コンパクトSUVに異変あり? スポーティさが「ウリ」は過去の話? いま人気のキーワードとは
くるまのニュース / 2020年10月6日 7時10分
日本ではコンパクトSUVが続々と登場しています。しかし、最近のコンパクトSUV市場ではその特徴に変化が見られるといいます。どのような変化があったのでしょうか。
■速さよりもオフロード感がいま、求められている?
日本市場でコンパクトSUVというジャンルが確立されたのは、2010年に日産が発売した「ジューク」の影響が大きいとされ、それ以降も続々とコンパクトSUVが登場してきました。
ジュークが登場した頃のコンパクトSUVは、「スポーティ/スタイリッシュ」や「速さ」という部分が強調されていましたが、昨今のコンパクトSUVでは「オフロード感」「ゴツゴツした造形」といったスポーティとは違う部分が特徴となったコンパクトSUVが増えています。この20年でコンパクトSUVにはどのような変化があったのでしょうか。
昨今の日本市場は、多種多様なSUVが登場しています。かつてのSUV(RV)といえば、大柄で悪路走破性(オフロード)というイメージでしたが、2000年代以降のSUVはオンロードの走行を重視した都市型SUVが主流となっていました。
その後、日本の道路事情に適したサイズを持つSUVとして、2010年のジュークの発売以降、スバル「インプレッサXV(2010年)」、ホンダ「ヴェゼル(2013年)」、マツダ「CX-3(2015年)」、トヨタ「C-HR(2016年)」など、コンパクトSUVのシェアが拡大しています。
これらのコンパクトSUVに共通するのは、スタイリッシュなデザインと走りを意識した走行性能で、ジュークであればクーペとSUVを融合させた外観デザインやターボ仕様の設定、インプレッサXVはリアスタビライザーやダンパーチューニングによる高ロール剛性による走りの追求が挙げられます。
さらに、ヴェゼルでもクーペを意識したスタイルや、上級セダン同等のシート形状やダンパーを使用。極めつけはC-HRで、ドイツの名サーキットとして知られるニュルブルクリンクなどさまざまな路面状況で鍛えた走行性能と見た目から走りを意識したデザインが採用されました。
また、発売前にはニュルブルクリンク24時間レースにプロトタイプをレース仕様に改造したモデルで参戦するなど、まさに走りに特化したコンパクトSUVとして登場したのです。
その後、コンパクトSUVジャンルに変化が出始めたのは2018年7月に20年ぶりのフルモデルチェンジを遂げて発売されたスズキ「ジムニー/ジムニーシエラ」です。
元々、ジムニーシリーズは日常での使い勝手やスポーティさを追求してはおらず、悪路走破性能や仕事やレジャーなどで使うのに適した個性の高いモデルでしたが、4代目として登場したジムニーシリーズは、初代モデルをイメージされるスクエアなボディに昨今でいうギア感(道具感)が幅広いユーザーに支持されたことで大ヒットを記録しました。
その後、2019年10月に発売されたマツダ「CX-30」、11月のトヨタ「ライズ」、ダイハツ「ロッキー」、2020年6月の日産「キックス」、8月「ヤリスクロス」では、オフロード感を印象付けるブラックアウトされた樹脂製バンパーやフェンダーモールが強調される形で採用されています。
また、キックス以外のモデルでは、なんらかの特徴的な4WDシステム(機能)が採用され悪路走破性能という部分でも強調されるようになりました。
2010年に登場したジュークから2016年のC-HRと、2018年以降のジムニーシリーズ以降ではそのコンセプトや強調される性能が異なっているといえます。
コンパクトSUVジャンルの傾向について、国産自動車メーカーの関係者は次のように話します。
「コンパクトSUV市場は、セダンやミニバンといったほかのジャンルよりも変化が目まぐるしいことは事実だと思います。
2010年から最初の5年ほどで登場したモデルは、それまでのミドルSUVで確率した都市型SUVというスタイリッシュなデザインが多く、そのイメージから走行性能を意識したモデルが多かったです。
しかし、最近のコンパクトSUVはそれらの走行性能はある程度持っているうえで、さらなる個性が求められています。そこで、わかりやすい個性や特徴としてヒットしたのがジムニーでした。
そこに国産メーカー各社はヒントを見つけ、近年流行りのアウトドアやキャンプという他業種のトレンドを織り込んだオフロードテイストなデザインのSUVが続々と登場したのです。
さらに、ある程度のオフロード感を追求するとメーカーとしては性能面での差別化を図りたくなるため、同じくわかりやすい4WD性能の差別化を進めているのが現状だといます」
※ ※ ※
昨今のミドルSUVもコンパクトSUV同様にかつてのスタイリッシュな都市型SUVからオフロードテイストを盛り込んだ傾向にあり、その成功例として2019年4月に発売されたトヨタ「RAV4」が挙げられます。
また、ホンダではコンパクトカー「フィット」やミニバン「フリード」に「クロスター」というSUV風なデザインのグレードを追加、マツダも「CX-5」に樹脂製パーツを装着した「タフスポーツスタイル」という特別仕様車を設定するなど、ボディタイプやそれまでのコンセプトの垣根を超えたオフロードテイスト化が進んでいるのです。
■いまや世界中でコンパクトSUV祭り?
コンパクトSUVのブームは、日本市場かつ国産メーカーだけではありません。海外メーカーでもさまざまなコンパクトSUVが登場しています。
直近では、2018年にボルボが「XC40」を日本に導入して以降、フォルクスワーゲンの「T-クロス」と「T-ロック」、メルセデス・ベンツは「GLA」をフルモデルチェンジに加え、さらに3列シートの「GLB」を発表。シトロエンも「C3エアクロスSUV」と「C5エアクロスSUV」の導入など日本市場に新たなコンパクトSUVが続々と登場しています。
ボルボは2021年中にコンパクトSUVの「XC40 Recharge」(PHV仕様)を発売予定。
さらに東南アジアでも、タイではトヨタ「カローラクロス」、インドではトヨタ「アーバンクルーザー」や日産「マグナイト」という海外専用のコンパクトSUVも登場するなど、国産メーカーと欧州メーカーではさまざまな新型コンパクトSUVがそれぞれの国や地域に発表・発売されているのです。
昨今の国産自動車メーカーの関係者は次のように話します。
「日本では、独自の道路事情によって軽自動車やコンパクトカーが支持される傾向がいまも続いています。とくに、地方ではセカンドカーとしての需要が高くなっています。
そうした扱いやすいサイズの需要が高いなかで、近年注目されるSUVが出てくると売れる要素が合わさったことで人気モデルとなります。
また、欧州市場でも以前から小さなボディを表すAセグメントやBセグメントといったモデルの市場がそれなりに大きかったこともあり、国産ならび欧州メーカーはそれらのA/BセグメントのSUVを開発してきた結果、現在の多種多様なコンパクトSUVが登場しているのです」
※ ※ ※
欧州メーカーのコンパクトSUVは、国産メーカーほどオフロード感を意識しておらず、どちらかというと以前までのスポーティな部分を強調しています。
これは、欧州市場が走行性能を意識したユーザーが多いためとみられ、今後もこの傾向は続きそうです。
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