【試乗】四つ葉の「ステルヴィオ」は究極に運転して楽しいクルマだった!
くるまのニュース / 2020年9月25日 19時10分
アルファ ロメオ初となるSUV「ステルヴィオ」には、「ジュリア」のクアドリフォリオモデルと同じV型6気筒エンジンを搭載した「ステルヴィオ 2.9 V6 BI-TURBO クアドリフォリオ」がラインナップしている。このスーパーSUVを、モータージャーナリスト嶋田智之氏がインプレッションする。
■ドライビングプレジャーをたっぷりと感じさせてくれるSUV
昨今のSUVはおしなべてよく加速するし、よく曲がる。昔みたいにモッサリぼんやりしてるようなSUVなんて、もはやほとんど存在しないといってもいいだろう。
もちろんクルマ持ち前のキャラクターとしてモッサリぼんやりだったりするなら逆にそれはそれで味わい深かったりもするのだけれど、個人的にはドライバーの意志に沿って動いてくれるクルマが好きな僕としては、もはやSUVをナナメな視線で見る必要がなくなった。喜ばしい傾向だな、と思う。
●まるでスポーツカーを走らせているような感覚
けれど、これはまぁ色々なところで似たようなことをいってたりもするのだけど、「よく走る」というのと「スポーティな走りを楽しめる」というのは、重なっている部分はあるけど同じとはいえない。
スポーティな走りを楽しめるクルマとは、イコール、ドライバーの心を躍らせてくれるクルマ。つまりドライビングプレジャーをたっぷりと感じさせてくれるクルマ、である。そして今のところは残念ながら、そこまで気持ちを掻き立ててくれるSUVというのは、ごくごく少数派だ。
そのなかの1台──というか代表選手のような存在が、アルファ ロメオ「ステルヴィオ」である。スポーツ・セダンとして世界の頂点級に楽しく気持ちいいジュリアの乗り味を、そのまま背の高いSUVに移植したようなモデルだ。
アルファ ロメオのエンジニア達は、ジュリアとほぼ並行するかたちでステルヴィオの開発作業を進め、「ジョルジオ」という同じプラットフォームを使いつつトレッドや重心位置/重心高などを工夫することで、背の高さが宿命づけるネガティブな要素を極力排除しながら、ドライビング・フィールを可能な限りジュリアに近づけた。
ステアリング・ギア比もジュリアとまったく同じ11.7対1という凄まじくクイックな値だし、4WDシステムもありがちなFWDベースではなくRWDベースのものを新たに生み出した。
そして完成したアルファ ロメオ初のSUVは、まるでちょっとしたスポーツカーでも走らせてるかのような感覚をドライバーに与えてくれる、刺激的なクルマとなったのである。初めて走らせたときの衝撃は、忘れることができない。
今回ここに御紹介するのは、そのステルヴィオのもっとも高性能なバージョン、「ステルヴィオ 2.9 V6 BI-TURBO クアドリフォリオ(以下ステルヴィオ・クアドリフォリオ)」だ。通常のステルヴィオは2リッターの直列4気筒ターボもしくは2.2リッターの直列4気筒ディーゼルを積んでいるのだが、こちらは2.9リッターV型6気筒ツイン・ターボ。
御存知の方も少なからずいらっしゃるだろうが、もちろんこれは「ジュリア 2.9 V6 BI-TURBO クアドリフォリオ」に搭載されているのと同じ。フェラーリ「カリフォルニアT」の3.9リッターV型8気筒ツイン・ターボから2気筒分を切り落としたものを基礎にして作り上げられた、と噂されたマラネッロ由来のパワーユニットである。
最高出力は510ps/6500rpm、最大トルクは600Nm/2500rpm。静止状態から100km/hに達するまでが3.8秒、そのままスロットルを踏み込み続ければ283km/hへと到達する。紛うことなきスーパーSUV、と呼べる1台である。
■ステルヴィオ・クアドリフォリオの走行性能はいかに!?
