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【実録】コロナ禍真っ只中に欧州のモータースポーツ取材に行ってみた!

くるまのニュース / 2020年10月24日 11時50分

新型コロナウイルス(Covid-19)が欧州で猛威を奮っていた時期に、果敢にも日本からモータースポーツの取材に渡欧したカメラマンによる、コロナ禍における欧州のモータースポーツの裏側のルポルタージュ。これから渡欧しなければならない人も必読。

■コロナが感染ったらサヨウナラ

 世界中を不安のドン底に追いやったCovid-19。今さら語るべくもなく状況は刻々と変化していて、この先どうなってしまうのかなんて、どんな偉い学者先生にだって本当のところはわかってない様子。

 感染が拡大するにつれて各国は国境を閉鎖。まさか21世紀にもなって自由な移動が制限されるなんて思ってもいなかった。

 年に5、6回ほどヨーロッパへラリーの取材に行っているのだけど、2020年も一連の騒ぎが始まる直前の1月から3月と、各国がロックダウンなどの経験を経て新しい生活様式を模索している最中の9月にもフランスに渡航したので(都合3回)、その時の様子を主にラリーの現場や街の様子を中心にお伝えしてみようと思います。

●2020年1月ごろのアジア人への差別報道は、ちょっと大げさかも

1月末に開催されたラリーモンテカルロヒストリック。この頃、インフルエンザは流行っていたけど、いつものことだと思っていました1月末に開催されたラリーモンテカルロヒストリック。この頃、インフルエンザは流行っていたけど、いつものことだと思っていました

 モンテカルロ・ヒストリックの取材でフランスに渡航する少し前に「インフルエンザが流行ってるから気をつけて」とフランスの友人から連絡をもらったのが今年の1月。この頃にはアジア人に対する差別が云々、といった内容の報道が耳に入るようになっていて、実際にボクも街を歩いていた時に「どこから来た? インフルエンザじゃないだろうな?」と突然声をかけられたので(フランス語は理解できないので聞き取れた単語でなんとなくの意訳)「うるせー、お前に答える義務はねーよ!」と英語で言い返したのだけど、たぶん理解してくれてないだろうなあ。

 とはいえ、1年のうち90日ほどヨーロッパに滞在していてもあからさまな差別を受けることは稀で、大多数の人は旅人に優しいので日本での報道は大袈裟な部分もあったように思う。ラリー自体も予定通りに進行して、いつものように多くのギャラリーも詰めかけていた。ソーシャルディスタンスなんて概念はこの頃にはなかったので、今にして思えばこの頃すでに蔓延しつつあったんじゃないのかなあ?

●2020年3月、あわや帰国できない状況に……

2月のWRCラリースウェーデン。スウェーデンはロックダウンなどの対策をおこなわず、集団免疫の獲得を目指した数少ない国。この頃はまだCovid-19なんてどこ吹く風みたいな雰囲気でした2月のWRCラリースウェーデン。スウェーデンはロックダウンなどの対策をおこなわず、集団免疫の獲得を目指した数少ない国。この頃はまだCovid-19なんてどこ吹く風みたいな雰囲気でした

 その後、2月にWRCスウェーデンに行った時もいつもと同じ雰囲気。様子が一変したのが3月だった。

 フランス選手権ラリーの開幕戦の取材のために再びフランスへ。さすがに乗客が少なくなったのか航空券は往復で約6万円だった。

 東京−沖縄往復と変わらない価格に喜ぶ一方、不安を感じたことも事実。同じ日程で開催予定だった隣国ベルギーのラリーが開催前日に中止が決定したあたりから、周りの人たちも「こりゃ、なんかヤバイぞ」とザワザワし始めた。

 このラリーにベルギーからやって来るメカニックの友人からは「フランス選手権も中止って噂が流れてるけど、なんか知ってる?」なんて連絡がくる始末。結果からいえば、ラリーは予定通り開催されてステージにはギャラリーも多く、いつも通りのお祭り騒ぎ。

 DAY1の取材を終えてホテルに帰ってテレビをつけると、マクロン大統領が演説していました。当然フランス語だし英語字幕もないので内容は理解できないけど、なんとなくイヤな雰囲気は感じ取れた。

 すぐに英語でネットニュースを検索してみると、2日後の月曜の朝からレストランなどは営業停止とのこと。そういえば昼間に航空会社からメールが来ていたけど、撮影が忙しくて見れてなかったなあ、とメールを確認すると、月曜朝に搭乗予定のパリ−ヒースロー便がキャンセル。電話かWEBで変更してねって内容だった。

 過去の経験上、電話が繋がらないことはわかっていたのでWEBから変更しようとすると、どうにも変更できない。電話は当然のように繋がらず。

 この頃からヨーロッパでは欠航が相次ぎ、システムが落ちていた様子。久々のただならぬ雰囲気に、不安よりもワクワクしている自分。ピンチを楽しめるようになるとたいていのことには対応できるので、この時もとくに深くは考えていなかった。

