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シューティングブレークもあった! ザガートとアストンマーティンのコラボ「ヴァンキッシュ」2選

くるまのニュース / 2020年10月18日 19時10分

ザガートはアストンマーティンと古くからコラボレーションしているが、モダン・アストンマーティンとも傑作を生み出している。そこで、「ヴァンキッシュ」をベースとした「ザガート・シューティングブレーク」と「ザガート・ヴォランテ」の2台を紹介しよう。

■ザガートとアストンマーティンの現代コラボ2選

 今世紀に入って大躍進を遂げたアストンマーティンでは、通常のカタログモデルに加えて、特別なスペシャルモデルが数多く製作されているのはご存知のとおり。

 なかでも印象深いのは、1960年の「DB4GTザガート」以来、長らくアストンマーティンとのコラボレーションを展開しているイタリア・ミラノの名門カロッツェリア「ザガート」との協業で製作された、数々のリミテッドエディションたちであろう。

 そして、現代のザガート製アストンでもっとも大掛かりなプロジェクトとなったのは、「クーペ」が99台、「ヴォランテ」99台、「シューティングブレーク」99台、そして「スピードスター」が28台、合計325台が限定製作された「ヴァンキッシュ・ザガート(Vanquish Zagato)」である。

 2009年にショーデビューした「One-77」や、遠からず正式リリースが決まっている「ヴァルキリー」など、レース畑出身のハイパーカーたちとは異なるものの、2010年代後半に作られたモダン・アストンとしてはハイエンドに属するヴァンキッシュ・ザガートは、当然ながらアストンマーティン・ゲイドン工場製ボディの標準型ヴァンキッシュよりも、遥かに高額なクルマであった。

 2016年5月、イタリア・コモ湖畔でおこなわれるコンクール・デレガンス「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」においてワールドプレミアに供され、日本国内でもクーペのみが正式なプレミア発表会がおこなわれ、8800万円(車両本体価格)というプライスが公表されたが、ほかの3タイプの価格は未公表。

 噂によると、ヴォランテ/シューティングブレークはともに1億円を超え、よりエクスクルーシヴなスピードスターは、さらに高価だったともいわれている。

 誕生からわずか数年にして、早くも生ける伝説と化しているヴァンキッシュ・ザガートは、新型コロナ禍の国際マーケットにおいてどんな評価を受けているのだろうか。

 北米カリフォルニア州で、2020年8月14日にオンライン開催された「Quail Motorcar Auction」、およびスイスで9月20日に開催された「The Bonmont Sale 2020」に登場した「シューティングブレーク」および「ヴォランテ」のオークションレビューから、ヴァンキッシュ・ザガートの現況をひも解いてみることにしよう。

●2019 アストンマーティン「ヴァンキッシュ・ザガート・シューティングブレーク」

新車価格は1億円を超えたといわれているアストンマーティン「ヴァンキッシュ・ザガート・シューティングブレーク」のエスティメートは、約6000万円−7500万円(C)Bonhams 2001-2020新車価格は1億円を超えたといわれているアストンマーティン「ヴァンキッシュ・ザガート・シューティングブレーク」のエスティメートは、約6000万円−7500万円(C)Bonhams 2001-2020

 例年なら、毎年8月中旬に北米カリフォルニア州モントレー半島でおこなわれるコンクール・デレガンス「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」では、ボナムズ社がオフィシャルオークションを受託していたのだが、新型コロナウィルス禍に見舞われた2020年はコンクール自体がキャンセルとなってしまったため、独自のオンラインオークション「Quail Motorcar Auction」を開催。

 そこに出品されていたのが、ヴァンキッシュ・ザガート4モデルのなかでももっともユニークなボディを持つ「シューティングブレーク」だった。

 ヴァンキッシュ・ザガート・シューティングブレークは、2017年秋に世界初公開された。公開の場がTwitterだったのは、いかにも現代のクルマらしいといえるだろう。

 エステートワゴン的なロングルーフとリアゲートを持つものの、完全な2シーターという実に贅沢なクルマで、リアのラゲッジスペースはカーボンファイバーで設えられる。

 もちろんパワーユニットは、前世紀末からアストンの象徴として君臨してきた580psの自然吸気のV型12気筒5.9リッターが搭載されるなど、あらゆる点でゴージャス。

 しかも「ザガート製シューティングブレーク」というプレミアムは、ほかには代えがたいものといえよう。

 今回のオークションに出品されたシューティングブレークは、99台中の41番目に製作された個体。納車後の走行距離は20マイル(約32km)にも満たないという、事実上の新車である。またドキュメント類はもちろん、インテリアカラーと同じく赤と黒のレザーで仕立てられた専用のラゲッジセットも添付されるという。

