性能のために、車体はSTIコンプリートモデルで定番のフレキシブルタワーバー、フレキシブルドロースティフナー・フロントに加え、リアシートバック用フレキシブルドロースティフナー(通称:リアドロ)を新採用。

 じつはこのアイテムは、2016年のニュルブルクリンク24時間レースカーで先行採用され、大きな効果が実証されているアイテムです。

 足まわりはビルシュタイン製ショックアブソーバーと専用コイルスプリング、強化ブッシュを搭載。開発はアメリカのサーキットが中心でニュルでのテストはしていないようですが、セットアップはニュル24時間レースカーの考え方が色濃く盛り込まれているそうです。

 タイヤは歴代Sシリーズ最大幅となる265/35R19サイズの「ダンロップ SPスポーツMAXX GT600A」で、構造や剛性、トレッドゴムの選択に至るまでS209専用にゼロから開発された物です。

 組み合わせるBBS製鍛造アルミホイールはS207/S208用を水平展開と思いきや、リム幅9jの専用品です。ブレーキはS207/S208で高い評価を得ているブレンボ製のモノブロック対向6ポッド/2ポットが奢られています。

■歴代WRXシリーズでナンバー1の乗りやすさ

 日本では販売されないものの、S209の実力はどうなのかというところは、スバルファンであれば気になるでしょう。それは歴代Sシリーズ全てのモデルを試乗してきた筆者(山本シンヤ)も同じです。

 2019年のデトロイトショーで世界初公開されて以降、リクエストをしていたのですが、特別に日本での試乗が叶いました。

北米初のSシリーズとして限定販売された「S209」北米初のSシリーズとして限定販売された「S209」

 試乗コースは日本のニュルと呼ばれる“グンサイ”こと群馬サイクルスポーツセンターです。最強のSシリーズをチェックするには申し分ないステージでしょう。

 じつはS209の開発コンセプトのひとつに「北米のサーキット(バージニア・インターナショナル・レースウェイ)のセダン最速タイムを目指す」ということが設定されていました。

 事前にその話を聞いていたので、「サーキットスペシャルをグンサイで走らせて大丈夫なの?」と不安でしたが、その不安は走り始めてひとつ目のコーナーを曲がったらすべて吹き飛びました。

 カチッとしているのに突っ張った印象がない車体や、ダイレクトで操舵レスポンスは高いのに薄皮一枚挟まっているかのような心地よいダルさを持つステアリング系。

 サーキットスペックでバネもダンパーもタイヤも数値的には相当ハードなセットながら振動や入力を上手に吸収してくれるサスペンションと、すべての部分において「硬さ」と「しなやかさ」が共存しているのです。

 その結果、絶対スピンしないと確信を持てるリアの安定性と、アンダー知らずでグイグイと曲がるハンドリングを両立しているのはもちろん、クルマとドライバーの信頼関係や対話性、そして扱いやすさ、乗りやすさは、歴代WRXシリーズナンバー1だと感じました。

 個人的には武闘派なS207/S208ではなく、強さのなかに優しさを持つ「S206」を継承している乗り味に感じました。

 グンサイは道幅が狭くてエスケープゾーンもほとんどなく、路面状況も悪いため、一般道以上に緊張感が高いのですが、そんな環境下で高いスピードながらも冷静にドライビングできたのは、クルマを信頼してポテンシャルを引き出せるシャシ性能のおかげです。

 その一方で、硬い柔らかいでいえばS209は硬めですが、「ノーマルより快適なのでは?」と感じるほどの快適性の高さもポイント。プレミアムブランドに片足を突っ込んだかのような動的質感まで備わっています。

 この辺りは、開発責任者の高津益夫氏が常日頃語る「走りを極めると快適になる」を実感しました。

 ハンドリングに関してはほぼ完ぺきといえる仕上がりですが、ひとつ気になったのはシートです。

 純正レカロのホールド性では体が支えきれないコーナリングレベルに来ており、安定したドライビング環境のために良いシートが欲しいです。

 個人的には車両のこだわりを考えると、レカロシートの最高陣でカーボンバックシェル採用の「SP-X」を奢ってあげてもいいかなと思いました。

 エンジンは低速域のトルクに2.5リッターの余裕を感じるものの、「ザ・ターボ」というようなメリハリのある盛り上がりの特性とレッドゾーンの6500rpmを軽々と超えていきそうな伸びの良さ、そして「GC8」時代のEJ20のようにシュンシュン回る気持ち良さが備わっており、EJ20とは異なるもうひとつの「究極のEJ」だと感じました。

 もちろん最新のターボと比べると決して万能な性格ではないですが、エンジンの爆発で生まれる鼓動や人間味を感じるフィーリングなど、ただ速く、鋭いだけでなく“血が通っている”ユニットなのは、EJ20と共通です

 筆者は以前ニュル24時間を戦うレーシングカー(2016モデル)に試乗した事がありますが、S209はもっともニュル車に近い量産車だと感じました。

 つまり、STIが常日頃から提唱する「強靭でしなやかな走り」のひとつの理想形です。現在スバルでは次期「WRX」の開発が進められていますが、最低でもS209を超える必要はあるでしょう。

※ ※ ※

 このS209は、並行輸入業者の手により日本に上陸していますが、価格はかなり高価で、誰でも買えるとはいかないのも事実です。

 しかしSTIは、「リアドロを含めたフレキシブル補剛パーツのフル装着で、S209の乗り味に近づきます」といっています。

 日本でS209を味わいたいというVA系WRX STIオーナーの方は、これらのパーツを装着することをオススメします。

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