当時は注目されなかったけど今見るとステキッ! 隠れた昭和の名車3選
くるまのニュース / 2020年10月16日 16時10分
これまで販売された国産車のなかには、いまも語り継がれるほどの名車があります。一方で、当時の評価はそれほど高くなかったり売れなかったモデルのなかにも、振り返ってみると優れたメカニズムやデザインのクルマが存在。そこで、昭和の時代に誕生した隠れた名車を、3車種ピックアップして紹介します。
■昭和の時代に誕生した隠れた名車を振り返る
日本で本格的な自動車製造が始まったのは大正時代で、これまで100年以上の長い歴史があり、その間にいまも語り継がれているような名車が数多く存在します。
たとえば「スバル360」やトヨタ「2000GT」、マツダ「コスモスポーツ」、いすゞ「117クーペ」、日産初代「シルビア」などが挙げられ、どれも誰もが認める名車中の名車です。
一方で、当時はあまり評価されなかったり、人気とならなかったモデルのなかにも、いま振り返ってみると優れたデザインやメカニズムを採用していたクルマも存在。
そこで、昭和の時代に誕生した隠れた名車を、3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「クラウン ハードトップ」
当時は理解されなかった斬新なデザインの4代目「クラウン ハードトップ」
いまやトヨタだけでなく日本を代表する高級車といえる「クラウン」は、1955年に誕生し、65年もの歴史があるクルマです。
クラウンは初代からすでに高級車に分類されていましたが、昭和の時代は1車種で複数のボディタイプをラインナップするのが一般的で、初代にはセダンと多くのコンポーネンツを共有するライトバンが設定されていました。
そして、1967年発売の3代目から1979年発売の6代目まで、2ドアハードトップがラインナップされていました。
なかでも印象的なスタイルなのが、1971年に登場した4代目クラウンの2ドアハードトップです。
4代目クラウンの最大の特徴は、それまでの国産高級セダンとは一線を画する外観にあり、無骨イメージから一新されて角を丸くし、いまでは一般的なボディ同色バンパーを採用するなど、当時としてはかなり斬新なデザインとなっていました。
2ドアハードトップはセダンとは異なる角目2灯のヘッドライトを採用し、テールランプまわりのデザインも専用です。
また、リアサイドウインドウまわりの形状もユニークで、重厚感のあるフロントフェイスに対して、なだらかにトランクへとつながるルーフラインは、エレガントなラグジュアリークーペにふさわしいフォルムを実現。
しかし、アグレッシブな外観は保守的なユーザーから敬遠され、販売は低迷。後に「クラウン史上最大の失敗」とまでいわれ、実際にライバルの日産「セドリック/グロリア」に大きくシェアを奪われました。
そして、発売からわずか3年後の1974年に、直線基調で重厚感のあるデザインに一新された5代目にモデルチェンジして、販売台数は回復します。
現在、4代目のデザインは再評価されてファンも多く、クラウンらしからぬ2ドアハードトップは、とくにレアなモデルです。
●マツダ「ルーチェロータリークーペ」
パワフルで美しいクーペながら高価すぎて売れなかった「ルーチェロータリークーペ」
マツダは1967年に、量産車世界初となるロータリーエンジンを搭載した「コスモスポーツ」を発売。
未来感あふれるデザインの外観に、パワフルなロータリーエンジンを組み合わせた生粋のスポーツカーで、2020年9月に一部の部品が再販されるなど、いまも愛されている名車です。
コスモスポーツの発売以降、マツダはロータリーエンジン搭載車の拡充を図り、1969年に「ルーチェロータリークーペ」が発売されました。
もともとルーチェは1966年に発売された4ドアのミドルクラスセダンですが、ルーチェロータリークーペはシャシや外観に共通項が無い、まったくの別車種です。
搭載されたエンジンは最高出力126馬力を発揮する655cc×2ローターのロータリーエンジンで、セダンのルーチェがFRだったのに対し、ルーチェロータリークーペは前輪を駆動するFFを採用。
このエンジンはルーチェロータリークーペ専用に設計され、現在までで唯一無二のFFロータリー車です。
エンジンを縦置きとしたことで、ロングホイールベースによる流麗なクーペフォルムを実現し、公称最高速度190km/hの動力性能と美しいスタイルから、「ハイウェイの貴公子」と呼ばれました。
しかし、非常に高価なクルマだったため販売は低迷し、1972年に生産を終了。いまでは現存数も極めて少なく、まさに幻の名車です。
■日産初のFF車は斬新なデザインを採用!?
●日産「チェリー」
FF車黎明期に誕生した秀逸なデザインの「チェリー」
日産は1966年に、後に同社を代表する大衆車となる初代「サニー」を発売。マイカーが庶民でも買えるようになったことを象徴する1台でした。
ちょうどその頃の欧州では、本格的なFFコンパクトカーが普及しはじめており、日産はFRのサニーよりも小型のFF車「チェリー」を発売。
1970年にデビューしたチェリーはFFのメリット生かし、ひとクラス上のモデルと同等の広さを誇る室内空間を実現。
発売当初のボディバリエーションは2ドアセダンと4ドアセダンでしたが、1971年にはスポーティなクーペが加わります。チェリークーペは斬新でユニークなハッチバックスタイルで、左右後方視界を度外視したリアサイドのデザインは、4代目「スカイライン ハードトップ(ケンメリ)」をイメージさせました。
エンジンはサニー用に開発された1.2リッター直列4気筒OHVの「A12型」で、トランスミッションをエンジンの下に配置して横置きに搭載。
この2階建て構造はBMC「ミニ」の「A型」エンジンがすでに採用しており、エンジン全高が高くなるデメリットがありますが、コンパクトなシリンダーヘッドのOHVエンジンでは大きな問題とはならず、トランスミッションを含めたエンジン全長を短くできるメリットがありました。
また、当時2代目サニーには高性能モデルの「GX」がラインナップされ、若者から人気となっていたことから、チェリーもスポーティな「X-1」シリーズを追加。
なかでも上位グレードの「クーペ X-1R」には4輪にオーバーフェンダーが装備され、エンジンもSUツインキャブ仕様で最高出力80馬力を発揮しました。
しかし、FRが主流だった時代とあって、FF車のドライブフィールや、チェリー独特の運転姿勢やペダルレイアウトに違和感を覚えるユーザーが多かったといい、チェリーはサニーほどヒットせず、1974年に「チェリーF-II」へとモデルチェンジ。
チェリーF-IIではドライブフィールや運転姿勢などが改善され、1978年には後継車の初代「パルサー」が登場し、その後、日産の小型車はFFが主流となりました。
※ ※ ※
昭和の時代に誕生したクルマを掘り下げてみると、当時のエンジニアたちがトライ・アンド・エラーを繰り返してきたことが見えてきます。
現在はコンピューターを駆使してデザインや設計をおこない、シミューレーションや力学的な解析技術も飛躍的に向上しており、車体のモジュラー化によって開発費や時間も大幅に削減されました。
新型車の開発においてさまざまな部分が成熟しているといえますが、昭和のクルマの未完成な部分も、ある種の魅力ではないでしょうか。
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