広まる「プリウス式」シフトレバー レバーは不要? 全スイッチ化も起きる背景とは
くるまのニュース / 2020年9月22日 18時10分
最近のクルマのシフトレバーは小さいレバーになるなど、電子スイッチ化が進んでいます。これはいつからはじまり、そして、シフトレバーの将来はどうなっていくのでしょうか。
■そもそもシフトレバーって何? どのような種類がある?
ハイブリッド車や電気自動車の普及と歩調を合わせるように、シフトレバーの小型化が進んでいます。なかにはシフトレバーをまったく無くしてしまった車種もありますが、いったいどのような背景があるのでしょうか。
日産「ノート e-POWER」のシフトノブ
シフトレバーは、MT(マニュアルトランスミッション)車の場合、エンジンの回転を車輪に伝える際に、回転数を変えたり、前進/後進の向きを変えたりするために、ギアを切り替えるシフト操作をおこなうためのレバーです。
レバーの位置で、どのギアに入っているかを知ることもできます。
シフトレバーの先端のノブ形状は、丸形のタイプや円柱形のものなどがあり、材質もベーシックな樹脂製のタイプから、木製タイプ、本革巻きタイプ、金属削り出しタイプ、ダイキャストタイプなどさまざまな素材が用いられ、クルマを操る楽しさを演出してくれました。
MT車の場合は、一般的にはフロアシフトと呼ばれる床からレバーが生えるようなレイアウトですが、かつてはごく一部の乗用車やタクシー、トラックなどでは、前席3人掛けを実現させるためにコラムシフトと呼ばれるハンドルの根本からレバーが生えるようなレイアウトのタイプもあります。
AT(オートマティックトランスミッション)車は、ギアの切り替えを自動的におこなうため、クラッチを踏んで、ギアを切り替える操作は必要なくなり、シフト操作の頻度も少なくなります。
そのため、AT車ではシフトレバーの形状も、一般的なT型のタイプやガングリップのタイプなどが採用されています。
AT車のシフトレバーの位置も、フロアシフトやコラムシフトばかりでなく、1990年前後に登場した日産「エスカルゴ」やマツダ「アンフィニMS-8」などでインパネ(インストルメントパネル)にシフトレバーがレイアウトされ、新しいスタイルとして話題になりました。
最近では、運転席と助手席のウォークスルーを実現するため、多くのミニバンがシフトレバーをインパネにレイアウトしていて、形状もインパネでの操作がしやすい形状が採用されています。
■AT車なのにマニュアル操作ができるクルマとは?
世界初の量産ハイブリッド乗用車として1997年に発売された初代のトヨタ「プリウス」は、コラムシフトタイプのシフトレバーでした。
しかし、2003年発売の2代目からは、Pレンジは別のボタンで独立して設定され、そのほかのレンジへのチェンジは指先で軽く操作ができる「エレクトロシフトマチック」が採用されました。
操作の際には、手前下や手前上にレバーを動かしますが、手を離すと中央に戻るタイプで、どこに入っているかはメーターパネルなどの表示で確認します。これは、現行モデルまで踏襲されています。
サイズやデザインこそ異なってくるものの、プリウスに準じた操作性を持つシフトレバーは、ほかのメーカーも採り入れています。
ホンダのハイブリッド車もそうしたモデルが多いだけでなく、かつて販売されたマツダ「アクセラハイブリッド」も、専用シフトレバーを新規開発し、採用しています(アクセラハイブリッドは2019年に生産終了)。
日産では、電気自動車の「リーフ」に丸いシフトレバーを採用。
これは現行の2代目にも受け継がれているほか、ガソリンエンジンで発電するシリーズ式ハイブリッド車である「ノートe-POWER」にも採用されています。基本的な操作はプリウスと同様のタイプといえるでしょう。
なぜこれらのクルマがこのようなコンパクトなシフトレバーにできるのかというと、エンジン車と異なりモーター駆動車は、基本的に前進/後進以外のギアの変速を設ける必要がないため、エンジン車の「1」、「2」や「L」などのレンジ、OD(オーバードライブ)スイッチもない、シンプルな構成にできることが背景として挙げられます。
とはいえ、ハイブリッド車や電気自動車だから必ず小さなシフトレバーが採用さているわけではありません。
トヨタでもハイブリッド専用車種の「アクア」は、一般的なガソリン車と同様に操作するシフトレバーを採用し、「カローラ」などハイブリッド車とガソリン車が選べる車種ではガソリン車と共通のシフトレバーが採用されている車種が見られます。
反対に日産「セレナ」の場合、「e-POWER」モデルはプリウスなどと同様の比較的小さいレバー式、e-POWER車以外は上下にレバーを動かすタイプのインパネシフトとなっています。
そして近年は、シフトレバーやノブそのものがないモデルも登場しています。
国内仕様がハイブリッド専用車となった現行モデルのホンダ「アコード」は、「D」も「R」も「N」も、さらにはパーキングブレーキさえも、それぞれコンソール部に設けられたスイッチで操作する「エレクトリックギアセレクター」タイプです。
この方式は2018年発売の「クラリティPHEV」などにも採用されました。
「CR-V」では、ガソリン車はシフトレバー式のインパネシフトですが、ハイブリッド車は同じ位置で「アコード」などと同様の「エレクトリックギアセレクター」になっています。
CR-Vのエンジニアいわく、その理由は「最先端なイメージがあるから」。米国では上級モデルを中心に、このほかの車種でも「エレクトリックギアセレクター」を採用しているとのことです。
また、2020年10月から発売されるホンダ初の量産電気自動車「ホンダe」も、同様の「エレクトリックギアセレクター」が採用され、今後、ホンダの電動車の主流となる可能性もあります。
※ ※ ※
今後登場するモデルには、電気自動車やハイブリッド車はもちろん、通常のガソリン車の通常のATでも、小さなレバーやボタン式のシフト操作が主流になる可能性があります。
すでに実現している先行車に続いて停止まで速度を自動調整するアダプティプクルーズコントロールでは、トランスミッションやパーキングブレーキを、すべて電子制御化しないと十分な制御ができないことも理由のひとつです。
また、今後、完全な自動運転になるには、シフトレバーやハンドル操作も電子的な制御が進むことが前提となります。いずれ自動運転技術が発達すれば、物理的なシフトレバーのみならずハンドルさえもなくなってしまうのかもしれません。
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