ブガッティが身売り!? 火の車だったスーパーカーメーカー3社の現状とは?
くるまのニュース / 2020年9月24日 8時10分
新型コロナウイルス感染予防の影響か、ラグジュアリーブランドやスーパースポーツブランドの周辺に、なにやら不穏な空気が漂い始めた。ブガッティ、アストンマーティン、マクラーレンにいま、何が起こっているのだろうか。
■華やかなハイパーカーの光と影
続々と魅力的なニューモデルが、かつては考えられなかった高価なプライスタグを掲げて誕生する現代のハイパーカー&スーパーカーの世界だが、ここ最近各メーカーには不穏な動きが目立つようになってきた。
●ピエヒ亡き後、ブガッティが売却される!?
まずは傘下のブガッティを売却することを計画していると考えられているVW。VWがブガッティを手中に収めたのは1998年のことだが、ワンオフなどの特別仕様車を除けば、この10年強の間に生産したモデルは、「ヴェイロン」と「シロン」のみである。
その価格を考えても到底利益があがるまでには至らないが、ヴェイロン生産の前に生産設備や開発費はVWが、あらかじめ自らの決算に計上していたため、赤字の数字は最小限に抑えられている。
ブガッティが利益を生み出すのはシロンからという考えがあったのだろう。価格はヴェイロンの倍となり、利益を伸ばす体制は整えられた。さらに4ドアサルーンやSUVなど、現CEOのステファン・ヴィンケルマンがランボルギーニのCEO時代に企画したモデルを、内燃機関ではなくエレクトリックで実現しようという企画が進められていたというのも、また確証の高い噂だった。
だがVWは、ブガッティのために専用のプットフォームを製作し、完全なホワイトペーパーの段階からそれらの開発を進めることに簡単に同意はしなかった。そこで最終的に考えられたのが、ブガッティの売却だったのだ。
ブガッティの売却先は、クロアチアに本社がある電気自動車を開発しているリマック社だ。同社はすでにポルシェから15.5%のブガッティの株式を取得しているから、VWグループにとって彼らは全く無縁な存在というわけではない。最終的にリマック社は、ブガッティの株式の比率を49%まで引き上げる予定で、これによって積極的な発言権を得る予定であるという。
VWは現在、エレクトリック・モビリティにフォーカスした、積極的なニューモデル戦略を展開中であり、グループ全体としても、そしていずれはエレクトリックのメカニズムに頼らねばならないブガッティにも、この新たな再編は歓迎するべきところではないだろうか。
■実は苦しい台所事情だった、英国2大ブランドとは?
先日待望のSUV、「DBX」が誕生したのと前後して、CEOがアンディ・パーマー氏から、これまでメルセデスAMGを率いてきたトビアス・モアーズ氏へと変わったアストンマーテインも、その業績は当初の計画ほどに芳しくはない。
もちろんDBXの登場が、その状況を世界的に一変させてくれることは、これまでの他社の例を見れば明らかなところなのだが、2018年10月のIPO(新規株式公開)以来、低迷を続けた株価が今後どう動くのかは株主にとっては興味深いところでもある。
●カナダからの救世主登場! アストンが生まれ変わる!?
凍結されていたプロジェクトであるラゴンダの復活が望まれる
アンディ・パーマー氏と、トビアス・モアーズ氏の経営方針に大きな違いがあるとするのならば、それはパワートレインの電動化に対する積極性だろうか。
メルセデスAMGでは、続々と電動化技術を採用したパワートレインを採用し、モデルラインナップを急速に拡大してきたトビアス氏。一方でパーマー氏は、ラゴンダという伝統のブランドをBEV専門超高級車ブランドとして立ち上げる計画を発表していたが、そこに至るまでの資金的な状況は厳しかった。
そこで2020年登場したのが、カナダのミリオネアである、ローレンス・ストロール氏だ。彼はアストンマーティン・ラゴンダ社の株式を16.7%取得し、さらに今後発行される株式も取得する計画だという。その総額は5億ポンド(約715億円)に達するというから、株主としてのストロール氏の影響力は相当に大きなものになるだろう。
彼の意思が、今後どのようにアストンマーティンに影響し、あるいは計画が一時凍結したとも噂されるラゴンダを復活させるか否か、それはそれで楽しみではある。
●マクラーレンの本社が売却される!?
マクラーレンの象徴でもあるテクノロジー・センターが売却されるかもしれない
2020年の自動車産業を襲ったもっとも大きな脅威。それはいうまでもなく、新型コロナウイルス感染予防による生産工場やロジスティックの停止だろう。
その直撃をもっとも強く受けるのは、生産台数が少ないハイパーカーやスーパーカーの世界だ。1台あたりの単価は大きくても、キャンセルされれば売り上げは激減するからだ。
そのような事情から、本社を売却するという決断を下したのは、イギリスのロンドン郊外、ウォーキングにあるマクラーレンだ。106台限定の「スピードテール」が即完売したといわれ、そのようなニュースだけを見ていると経営は安定しているものと思われたが、内情が少し違ったようだ。
ノーマン・フォスター卿が設計し、2004年に建設されて以来、おもにロードモデルの開発に使用されてきた、マクラーレン・プロダクション・センター(MPC)、F1マシンを含めた開発の拠点ともいえるマクラーレン・テクノロジー・センター(MTC)、そしてマクラーレン・ソート・リーダーシップ・センター。これら現在のマクラーレンを象徴する建物のすべてが売却され、その後リースバックという形態で、マクラーレンは引き続きこの場所で活動を計画する予定なのだという。
もちろんそれには売却先である不動産会社、コリアーズの同意が必要になるが。
スーパーカー、ハイパーカーの世界に、いま何が起きているのか。少なくとも表面上に表れている華やかな姿ばかりではないことは、確かなようである。
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