約5mの巨大なスバル車!? 3列SUV「アセント」がイケてる! 乗り味はいかに?
くるまのニュース / 2020年9月10日 11時10分
日本に導入されていないスバルのSUVとして、「アセント」があります。北米専用モデルのアセントとは、どのようなモデルなのでしょうか。
■見た目は「フォレスター」の兄貴分!?「アセント」って何者!?
スバルの3列シートモデルといえば、古くは世界最小の7人乗りを実現した「ドミンゴ」や、当時GMグループを活用して欧州からやってきた「トラヴィック」(生産はタイ)、そして水平対向エンジン搭載の「エクシーガ」などがありました。
どれも熱烈なファンは存在しますが、ビジネスとして成功したかというと、イマイチといわざるを得ません。
ワールドワイドで見ると、3列シートモデルはもう1台存在しました。それが2005年に登場した北米専売SUVの「トライベッカ」です。
「レガシィ」をベースに北米スバルのフラッグシップとして開発されたトライベッカですが、中途半端なボディサイズと狭い3列目シート、パワー不足の3リッター水平対向6気筒エンジン、そして奇抜なデザインでセールスは大苦戦。
途中でフロントマスクの大幅変更や3.6リッター水平対向6気筒エンジン搭載など大幅改良がおこなわれましたが、カンフル剤にはならず2014年に生産終了しました。
その後、皮肉なことに、北米市場のトレンドはミニバンから3列シートSUVへシフト。家庭環境の変化によりスバル車からの乗り換えも増えてしまい、北米の販社から「新たな3列シートSUVの導入を!」と熱烈なラブコールが日本のスバル本社に寄せられていたそうです。
そこで開発されたのが、新型3列シートSUVである「アセント」です。トラベッカでの反省を活かし、北米市場が求める3列シートSUVの要件を満足させながら、スバルらしさを凝縮したモデルです。
さらにスバルにとっては、「3列シートモデルは大成しない」という、これまでもジンクスを打ち破る目的もあったと思っています。
3列シートSUVのアセントとは、どのようなモデルなのでしょうか。筆者(山本シンヤ)はアセントに試乗する機会がありましたので、レポートします。
アセントのエクステリアは、「フォレスター」と似ています。それも、フォレスターの最上級グレード「アドバンス」の兄貴分といった雰囲気です。
厚みを持たせた堂々としたフロント周りやダイナミックなフェンダー処理のサイド、そして高級感を演出したリアと、アセントにはスバルSUVシリーズのフラッグシップにふさわしいプレステージや存在感が備わっています。
ボディサイズは、全長4998×全幅1930×全高1819mm、ホイールベース2890mmと、トヨタ「ランドクルーザー200系」並みの巨大サイズ。
インテリアは「インプレッサ」やフォレスターのインパネをベースに、トライベッカを彷彿とさせる左右ラウンドの造形でコクピット感を強めたデザインです。
アセントは北米スバルのSUVシリーズのフラッグシップということもあり、装備や質感にこだわっています。
インパネセンターはアセント専用で、タッチスクリーン式のモニター(ベースは6.5インチ/上級グレードは8インチ)や3ゾーンエアコンコントロール、ハーマンカードン製プレミアムオーディオ、シートヒーター&ベンチレーション、8個のUSBポート、19個ものカップホルダーが装備されています。
■3列シートSUVのなかではかなりスポーティな乗り味
実際に運転席に座って感じたのは、「より目線が高く、より広くなったエクシーガ」といった感じです。
2列目はシートスライドを最後端にしなくても足元スペースは余裕で、キャプテンシート仕様であればウォークスルーも楽々。ベンチシート仕様なら、大人3人乗車もまったく苦にならない室内幅です。
スバル「アセント」
3列目は170cmを超える人だとヘッドクリアランスが厳しいですが、1列目→2列目→3列目と着座位置が高くなるというエクシーガ譲りのシアターレイアウトとスバルお得意の視界の良さも相まって、見た目以上に十分なスペースを確保しました。
パワートレインは、3.6リッター水平対向6気筒エンジンに代わる、次世代スバルのダウンサイジングターボのひとつ、2.4リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジン「FA24」が搭載されています。
264馬力/376Nmのスペックを誇りますが、2トンオーバーの巨大を軽々と引っ張る力強さと実用域からトルクフルな性格とターボラグを上手にカバーするCVT制御の効果も相まって、全域でバランスのとれたユニットです。
その印象は新型「レヴォーグ」に搭載される1.8リッター水平対向4気筒直墳ターボエンジンの「CB18」をより力強く、よりトルクフルにした感じのフィーリングです。
北米の嗜好に合わせたスロットルの早開き特性は日本人には少々気になるところですが、2000rpmから3000rpmくらいでトルクバンドを意識しながら走らせると気持ちが良いのです。
ちなみに燃費は高速道路と流れの良い一般道を交通の流れに合わせて走って約11km/Lから12km/Lというところでした。
都心のようなストップ&ゴーやノロノロ運転の多い場所での燃費は厳しいそうですが、ボディサイズや車両重量を考えれば優秀です。
フットワークは、「動きが穏やかになったフォレスター」といった印象です。といっても、大陸系モデルによくある大味な乗り味ではなく、正確なハンドリングのなかで穏やかで優しい味に仕上げられています。
操作に対して忠実なステア系、前後バランスが良く安心感の高い4輪の接地性やロールコントロールを実現したハンドリング、さらに重さを活かした直進安定性とシットリした乗り心地の良さなど、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)の能力を存分に活かした乗り味で、おそらく、3列SUVのなかではかなりスポーティな部類に入るでしょう。
ただ、少々気になったのは低速度域での細かな凹凸の吸収性とロードノイズです。装着タイヤがオールシーズンなのが原因なので、これはサマータイヤに交換すれば解決します。
ブレーキは絶対的な効きは悪くないものの、タッチとフィーリングはパワートレイン/フットワークと比べると若干頼りなさを感じたのも事実。個人的にはブレンボくらい奢ってもいいのかなと感じました。
安全支援デバイスも充実しており、「アイサイト」と「アイサイトアシストモニター」を全車に標準装備。さらに上級モデルには後退時自動ブレーキやブラインドスポットディテクション、リアクロストラフィックアラートなどが用意されています。
クルマとしてのトータル性能は非常に高いことから、北米のディーラーでは「待望のモデル」「これなら売れる」と太鼓判が押されセールスも好調。すでに北米スバルのSUVシリーズの新たな柱となっています。
つまり、スバルの3列シートは大成しないというジンクスは破られたわけです。
※ ※ ※
日本では2018年に「エクシーガ クロスオーバー7」の生産が終了しており、アセントへの代替え需要も期待できそうです。
アセントは北米専売モデルのため日本では正規導入されていませんが、並行輸入業者の手で日本に上陸しています。その証拠に中古車サイトをチェックすると販売されているのです。
さすがにこのボディサイズはおススメできる人は限られますが、「人とは違う3列シートSUVが欲しい」という人にとっては、ショッピングリストに入れる価値はあるのではないでしょうか。
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