西部警察の劇中車に迫る! ハイテク満載の「RS軍団」はリアリティにこだわった!?
くるまのニュース / 2020年9月30日 17時10分
ド派手なカーアクションや銃撃戦、そして爆破シーンなどで子供から大人まで魅了した「西部警察」は、1979年から1984年にテレビ朝日系列で放送された刑事ドラマです。いまもなお多くのファンがおり、まさに後世に語り継がれている名作です。今回は、劇中車両の開発を担当した福田正健さんに、当時のエピソードを聞いた第3弾、そして最終回。「RS軍団」はどうやってつくられたのでしょうか。
■現実的な未来を織り込むことでリアリティを追求した「RS軍団」とは!?
2020年8月、昭和の大スターのひとりである渡哲也さんが亡くなられました。世代によって思い出はそれぞれですが、いまの40代から50代にとっては、1979年から1984年にテレビ朝日系列で放送された「西部警察」で演じた大門圭介のイメージが強いのではないでしょうか。
西部警察の内容については、いまでは実現不可能な爆破シーンやカーチェイスなどがさまざまなメディアで報じられていますが、ここではクルマメディアならではの情報をお届けします。
それは番組に華を添えた「特別機動車両」の存在です。じつは筆者(山本シンヤ)は、これらの車両の開発を担当した、当時、日産プリンス自動車販売の「特車課」に所属していた福田正健さんに、製作の経緯や苦労話などをお聞きしました。
最終回は、日産6代目「スカイライン」の「DR30型」をベースにした「RS-1/2/3」の「RS軍団」についてです。
「RS軍団」のベースとなった6代目「スカイライン2000ターボRS」
――「西部警察パートIII」に登場したRS-1/2/3の「RS軍団」についてうかがいます、この3台体制となったアイデアはどこから出たのでしょう。
福田(敬称略):これも私の考えです。クルマを使う場面のひとつのバリエーションとして「フォーメーション」は必要だろうと。恐らく、軍事的な発想から生まれた事だったと思います。
――RS-1は攻撃車両、RS-2は情報収集車、RS-3は情報分析車と、各々の役目とキャラクターが与えられたのは?
福田:同じスカイラインが3台並ぶので、シッカリと役割を付けようと思いました。モノ作りをするうえで「どう差別化しようか」と「どういうシーンで使ったら面白いのか」などを考えながら企画しました。
――RS-1のアイテムのひととして「攻撃用のマシンガン」が装着されています。これはシリーズ初の装備ですね。
福田:石原プロが「どうしても装着してほしい!!」というので最後は私が折れましたが、RS-1のみでRS-2/3には装着しませんでした。全車に付けるとイメージも大きく変わってしまいますので……。
――アイテムは「3次元レーダー」などハイテク推しになってきますが、その辺りもリアルさを目指したのでしょうか?
福田:当時の軍事情報として「レーダーの3次元化」というニュースが流れており、それを応用させてもらいました。
といっても、「どのような物なのか?」、「そもそも現実にあるのか?」といった状況でしたので……。ただ、仮に実物を見ることができたら本物と近づける必要が出てくるので、結果的にはよかったなと思っています。
――信号を操作してしまう「シグナルコントロール」も印象的なアイテムのひとつでした。
福田:これはアナログでも可能なことをクルマ用に応用しました。そういう意味では、搭載する機能の多くは火種がまったくないようなアイデアではなく、「いつか実現できるかな?」という発想から生まれたモノが多いです。
――RS-2のトランク内にはロケット砲が搭載されていましたが、放送では一度も使われる事はありませんでした。
福田:RS-2のみトランクが逆ヒンジに変更されています。あれは当初は「エアブレーキ」として使うためのアイデアから採用しましたが、結局ロケットになっていました(笑)。
――マシンXが犯人に奪われ、自動運転車に改造されてしまうストーリー(パートIII第48話)では、3台の機能を連携させてパスワードを解除するというストーリーもありました。
福田:これは飛行機のアクロバットチームによるフォーメーションをイメージしました
――RS-1の最高速は265km/h(アフターバーナー付)、RS-2の最高速は260km/h(装備が重いため)、RS-3の最高速は255km/hと言う設定ですが、実際の走りに関するチューニングはおこなわれていたのでしょうか?
福田:基本的には走りの部分はノーマルです。ただ、RS-3はマシンRS時代にマフラーやエキマニを換装していたと思います。プリンス自販の下には、レース車両や部品を扱っていたプリンス東京スポーツコーナーがあったので、そこで装着したのかもしれません。
――開発期間はマシンXの時と比べて変わりましたか?
福田:変わらないですね。それ以上時間をかけてもモノ作りとしては上手くいきません。実際に製作するのは職人ですが、キッチリとした図面を渡すと融通が利かなってしまうので、私はイメージを伝えるだけで自由にやってもらいました。それも結果としてリアリティに繋がったと思っています。
――ちなみに各マシンは予備車が用意されていたという話も聞きますが?
福田:アクション用の影武者はあったかもしれませんが、私が製作したのはどのモデルも1台のみです。
――西部警察の放送終了から長い時間が経過しましたが、いまも各マシンが当時の姿で残っている事についてはいかがでしょうか?
福田:クルマへの愛着は歳を取ると共に薄れていましたが、このように当時の話ができる事に驚いています。それに関しては各マシンたちに感謝しなければいけないですね。
※ ※ ※
3回に分けてお届けしてきた西部警察の特別機動車両ですが、今後の保管などはどうなってしまうのでしょうか。
かつて特別機動車両の一部は北海道小樽市の「石原裕次郎記念館」で展示していましたが、2017年に惜しまれつつ閉館。
そして、渡哲也さんが亡くなる少し前の2020年7月17日に、石原裕次郎さんの遺言どおり「石原プロモーション」は2021年1月16日をもって業務を終了すると発表されています。
今後は、映像や音楽とは別に、石原裕次郎さんの遺品は「一般社団法人ISHIHARA」が管理することも明らかになっていますので、特別機動車両もそちらに受け継がれていくのではないでしょうか。
もしくは神奈川県座間市にある「日産ヘリテージコレクション」に、寄贈という可能性もあります。
いずれにしても昭和の時代を彩った名作ドラマの準主役級ともいえるクルマたちが、後世にも受け継がれていくことを望みます。
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