軽人気のなか日産「ルークス」が伸び悩み? N-BOX絶好調のホンダと異なる事情とは
くるまのニュース / 2020年11月24日 9時10分
昨今は背の高い軽自動車が人気で、ホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」など、好調な販売を誇っています。そんななか、2020年3月に発売された日産新型「ルークス」の販売が伸び悩んでいるように見えますが、それはどういうことなのでしょうか。
■発売直後にコロナ禍の影響を受けた新型ルークス
最近はトヨタ「ヤリスクロス」や日産「キックス」といった新型コンパクトSUVが注目されていますが、安定的に高い売れ行きを保っているのは、以前と同様に背の高い軽自動車です。
とくに全高が1700mmを超えるスライドドアを備えたホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」が好調です。
2020年1月から9月の販売台数は、1か月平均で見ると、もっとも多いN-BOXが1万6758台、2位はスペーシアの1万1648台、3位はタントの1万712台と続きます。コロナ禍においても、高い売れ行きとなりました。
いまの国内販売ランキングの上位車種は、これらのスーパーハイトワゴンと呼ばれる軽自動車で占められています。
そのなかで伸び悩んでいるのが日産「ルークス」でしょう。ルークスは前述の3車種と同様、全高が1700mmを超えるスライドドアを備えたスーパーハイトワゴンです。
先代型の「デイズルークス」から2020年2月にフルモデルチェンジした新型ルークスは、日産と三菱が共同開発をおこない、三菱ブランドでは「eKスペース/eKクロススペース」として販売されています。
販売台数は、三菱ブランドよりも日産ブランドのルークスのほうが多いですが、フルモデルチェンジ直後の2020年3月から9月の販売台数を平均すると、新型ルークスは1か月当たり6964台が売れています。
コロナ禍の影響が収まった6月には9431台、7月は8831台、お盆休みの8月を挟んで9月には1万736台に達しています。それでもN-BOX、スペーシア、タントに比べると売れ行きは見劣りします。
この理由について販売店に尋ねると、以下のような返答でした。
「新型ルークスの発売は2020年2月なので、もっとも売れ行きを伸ばせる肝心な時期に、コロナ禍の影響を受けました。そのために3月から5月頃は納期も長引き、販売台数が伸び悩んでいます。この状況が回復したのは6月以降でしょう。いまでは納期も1か月から2か月に収まり、順調になっています」
それでも月別の軽自動車販売ランキングを見ると、ほとんどの月でN-BOX、スペーシア、タントを下まわります。これはなぜでしょうか。
「日産の軽自動車でもっとも売れているのは新型ルークスですが、ハイトワゴンの『デイズ』も割安な価格で『プロパイロット』などを選べることから人気が高いです。さらに小型/普通車の『ノート』と『セレナ』も好調に売れており、その分だけ新型ルークスの売れ行きが大人しいのでしょう」
日産では確かにデイズも堅調に売れています。デイズの登場は2019年3月ですが、最近は5000台から6000台を安定して販売しており、9月は7502台になりました。
また9月にはノートが6493台、セレナも6353台が登録されたので、日産では4車種がバランス良く売れているわけです。
■軽ナンバー1を独走するホンダと日産では事情が異なる?
一方、ホンダ N-BOX、スズキ スペーシア、ダイハツ タントのライバル3車は、各メーカー内でも突出して高い売れ行きになっています。N-BOXは初代モデルから高い人気を誇り、いまでは国内販売の総合1位です。
N-BOXは販売が好調なので、国内で売られるホンダ車の30%以上を占めています。いまのホンダの国内販売は、N-BOXに偏っているのです。
日産新型「ルークス」
スペーシアは軽自動車が中心のスズキ車で、標準ボディとエアロ仕様のカスタムのほかに、SUV風の「スペーシアギア」も用意しています。多彩なグレード展開もあって、売れ行きを伸ばしました。
タントはダイハツの代表車種です。先代型が発売された翌年の2014年には、販売台数がN-BOXを抜いて国内の総合1位になっていますが、その実績を考えると、ダイハツとして現行タントの売れ行きは不満でしょう。
現行モデルのタントは2019年に発売されながら、2020年1月から9月の販売台数で、N-BOXだけでなくスペーシアにも抜かれました。
そこでタントは、装備を充実させながら価格を据え置いた買い得な特別仕様車を投入していますが、狙った効果を上げていません。
このように見てくると、ルークスの売れ行きがN-BOX、スペーシア、タントに続く4位なのは、妥当な結果にも思えます。
軽自動車のスーパーハイトワゴンというカテゴリに限定すると、ルークスは4位なので伸び悩んでいる印象を受けますが、逆にいえば、日産のほかの車種が好調に売れる余地があることも示しています。
N-BOXやスペーシアに匹敵するほど売れ行きを伸ばすと、デイズやノートの販売力が低下するなど、バランスを悪化させる原因にもなるからです。
販売の好調なルークス+デイズ+ノート+セレナの台数を合計すると、国内で売られる日産車の60%から70%に達します。
国内における日産車の売れ行きを見ると、人気車と不人気車の差が激しいですが、この状態が長く続くとほかの車種の改良が滞ったり、車種数が減るなどの影響も出始めるでしょう。
日産は今後、国内で販売するクルマを充実させる方針を打ち出しています。新型SUVのキックス、2021年に発売される電気自動車「アリア」などを含めて、新型車を中心にバランス良く販売することを考えて欲しいです。
それが日産車ユーザーのメリットに繋がり、売れ行きを伸ばすことにも結び付きます。
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