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なぜ突如「プリウス」低迷? 看板車が不調でもトヨタが安泰な理由とは

くるまのニュース / 2020年9月30日 7時10分

トヨタが2015年に発売した現行型「プリウス」の人気に陰りが生じています。2019年には登録車トップの販売(登録)台数を記録しましたが、近ごろはトップ10入も難しい状況です。いったいなぜなのでしょうか。

■2019年の好調ぶりが一転 プリウスなぜ苦戦?

 最近は環境/燃費性能の優れたハイブリッドが人気です。今は日本国内で売られる小型/普通乗用車の約40%がハイブリッドで、メーカーによっては60%近くを占めます。

 そのハイブリッドの代表ともいえるトヨタ「プリウス」の人気に陰りが生じています。いったい、なぜなのでしょうか。

 初代プリウスは、1997年に世界初のハイブリッド量産乗用車として発売されています。その後、トヨタはハイブリッドの車種数を増やし、ほかのメーカーも同様に充実させました。

 プリウスは2009年に発売された3代目以降、売れ行きが目立って伸びました。2009年から2012年までは、プリウスが軽自動車を含めた国内販売の総合1位になっています。

 2013年以降はホンダ「N-BOX」が売れ行きを伸ばし、トヨタのハイブリッド専用コンパクトカー「アクア」も好調に売れましたが、2015年にプリウスがフルモデルチェンジを受けて現行型になると、国内販売の総合1位に返り咲きました。

 2017年以降の国内販売総合1位は一貫してN-BOXですが、小型/普通車に限るとプリウスが健闘しています。2017年と2019年は、プリウスが小型/普通車の1位でした(2018年は日産「ノート」)。

 ただし月別に見ると、2019年後半のプリウスは、人気に陰りが見られます。8月と9月の1位はトヨタ「シエンタ」、10月から12月は同年9月にフルモデルチェンジを受けたトヨタ「カローラ」が1位です。

 2020年には、2019年11月に登場したトヨタ「ライズ」が好調に売れて、1月と2月には1位になりました。

 3月はカローラですが、4月と5月はヤリス、6月はライズ、そして7月と8月はヤリスが首位です。

 このように最近の小型/普通車販売では、シエンタ、カローラ、ライズ、ヤリスという具合に、トヨタ車が交代で1位を獲得しています。

 ちなみに2020年1月から8月の販売統計を見ると、日本で売られたクルマの37%を軽自動車が占めました。ホンダもN-BOXのヒットで軽自動車の国内販売比率が50%を上まわり、日産も44%に達します。

 その結果、ホンダや日産では、小型/普通車の売れ行きが下がりました。逆にトヨタは軽自動車を扱わないので、小型/普通車市場のシェアが約50%に達します。小型/普通車の販売1位にトヨタ車が交代で入るのは、当然の成り行きです。

 この過程で気になるのがプリウスの販売動向です。2019年の中盤までは小型/普通車の1位でしたが、後半以降は急に下がりました。2019年はトップグループに入りましたが、2020年には脱落しています。

 ライズが1位になった2020年1月は、プリウスの売れ行きが前年に比べて24%下がり、日産セレナやホンダ「フリード」を下まわりました。小型/普通車の車名別順位でプリウスは7位です。

 2月は前年に比べて37%減り、順位はトヨタ「ルーミー」にも抜かれて9位。4月以降はコロナ禍の影響で国内販売全体が下がりましたが、プリウスの順位も変わりません。

 6月はトヨタ「ヴォクシー」に抜かれて11位、7月はトヨタ「RAV4」を下まわる14位、8月も13位です。

 7月以降の国内販売は、コロナ禍の影響も弱まって対前年比のマイナスは20%以下に収まりました。それでもプリウスは、7月が65%の大幅減少で、8月も50%減っています。

■プリウスの販売台数が減少した理由とは?

 プリウスの人気が下がった一番の理由は商品力です。現行型は2015年の発売直後は堅調に売れましたが、先代型に比べると、早い段階で販売が下がり始めました。

 その理由のひとつに個性を強めすぎた内外装のデザインにあったので、2018年末には造形を相応に変えて通信機能も加えました。

 このマイナーチェンジによって2019年4月から7月は前年よりも多く売れましたが、同年後半には再び下がります。本質的に人気が長続きしません。

プリウスと競合するといわれるトヨタ「カローラシリーズ」プリウスと競合するといわれるトヨタ「カローラシリーズ」

 しかも2019年9月にフルモデルチェンジを受けたカローラは、プリウスと同じプラットフォームを使い、1.8リッターエンジンをベースにしたハイブリッドも選べます。

 WLTCモード燃費は、カローラツーリングの「ハイブリッドS」グレード(265万1000円、価格は消費税込、以下同様)が29km/L、プリウスの「S」グレード(265万5000円)は30.8km/Lです。

 燃費数値、価格ともに両車はかなり近いです。設計はカローラが約4年新しいので、プリウスはカローラに少なからずユーザーを奪われました。

 この点について販売店では以下のようにコメントしています。

「新型カローラでは、ワゴンのツーリングが人気です。先代プリウスを使うお客様が、新型カローラツーリングハイブリッドに乗り替えることも多いです。その理由として、設計の新しさのほかに、デザインの違いも挙げられます」

 プリウスの外観は、マイナーチェンジ後も個性的で好みが分かれます。その点でカローラツーリングは、荷室の使い勝手など同等以上の実用性を備えながら、外観も幅広いユーザーに好まれる形状です。

 そのためにプリウスからカローラツーリングへ、という乗り替えが生じました。

 2020年に入るとライズも売れ行きを伸ばし、カローラも堅調で、プリウスが一層下がりました。4月以降はヤリスも加わり、プリウスの下降傾向が加速しています。

 この過程で見られるのはトヨタ車同士の争いです。トヨタ車の小型/普通車市場に占めるシェアは、常に48%から50%です。そうなるとカローラ、ライズ、ヤリスといった新型車が売れ行きを伸ばすと、ほかの車種が減ります。その代表がプリウスです。

 新型車の登録台数が丸まる上乗せされないのは、顧客の数と販売力に限りがあるからです。前述の通りカローラツーリングが好調に売れると、プリウスからの乗り替えも生じるために顧客を奪われます。

 販売力も同様で、カローラやライズに追われると、プリウスの販売促進に費やせる手間と時間が減ります。

 2020年5月から本格的に始まったトヨタの全店/全車扱いも大きな影響を与えました。今までは、トヨタ店やトヨペット店のユーザーが、プリウスからカローラ、あるいはヤリスに乗り替えるには、基本的には販売店を変える必要がありました。

 しかし、いまは全店で全車を買えるので、車種選びも自由です。この影響もあって販売格差が拡大しました。アルファードと姉妹車のヴェルファイアも、2020年8月には、6倍の大差を付けてアルファードが好調に売れています。

 以上のようにプリウスの販売が下がった背景には、現行モデルの商品力が低下したこと、トヨタの新型車投入、小型/普通車市場におけるトヨタの寡占状態、全店/全車扱いへの移行など、複数の「トヨタの事情」が影響しています。

 他メーカーの人気車がプリウスの需要を奪ったわけではありません。

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