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渋滞で手放し運転できる機能って自動運転? スバル「アイサイトX」で考えた

くるまのニュース / 2020年10月5日 11時50分

2020年11月末に発売される予定のスバル新型「レヴォーグ」。いま話題のニューモデルだが、新型レヴォーグに搭載される高度運転支援システム「アイサイトX」にも注目が集まっている。渋滞時にはステアリングから手を離しての運転(渋滞時ハンズオフアシスト)も可能だが、アイサイトXは「自動運転」と呼ぶことができる技術なのだろうか。

■ステアリングから手を離して運転できる「ハンズオフ」機能

 ステアリングから手を離して運転できる「ハンズオフ」の機能に注目が集まっている。

 2019年より、BMWの「3シリーズ」や日産「スカイライン」にも搭載され、2020年11月末に発売されるスバル新型「レヴォーグ」にもハンズオフ機能を含む「アイサイトX」が搭載されることが決まったからだ。

 ただ、ハンズオフに対する誤解も少なくない。手放し運転ができるとなれば「もしかして自動運転が実現できた?」と勘違いする人も少なくないようなのだ。

 このハンズオフを理解する上で知っておくべきこと、それは自動運転の基本概念だ。ここで重要なのは、走行中における責任を誰が負うかということにある。

 現在は部分的に自動化が進んでいるものの、運転中の責任はドライバーが負う。アダプティブクルーズコントロールやプリクラッシュブレーキといった機能は、あくまでドライバーの運転をアシストする先進安全運転支援システム(ADAS)に過ぎず、事故の一切の責任はドライバーにあるのが今の状況なのだ。

 一方で自動運転という概念は、運転の責任がシステム側にある。この状態で仮に事故が起きれば、ドライバーは運転をしていないから責任はなく、その責任はシステムが負うことになる。言い換えれば、この責任をシステムが終える段階にまで達しなければ、自動運転は実現しないということになる。

 しかし、この実現までのハードルは極めて高く、現状では技術的にも法律/制度的にも、その段階には達していない。

国内モデルとして初めて「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能」を搭載したのはBMW「3シリーズ」。2019年4月に導入された国内モデルとして初めて「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能」を搭載したのはBMW「3シリーズ」。2019年4月に導入された

 ならば現状のハンズオフ機能はどういったものなのか。新型レヴォーグを例に説明しよう。

 新型レヴォーグが実現しているのは、高速道路を走行中に、50km/h未満の速度域でハンズオフが可能となるものだ。これは、高速道路での渋滞時の利用を想定して搭載されており、モード時は停止と発進を繰り返す渋滞でもスイッチ操作なしに追従できる。これだけなら、50km/h未満での自動運転を実現していることになる。

 しかし、このシステムで重要なのは、ドライバーが前方を視認していることを作動条件としていることだ。

 そのために、新型レヴォーグではダッシュボードの中にドライバーの視線を監視する赤外線センサーが組み込まれている。これを使ってドライバーが前方を見ているか、昼夜を通してチェックしているのだ。

 仮にドライバーが前方を見ていないことをシステムが気付くと警告音を発し、それを放置すればハンズオフ機能は直ちに解除されてしまう。

 これこそが、ハンズオフであっても、走行中の運転の責任はドライバーが負っていることを示している証なのだ。

■自動運転の定義はレベル1から5まで

 では、そもそも自動運転とはどんな概念で展開されているのだろうか。

2020年11月に発売予定のスバル新型「レヴォーグ」に搭載されるアイサイトX、ハンズオフ機能の様子2020年11月に発売予定のスバル新型「レヴォーグ」に搭載されるアイサイトX、ハンズオフ機能の様子

 自動運転の到達レベルとして広く利用されている、アメリカ自動車技術者協会「SAE(Society of Automotive Engineers)」が定めた自動運転の定義によると、自動運転レベルは以下の5つに分けられている。

●レベル1/運転支援

 車両走行中にコンピュータにより、ステアリングあるいは加減速操作がアシストされる。具体的には、プリクラッシュブレーキやアダプティブクルーズコントロール(ACC)、レーンキーピングアシスト(LKA)などが単独で発揮される運転支援機能に例えられる。現在、多くのクルマが採用している運転支援システムは、これに相当する。

●レベル2/部分自動運転

 車両のコントロールはステアリングとブレーキ、アクセルがコンピュータにより操作され、ACCやLKAなどが組み合わされて総合的にアシストする状態を指す。ステアリングの制御もおこなうため、ハンズオフも可能となる。ただし、何らかの事象があった際は、ドライバーの責任のもとで対応することが作動条件となる。BMW3シリーズや日産スカイライン、新型レヴォーグに搭載されるシステムはこれにあたる。

●レベル3/条件付き自動運転

 コンピュータが車両の操作をおこなうため、自動運転実行下でドライバーは運転操作をする必要はない。システムの責任で走行しており、ドライバーは走行中でも前方を見ずに他の作業ができる。ただ、システムが制御不能になった際はドライバーに運転を委譲するため、その準備としてドライバーは運転席に座っている必要がある。

●レベル4/高度自動運転

 一定の路線内や自動車専用道路、特定敷地内や低速走行地域など、特定エリアにおいてシステムが周辺環境を認識して走行する。ドライバーは運転操作から基本的に解放され、レベル3とは違って、ドライバーは必ずしも運転席に座っている必要はない。車内で食事や読書等、自由な時間を過ごしながら移動できる。

●レベル5/完全自動運転

 システムがすべての運転領域に対応し、ステアリングといった操舵機能もなく、ドライバーは運転操作から完全に解放される。乗車しても運転する必要はなく、作業は目的地などを設定する作業をおこなうだけとなる。自動運転の継続が困難になっても、自動的に路肩へ停止して対応。運転免許の可否もこのレベルで初めて議論される。

2020年11月に発売予定のスバル新型「レヴォーグ」2020年11月に発売予定のスバル新型「レヴォーグ」

※ ※ ※

 この区分けを見て、気づいた人もいると思うが、レベル2までは走行中の責任はドライバー側にあり、レベル3になるとシステム側が責任を負うようになっていく。

 つまりレベルが上がるにつれて、責任の範囲がシステム側に広がっていくというものだ。新型レヴォーグのハンズオフはレベル2に相当する。だから、運転中の責任はすべてドライバー側にあることになる。

 前述したように、新型レヴォーグのハンズオフがレベル3になるためには、目に見えない高いハードルが立ち塞がっている。

 それは技術的な面だけでなく、法律/制度の整備をしていくことだけにとどまらない。クルマが自動で走行していることに対する、人々の不安を取り除く受容性についても解決していかなければならないのだ。

 しかし、それらを解決できる兆しは現状ではまったく見えていない。おそらく完全自動運転のレベル5が実現するのは、当分先の話と考えて間違いないだろう。

 となれば、重要なのは足下の状況をどう進化させていくか、ということになる。いまは各自動車メーカーが技術競争のなかで、ドライバーを安全に導くさまざまな機能が実用化されるようになってきている。

 ハンズオフ機能についても、周囲をセンシングする高度な技術の実現が背景にあるし、その積み重ねこそが将来の自動運転を実現する糧となっていくのは間違いない。

 つい「自動運転」というワードに踊らされがちだが、闇雲に自動運転を目指すのではなく、ドライバーの運転をサポートできるADAS性能をしっかり固めることがもっとも重要なのだと思う。

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