SUVのスライドドアなぜ出ない? コンセプトカー出るも市販無しの理由とは
くるまのニュース / 2020年9月19日 7時30分
日本の新車市場において、後席スライドドアのクルマは軽自動車やミニバンを中心に人気を博していますが、なぜか人気カテゴリのSUVではスライドドアを採用した車種をみかけません。いったいなぜでしょうか。
■軽やミニバンでは定番装備といえるスライドドア
2010年代に入ってから、日本の新車市場では後席スライドドア(以下、スライドドア)のクルマが人気です。スライドドアと聞いて多くの人がイメージするのは、まずミニバンでしょう。
日産「セレナ」やトヨタ「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」といったミドルクラスからトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」などラージモデル、そしてトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」など人気が高まっているコンパクトミニバンも主流はスライドドアです。
かつてはトヨタ「ウイッシュ」やホンダ「ストリーム」など、背が低くてスライドドアではなくヒンジドアを備えるミニバンが人気となった時代もありましたが、気がつけばそれらはほぼ消滅。ミニバンといえば、スライドドアが当たり前となっています。
そして、スライドドアが好まれているのはミニバンだけではありません。ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、そしてダイハツ「タント」などスーパーハイトワゴンと呼ばれる背の高い軽乗用車がまさにそうです。
それらは軽自動車としてトップを争う販売台数を誇るだけでなく、登録車(普通車や小型車)も含めた日本の乗用車市場でも最量販モデルのポジションを競っています。ミニバンではありませんが、それらもスライドドアを組み合わせています。
また、トヨタ「ルーミー」やスズキ「ソリオ」など背の高いワゴンタイプのコンパクトワゴンもスライドドアです。
スライドドアのメリットはどんなところにあるのかというと、最大のメリットは狭い場所でもドアを全開にできることです。
ヒンジ式ドア(一般的なドア)を最大に開こうとするとクルマの横に広い空間が必要となりますが、開放時に大きく張り出さないスライドドアならば車体の脇に20cmほどの空間があればドアを全開にできるのです。
また、ドアを開けた際に隣のクルマや壁にドアを当てる心配がないこと、電動開閉式であれば力を必要とせず開け閉めできるとともに、車種によってはタクシーのように開閉を運転席からコントロールできるのも使い勝手に優れる部分といえます。
さらには乗り降りの際にドアが邪魔にならないことや、小さな子供を抱きかかえたままでも乗ったり降りたりしやすい、などもメリットといえるでしょう。
ところで昨今は、日本でもSUVの人気が盛り上がっていて、販売台数も増えています。しかし、便利なスライドドアを装着したSUVは見かけません。いったい、どうしてでしょうか。
ひとつは、乗降スタイルの違いです。スライドドアは、どんなクルマと組み合わせても都合がいいというわけではありません。
実用的に使うにはある程度の開口部の天地高が必要で、具体的には軽自動車スーパーハイトワゴンやホンダ「オデッセイ」程のドア開口高(約1.2m)が欠かせません。
さらに、開放時のドアの張り出しを抑えるためにはボディサイドがミニバンや軽自動車のようにフラットに近いことも求められます。
スライドレールなども装着しなければならいから、デザインの制約も生まれます。
それらを考えると、SUVとスライドドアのマッチングはよくないことが理解できるでしょう。スライドドアは、あくまでも箱形のボディとの相性がいいのです。
■欧米ではスライドドアの人気があまりない? その理由とは
また、別の理由もあります。それはニーズです。日本では好まれるスライドドアですが、じつは海外ではアジアなど一部地域を除いて日本と違い需要が多くありません。
むしろ欧米では商用車やファミリーカーのイメージから、敬遠される風潮もあります。
日本専用モデルが多いミニバンと違い、日本で販売するSUVの多くは北米や欧州でも販売することを前提に開発されているので、世界的な販売を考えるとあえてスライドドアを選ぶという判断はしにくいのです。
トヨタが東京モーターショー2017で公開した「TJクルーザー」
ただし、トヨタ「TJクルーザー」など、モーターショーで展示されるコンセプトカーではスライドドアを組み合わせたSUVも存在します。
それらは新しいマーケットを開拓する提案としている場合もありますが、多くはインテリアを見せるためにスライドドア化されるという理由があります。
開いたドアが邪魔をして室内が見えにくいスイングドアよりも、開いたときにまわりからの視界を遮らないスライドドアのほうがショーカーとして適しているというわけです。使い勝手を求めたものではないから、乗り降りはしづらい場合がほとんどです。
もちろんそれらは、後にそのコンセプトカーと関連の深い市販車が登場しても、スライドドアではなくヒンジ式ドアとなるのが一般的です。
そんな事情を考えるとSUVにスライドドアの組み合わせが現実的でないことが理解できるでしょう。
しかし、もしもアメリカや欧州においてスライドドアの人気が高まり、ミニバンのように室内高の高いSUVが大ブレイクする時があれば、その時にはスライドドアを組み合わせるかもしれません。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
あえてSUVをかたらず? ホンダが「N-BOX JOY」を投入する理由
マイナビニュース / 2024年9月19日 11時0分
-
なぜ左右で「ドアの数」が違う!? めちゃユニークな「1+2」タイプの“ワンツードア”今後も増える? あえて採用するメリットとは
くるまのニュース / 2024年9月7日 14時10分
-
ホンダが新型「軽SUV」初公開! アウトドアに強い「タフ仕様“軽自動車”」はどんなデザイン? キャンプや車中泊にも最適な「新型ジョイ」登場
くるまのニュース / 2024年8月29日 14時10分
-
トヨタの「“SUV”ミニバン」!? 全長4.3m級の「カクカクボディ」が超カッコイイ! スライドドア採用で“めちゃ売れそう”な「Tjクルーザー」実現性は?
くるまのニュース / 2024年8月25日 17時10分
-
ホンダ新型「N-BOX ”SUV”」初公開!? 黒バンパー×斬新チェック内装が超カッコイイ! “日本一売れてる”軽に待望のアウトドア仕様「JOY」登場へ
くるまのニュース / 2024年8月22日 11時0分
ランキング
-
1認知症や急激な老化を呼ぶ免疫暴走が起こる真因 免疫が処理できないほど体内にゴミが溜まる恐怖
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 7時0分
-
2コスパが良いと思うエアコンのメーカーランキング! 2位「ダイキン」、1位は?【家電のプロが解説】
オールアバウト / 2024年9月18日 20時35分
-
3マザー・テレサもスティーブ・ジョブズも実は「サイコパス」って本当…? 人口の1%しかいない“反社会的人格者”の知られざる正体
文春オンライン / 2024年9月20日 6時10分
-
4社交辞令で褒めるとき、例えばゴルフがヘタな上司に「すごいですね!」はNG。気分をよくさせる、ひろゆきが考える“ズルい”言いまわし
日刊SPA! / 2024年9月20日 8時46分
-
5押し寄せるロシア軍を撃退か 凄まじい「ドローン攻撃」映像をウクライナが公開 次々と車両を破壊
乗りものニュース / 2024年9月18日 11時42分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください