ローリー・マキロイのベントレーが極悪過ぎと話題! 気になる落札価格は?
くるまのニュース / 2020年10月14日 20時10分
現在のベントレーの大躍進は、初代「コンチネンタルGT」の登場から始まったのは疑いようのない事実だ。コンチネンタルGTは3代目にまで進化したが、初代の市場での評価はどれくらいなのか、最新オークションから考察する。
■ベントレーの新時代を切り拓いた「コンチネンタルGT」とは?
新型コロナウイルス禍の影響により、しばしオンライン限定となることを余儀なくされていたクラシックカー/コレクターズカーの国際オークションだが、業界最大手のひとつであるボナムズ社がスイス国内で開催した「The Bonmont Sale 2020」あたりを皮切りに、リアルな対面型オークションもオンラインと併催のかたちで再開の兆しを見せているようだ。
「The Bonmont Sale 2020」については、VAGUEでもいくつかのレビューを紹介済みなのだが、実はボナムズ社では、同じ期日である9月20日に、同社が本拠を置くイングランド国内においても、オンラインと対面型を併催したオークション「BONHAMS MPH September Auction」を開催していた。
オークスフォードシャー州ビスターの空軍基地跡地に作られたクラシックカーの楽園「ビスター・ヘリテージ(Bicester Heritage)」でおこなわれた「MPH September Auction」では、英国車を中心とする100台以上のクラシックカーとコレクターズカーが出品されたのだが、VAGUEが注目したのは、今や日本でも大人気となったモダン・ベントレーである。
「全天候型の超高速ツアラー」という新概念を超高級車カテゴリーに構築し、一世紀におよぶベントレーの歴史においても屈指の名作と称される「コンチネンタルGT」の記念すべき初代モデル。および、そのハードコア版のオークションレビューをお届けしたい。
●2009 ベントレー「コンチネンタルGT」
初めてのベントレーとしてお手頃な2009年式「コンチネンタルGT」(C)Bonhams 2001-2020
最初に紹介する出品車両は、シリーズの開祖となる初代「コンチネンタルGTクーペ」である。
2002年のパリ・サロンでプロトタイプを発表、翌2003年のジュネーヴ・ショーにて生産モデルが正式リリースされたコンチネンタルGTは、それまでのベントレーの常識やイメージをことごとく破った「マイルストーン」というべきモデルだ。
同社がVWグループ入りを果たした直後にあたる、前世紀末から企画されていた「MSB」こと「ミドルサイズ・ベントレー」プロジェクトの生産化第1号車である。
ボディサイズは、当時のベントレーとしてはコンパクトともいえるものだったのだが、560psを発生する、6リッターW型12気筒ツインターボエンジンや、ベントレーでは初となるフルタイム4WDシステムなどの意欲的な新機軸を満載していた。
くわえて、販売価格はロールス・ロイス傘下時代のベントレー製クーペ「コンチネンタルR」および「コンチネンタルT」の約半分に相当する比較的安価でありながら、300km/h超級のマキシマムスピードに代表されるパフォーマンス、異次元的なロードホールディングとスタビリティなど、どちらかといえば伝統的クラフトマンシップによる豪華な内外装が最大の売り物だった時代のベントレーには望むべくもなかった、本格派スーパーカーとしての実力を手に入れていたのだ。
もちろん、この重厚ながら溌溂(はつらつ)とした魅力を世界の裕福なエンスージャストたちが放っておくはずもなく、わが国を含む世界各国で大ヒット。現在に至るベントレーの黄金時代を築き上げる功労者となったのだが、生産台数が比較的多く、しかもベントレーの特質ゆえに残存率も高いことから、洋の東西を問わずユーズドカーマーケットにはかなりの台数の売り物が流通しているのが現状である。
今回のオークションに出品されたコンチネンタルGTは、2009年型ということで、マスク周辺にフェイスリフトが施されるとともに、各部がブラッシュアップされた後期型となる。
日常のアシとしても充分に使えるクルマゆえに、オドメーターの示す走行距離は9万2214マイル(約14万8000km)に達している。
それでも、WEBカタログの写真では、年式や走行距離を感じさせないコンディションであるかに見えるのだが、エスティメート(推定落札価格)は1万6000−2万ポンドという、少々不安にさせられてしまうようなプライスが設定されていた。
そして9月20日におこなわれた競売では、エスティメート上限の2万ポンド、日本円に換算すれば約282万円までビッドが進行し、そこで無事落札となった。
たしかに初代コンチネンタルGTは、初期モノであれば日本国内のユーズドカー専門店でも300万円前後のプライスタグが付けられている事例がしばしば見られる。
最高速度300km/hオーバーのポテンシャルを持つ12気筒車が、この価格で買えてしまう! と飛びつきたくなってしまうものの、例えばエアサスペンションやトランスミッションなどの重要なパートにトラブルが発生すれば、あっという間に数百万円の修理費用が必要になることも、同時に覚悟しておかねばなるまい。
それでも、コンチネンタルGTのユーズドカー相場を暇さえあれば検索してしまうベントレー・ファンは、きっと筆者だけではないと思うのである。
■初代にもあった! ハードコア・バージョンの「コンチネンタルGT」とは?
「MPH September Auction」に出品されたもう一台のモダン・ベントレーは「コンチネンタル・スーパースポーツ」だ。
1920年代、開祖W.O.時代に製作された「3Litreスーパースポーツ」へのオマージュとして2010年から限定生産された、初代コンチネンタルGTベースの軽量・ハイパワーなハードコア・バージョンである。
●2010 ベントレー「コンチネンタル・スーパースポーツ」
プロゴルファーのローリー・マキロイがオーナーだった「コンチネンタル・スーパースポーツ」は、見るからにハードコア仕様だ(C)Bonhams 2001-2020
コンチネンタル・スーパースポーツの最大の特徴は、初代コンチネンタルGTに対する大胆な軽量化とパワーアップといえよう。2シーターの標準化や車体各部へのカーボン素材の多用により110kgもの軽量化達成に成功した。
一方、総排気量6リッターのW型12気筒ツインターボユニットは、ターボチャージャーの過給圧を上げることにより大幅なパワーアップを達成。630psものパワーと81.6kgmのトルクを得ていた。
その結果0−100km/h加速は3.9秒、最高速も329km/hという圧倒的な高性能を手に入れた傍らで、ベントレー初となる世界でもほかにあまり例を見ないバイオフューエル対応ユニットとして、ガソリンとE85(ガソリン85%、バイオエタノール15%)を、いかなる割合でも混合しても使用可能とした。すなわち、現在のベントレーが打ち出すエコロジーコンシャスな価値観の先駆けともいうべきモデルでもあったことも、注目に値する。
トランスミッションは、スタンダード版GTのZF社製6速ATをベースに専用開発したものを組み合わせる。このATは、変速スピードを半減化した「クイックシフト」システムを備えるほか、シフトダウン時に自動的にエンジン回転数を合わせるブリッピング機能を搭載。
また、電子制御リアルタイムAWDシステムは、通常走行時の前後トルク配分を従来の50:50から40:60に変更。これらはすべて、2代目コンチネンタルGTと「フライングスパー」に導入されるテクノロジーの先行採用だった。
サスペンションは、フロント10mm/リア15mmローダウン。さらに、軽量アルミニウム製サスペンションアームや強化型油圧ブッシュ、専用チューンのスタビライザーを採用した。くわえてブレーキも、カーボンセラミックブレーキを標準装備するなど、パフォーマンスに見合うだけの性能が与えられた。
出品時にオドメーターの示していた走行距離は4万8072マイル(約7万7300km)と、日本におけるこの種のクルマとして多めに感じられなくもないのだが、ハードコアなスーパースポーツとしてはほかに類を見ない実用性と天候を選ばない、このクルマのキャラクターと年式を思えば、むしろ当然ともいえるかもしれない。
くわえて、カーボンファイバー製(リクライニング/前傾とも不可能なため、自動的に2シーターとなってしまう)の専用バケットシートや、英Naim社製の最高級Hi-Fiシステム、あるいはマット仕上げのペイントなど、高価なオプションが満載となっている。
しかも現代における世界屈指のプロゴルファー、若き天才ローリー・マキロイが愛用していたクルマそのものと、ヒストリーの点でも申し分ないにもかかわらず、エスティメートは5万−6万ポンド。日本円に換算すると約680万円−約820万円という、かなり控えめなプライスが、ボナムズ社によって設定されていた。
そして9月20日に行われた競売では、ビッドが進まなかったようでそのまま流札。現在でもボナムズ・オークション社営業部門によって「Still For Sale(継続販売)」となっているようだ。
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