 このクルマに対してボナムズUSブランチが設定したエスティメートは、57万5000ドル−70万ドル。日本円に換算して約6000万円−7500万円という、新車価格からすればかなり抑え目なものだったのだが、8月14日に締め切られた競売ではリザーヴ(最低落札価格)におよばず、残念ながら流札。現状においては、北米ボナムズ営業部門で継続販売となっているようだ。

■ザガート製オープンモデルの方が評価が高いのか?

 同じボナムズ社の欧州本社が、スイス・ジュネーヴ近郊の小さな村、チェセレックスの特設会場に出品車両を集め、9月20日に開催されたオンライン/対面型併催のオークション「BONHAMS The Bonmont Sale 2020」では、ヴァンキッシュ・ザガートのコンバーチブル版「ヴォランテ」を出品。

 大西洋を挟んだふたつのボナムズが、図らずも近い時期に2台のヴァンキッシュ・ザガートをオークションに登場させることになった。

●2018 アストンマーティン「ヴァンキッシュ・ザガート・ヴォランテ」

新車価格は1億円を超えたといわれているアストンマーティン「ヴァンキッシュ・ザガート・ヴォランテ」のエスティメートは、約7400万円−8600万円(C)Bonhams 2001-2020新車価格は1億円を超えたといわれているアストンマーティン「ヴァンキッシュ・ザガート・ヴォランテ」のエスティメートは、約7400万円−8600万円(C)Bonhams 2001-2020

 ヴァンキッシュ・ザガートのドロップヘッド・クーペ版「ヴァンキッシュ・ザガート・ヴォランテ」は、クーペのデビューから3ケ月後となる2016年8月に、北米「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」において発表された。

 アストンでは「DB6」時代初期に「DB5ドロップヘッド・クーペ」をベースに「DB6」のディテールを与え、わずか37台が製作された「アストンマーティン・ヴォランテ(通称ショートシャシ・ヴォランテ)」以来、コンバーチブル版をヴォランテと呼ぶようになった。

 そしてヴァンキッシュ・ザガート・ヴォランテは、一定数が量産されたザガート製スペシャルモデルとしては、1980年代末の「V8ザガート・ヴォランテ」以来、実に約30年ぶりとなるヴォランテでもあった。

 今回のオークションに出品された個体は、2018年に99台中45番目に製作されたとのこと。スイス国内にデリバリーされ、オドメーターに示される走行距離は約1500kmに過ぎない。

 また、2+2シートに代表されるアストンマーティン「Q」によるスペシャルオプションも数多くセレクトされるなど、この上なくエクスクルーシヴな1台といえよう。

 ボナムズ社が現オーナーとの協議の結果として設定したエスティメート(推定落札価格)は、65万−75万スイスフラン。これは、現在の日本円に換算すると約7400万円−8600万円に相当する。

 ところが9月20日におこなわれた競売では、1か月前の「Quail Motorcar Auction」におけるシューティングブレークと同じくリザーヴ(最低落札価格)に及ばず、残念ながら流札。こちらも現在では、欧州ボナムズ営業部門による継続販売となっている。

* * *

 2020年8月から9月のボナムズ・オークションでは、「ヴォランテ」と「シューティングブレーク」双方のヴァンキッシュ・ザガートともにビッド(入札)が進まなかったのだが、その理由として考えられるのは、新型コロナウイルス禍によって国際マーケットの行く末が不透明となっていることも、間違いなく挙げられるだろう。

 しかし、それ以上に大きな要因になり得るのが、それぞれ99台というこの種のスペシャルモデルとしては比較的大きなロットで製作されたことと考えられる。

 総計325台のヴァンキッシュ・ザガートは、発表された直後にはすべて完売御礼となったといわれていることから、新車としてのビジネスについては大成功を収めたと見て間違いあるまい。

 しかし製作からまだ数年の段階では「クラシック」とはなり得ず、しかも市場が求める希少価値については、ほかのザガート製アストンたちと比べるといささか分が悪い。

 したがって、世界限定28台のみが作られた「スピードスター」をのぞくヴァンキッシュ・ザガートの価格にプレミアムがつくとすれば、それは一定の期間を経てからのことになると思われるのである。

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