ハイパワーな心臓を持つステルヴィオ・クアドリフォリオだけれど、臆する必要なんてまったくない。走行モードをノーマルに据えて街中をゆるゆる走る分には、通常のステルヴィオと同じように快適なSUVとしての振る舞いを見せてくれるからだ。
日常使いのSUVとして考えるなら、もしかしたら乗り味は硬めに感じられるかも知れない。ただしそれは不快に感じられる類のものではなく、いうまでもなく腰や内臓への攻撃性に思わず顔をしかめるようなものでもなく、結構引き締まってるな、と感じられる程度のもの。
基礎がしっかりした厚手のバケット型シートも巧みに路面の凹凸を上手くやわらげながら伝えてくれるし、街中や高速クルージングでは510psよりも600Nmという強大なトルクが役立ってくれるから、ロングドライブでもそれほど疲れたりはしない。
●心の底から「楽しい」と思えるSUV
ワインディングロードに入って走行モードをダイナミックへ、そしてレースへと切り替えていくと、ステルヴィオ・クアドリフォリオはまったく別の貌を見せてくれる
とはいえ、それがこのクルマの最大の美点というわけじゃないことなど、誰にだって予想がつくことだろう。ワインディングロードに入って走行モードをダイナミックへ、そしてレースへと切り替えていくと、ステルヴィオ・クアドリフォリオはまったく別の貌を見せてくれる。
停止した状態から全開加速を試みると、後輪がグリップを失いそうになると前輪にも駆動を送ってトラクションを稼ぐ電子制御式4WDシステムの働きでほとんどホイールスピンなど見せることはないが、代わりにググッとリアを沈ませながら、猛烈な勢いで突き進んでいく。
次から次に風景を手繰り寄せては後ろに放り投げていく。控えめにいっても馬鹿っ速。目線が高いという違いがあるだけで、まるでスーパーカーのフル加速だ。
コーナーが続く場所へと差し掛かり、右へ左へとステアリング操作を繰り返すようになると、気持ちよさや楽しさが生み出す興奮はもう一段階大きく膨れ上がる。抜群の切れ味を感じさせる俊敏さが、そのたびごとに襲ってくるからだ。
クリアしたばかりのコーナーから次のコーナーまでのスピードの伸びが予想しているよりもいいから、そうなるとコーナー手前でのブレーキングもハードなものになるわけだが、車重が1.9トンあるわりにはストッピングパワーは充分。
そしてここでも筋肉質な脚が巧みに縮み込みながら荷重を前輪へと適切に運ぶし、トルクベクタリングが巧みなアシストを入れるから、クルリと鋭く気持ちのいいターンを披露してみせる。呆気にとられるぐらいグイグイとイン側に向かって曲がっていくのだ。
少しばかりヘマをして後輪がグリップを手放しかけても、素晴らしく反応のいい正確なステアリングと瞬時にクルマを引っ張っていこうとする前輪のおかげで、ヒヤリとすることもなく車体の姿勢をコントロールしていくことができる。これはホントにSUVなの? とキツネにデコピンでも喰らわされたような気分だ。
その辺りこそが最大の美点というべきものではあるのだが、けれどそれだけでステルヴィオ・クアドリフォリオの魅力が完成するというわけでもない。ぶっ飛んでいるときでも静かに走っているときでも、絶えず耳と心をくすぐってくる、うっとりさせられる快いサウンド。その存在なくして、このクルマを語ることはできない。
いかなるときもクルマと情を交わしているような、センシュアルともいうべきその感覚。シチュエーションが整わない限りは右足に力を込めることもできなければ腰に力を溜めるような走り方もできないわけだが、むしろステルヴィオ・クアドリフォリオの蕩けるような気持ちよさは、そこが支えてるといっても過言じゃないだろう。
スピードとの親和性というのはSUVにとっても大切といえる時代に突入している。速さに勝るSUVも、他にいくつか思い浮かぶ。けれど、ここまで濃厚に心の奥底で「ああ、気持ちいい……」と感じ続けていられるモデルは、他に見当たらない。
ステルヴィオ・クアドリフォリオは、唯一無二の存在なのである。
* * *
●Alfa Romeo STELVIO 2.9 V6 BI-TURBO QUADRIFOGLIO
アルファ ロメオ・ステルヴィオ 2.9 V6 BI-TURBO クアドリフォリオ
・車両価格(消費税込):1232万円
・全長:4700mm
・全幅:1995mm
・全高:1680mm
・ホイールベース:2820mm
・車両重量:1930kg
・エンジン形式:V型6気筒DOHCツインターボ
・排気量:2891cc
・エンジン配置:フロント縦置き
・駆動方式:4輪駆動
・変速機:8速AT
・最高出力:510ps/6500rpm
・最大トルク:600Nm/2500rpm
・0-100km/h:3.8秒
・最高速度:283km/h
・ラゲッジ容量:525リッター
・燃料タンク容量:64リッター
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)フベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)255/45R20、(後)285/40R20
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