なぜ? 大型リアスポイラーの付いたクルマを最近見かけなくなったワケは

くるまのニュース / 2020年9月20日 11時10分

かつての新車のなかには、ド派手な大型リアスポイラー(大型リアウイング)が装着されていました。しかし、近年のクルマでは、装着しているクルマを見かけなくなってきています。なぜ大型リアスポイラーを装着したクルマは激減したのでしょうか。

■大型リアスポイラーがなくなった理由はいくつかある

 クルマのエアロパーツとして知られる大型リアスポイラー(大型リアウイング)は、もともとは機能性のあるものですが、普通の乗用車がその効果を得られるような速度域で走ることは少なく、実際にはイメージや雰囲気を楽しむものでもあります。

 しかし、近年は大型リアスポイラーが付いたクルマをあまり見かけなくなりましたが、いったいなぜなのでしょうか。

生産終了となったスバル「WRX STI」のリアスポイラー生産終了となったスバル「WRX STI」のリアスポイラー

 リアスポイラー(ルーフスポイラー)は、ボディに発生する空気の流れに沿うように取り付けられたパーツのことです。

 クルマが走行してボディに当たる空気はフロントからリアに流れますが、この空気がクルマから離れていく際に、空気の「渦」を生み出します。

 しかし、気流の乱れやクルマを反対方向に引っ張る負圧を生み出し抵抗となり、速度の低下や燃費悪化の原因となるほか、風切り音も引き起こします。この空気の渦を少なくして流れを整えるのがスポイラーの効果です。

 一方で、リアウイングは航空機の翼のような形をしている、車両後端の高い位置に装着するアイテムです。F1マシンを代表するレーシングカーなどに装着されています。

 これにも整流の効果もありますが、ウイングの役割で大きなものは、車体を地面に抑える力(ダウンフォース)を得るための装備です。

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 大型リアスポイラー(および大型リアウイング)が付いたクルマを見なくなったのは、そういった走りや雰囲気を好む人が少なくなったという考えもあるかもしれませんが、大きな理由のひとつが、リアスポイラーを装着する後部に余裕がない形状のクルマが増えたということがあります。

 例えば、後部までいっぱいに張り出したボディのミニバンにスポイラーを装着すると、クルマ全体の高さや、クルマ全体の長さが変わってきてしまいます。

 サイズが変わってしまうとそのままでは車検に通らないばかりか、違法改造になってしまい、処罰を受けたり、整備を受け付けてもらえなくなるなどの不都合が生じます。

 一方で、人気のジャンルでSUVがありますが、車種によっては後方が斜めになっていて高さや長さを変えずにリアスポイラーを装着できるクルマもあるかもしれません。

 しかし、リアスポイラーに関するクルマの基準はそんなに甘くなく、格好良いものはなかなか付かないのです。

 ここでリアスポイラーが合法になる(保安基準に適合する)ルールを説明します。

 もともとの車両サイズからはみ出さないこと、溶接やボルト、ナットなどで強固に固定されていること、突起がないことはもちろんですが、おおまかな形状の制約として、原則として側方にウイングがあってはならず、もしウイングがある場合は、ボディの外側から165mm以上内側にある必要があります。

 これは、歩行者などに引っ掛けないようにするためですが、基準どおりならウイングがかなり内側に引っ込んでしまい、効果のある大型のスポイラーにはならず、格好もよくありません。

 この解決策として、ウイングの先端が車体との間が20mm以下になるなど隙間が少なくなれば165mm以内になってもよいことになっています。

 具体的には、後方から見てT型や鳥居の形をしたものは、両端がそれぞれボディから165mm以上引っ込んでいなければなりませんが、後方から見て門型 の場合は、両端が下に向くなどしてボディと20mm以内に接していれば、ボディサイズぎりぎりまで張り出しても大丈夫となります。

 実際これらの基準どおりにスポイラーを作ると、いわゆる「GTウイング」では左右の長さがボディよりもだいぶ小さくなり、角も丸まっていなければならないなど、ボディの浮きを抑えるという効果が少なくなり、格好良さという点でも残念なものになってしまいます。

■大型リアスポイラーが装着できるクルマは減っている?

 一方、装着できるクルマが減っているのかということは、登録車販売台数ランキングの移り変わりから見ることができます。

 2019年は多い順から「プリウス」「ノート」「シエンタ」「カローラ」「アクア」と続きます。これら5車種を含むベスト10のうち、大型スポイラーが付けやすそうなセダンがあるのはカローラだけ。しかも、カローラのセダンは購入層からすればスポイラーを付ける人は少なそうです。

 それが、30年前の1990年のベスト10を見てみると、カローラ「マークII」「クラウン」「カリーナ」「コロナ」と続き、これら5車種を含むベスト10のうち、セダンやクーペが設定されているのは9車種となります。

 この傾向はしばらく続き、1992年にひとつ減って8車種、1993年には7車種、1995年には6車種へと減少傾向はあるものの、いまよりはスポイラーが付きそうな車種が続きます。

 それに加えて、スポイラーを付けたくなる2ドアクーペも減少しています。日産「シルビア」やトヨタ「セリカ」は2000年代に消滅、最近復活したトヨタ「スープラ」もそのころに一度消滅しています。

 クルマは十数年使われることを考えれば、スポイラーが装着できそうなセダンや2ドアクーペがここ10年ほどで急速に見かけなくなってきたことと合致します。

 スポイラーの装着が減ってきた理由の大きなものとしては、やはり装着できる車種がなくなったということも大きいようです。

大型リアウイングを装着するホンダ新型「シビックタイプR」(写真はリミテッドエディション)大型リアウイングを装着するホンダ新型「シビックタイプR」(写真はリミテッドエディション)

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 現在でも、メーカーで大型リアスポイラーを装着したクルマはいくつか残っています。

 数少ない大型リアウイングを装着した現行モデルであるホンダ「シビックタイプR」や、生産終了となったスバル「WRX STI」では、門型にするなど基準に収める工夫の跡が見られます。

 また、一方ではリアスポイラー以外の空力設計が進化しているということもあります。高速走行をしなければただの重量物でしかないスポイラーは、燃費も重視する時代では、減少傾向は不可避のようです。

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