3月のフランスラリー選手権の開幕戦、Rallye du Touquetの様子。この頃にはすでに世界中で感染が拡大中。フランスに滞在中はなんとなくイヤ~な雰囲気が 迫りつつあるのを感じていました3月のフランスラリー選手権の開幕戦、Rallye du Touquetの様子。この頃にはすでに世界中で感染が拡大中。フランスに滞在中はなんとなくイヤ~な雰囲気が 迫りつつあるのを感じていました

 ラリーが開催されたル・トゥケはドーバー海峡にほど近いリゾート地。夏は避暑地として賑わう街らしいのだけど、3月は天候が不安定でしかも寒い。ここまでの寒さは予想外で、冬用の上着は持ってきていなかったので、ありったけの服を着込んでレインウェアで寒さを凌いでました。

 ここで風邪でもひこうものなら飛行機に乗れないかもしれないなあ、なんて思いながら撮影。それでもステージはスタート、フィニッシュ地点にはギャラリーがたくさん来ていて、この頃はあまり気にしていなかったけど、今なら完全にアウトな密集具合。マスクなんてボクも含めて誰もしてないし。

 唯一普段と違っていたのは、人が密集することを避けるために表彰式のセレモニーがなかったことぐらいでした。

 取材を終えてシャルル・ド・ゴール空港そばのホテルまで、2時間半ほどのドライブ。ホテルのチェックイン時にはとくに変わったこともなく、レストランもいつものように賑わっていて、翌朝からレストランやバーの営業停止が本当なのかと疑いたくなる様子。ところが、翌朝チェックアウトしようとしたら様子が一変。

 フロントは従業員に近づけないようになってるし、ロビーのソファーは座れないように……。空港に着くとショップは全部クローズ。チェックインカウンターは人で溢れていました。WEBでは変更できなかったチケットは結局そのまま。

 パリに着いたのは夜遅くだったので、カウンターでの変更もできず。仕方ないのでヒースローまでの片道分を新たに買い足したのでした。

 ヒースローから羽田行きの乗客数はいつもより少し少ないかなって感じだったけど、ビジネスクラスには出張と思われる乗客、エコノミーには観光客の姿も見られたので、なんとなくほっとした気分で帰国できたのでした。

■シャルルドゴールで受けた無料PCR検査とは

 その後の世界の様子は皆さんご存知の通り。そんななか、9月にまたまたフランスに行ってきました。もちろん不要不急の観光ではなく仕事です。

●2020年9月、無料でPCR検査を受けました

シャルル・ド・ゴール空港では無料でPCR検査を受けられるようになっていました。渡航先や航空会社によっては72時間以内の陰性証明が必要な場合もありますシャルル・ド・ゴール空港では無料でPCR検査を受けられるようになっていました。渡航先や航空会社によっては72時間以内の陰性証明が必要な場合もあります

 フランスは国境を開いていて、入国後の隔離や陰性証明も必要なし。人の気配が消えた羽田空港からガラガラの飛行機で着いたシャルルドゴール空港も人がいません。いつも嫌になるぐらい混んでたのに、人がいないとそれはそれで寂しいもんです。

 入国審査もいつもと同じくあっさりしたもの。こんなのでいいの? とこちらが心配になるほどでした。税関を抜けた先には無料のPCR検査所が開設されていたので受けてみることにしました。

 まずは問診票に記入。その後は鼻をグリグリするする例の検査。結果は72時間以内にメールで連絡がきます。もし陽性だったらどうなるのかが疑問でしたが、説明書きがフランス語でしか書いてなかったのでいまいち理解できず。

 数日後にメールが届き、結果はめでたく陰性でした。在留許可を持たない外国人旅行者でも無料で検査を受けられる点には驚いたけど、それだけ状況が切羽詰まっているのかとも思ったり。

パリ市内もやはり人が少なかったです。セーヌ川沿いの道に佇むこちらのマダム。足元には消毒用のジェルが……パリ市内もやはり人が少なかったです。セーヌ川沿いの道に佇むこちらのマダム。足元には消毒用のジェルが……

 パリで数日間取材をした後、フランス選手権ラリー第2戦「ラリーモンブラン・モルジン」の取材のために飛行機でジュネーブに向かいました。

 欧州内のフライトは便数は減っているものの、大陸間のフライトほどの影響は受けていないみたいで、ほぼ満席だったことに驚きました。

 ラリーのホストタウンであるモルジンはモンブランの麓のスキーリゾート。パリからだと飛行機でスイスのジュネーブに移動。そこからクルマで1時間半ほどの距離。

 一応は国際線になるので、機内で行動確認表が配布されました。出発地の情報、ジュネーブに到着後の滞在先や連絡先などを記入してCAが回収します。

 スイスもフランスと同様に国境を開いていて、隔離もなし。EU内でも国ごとに対応は違っていて、例えばドイツは国籍を問わず日本居住者の入国を禁じています。

 他にもイタリアは日本からの入国はできるけど、入国後2週間は自主的に隔離しないといけません。このあたりの措置はコロコロ変更されるので、もし海外に渡航する人は最新の情報を常に入手してください。ちなみに、航空会社に質問しても答えてくれません。各国の大使館などの情報を自分で調べないとなので、これが地味に疲れる作業でした。

 パリもジュネーブも街ゆく人たちはほぼみんなマスクをしていました。また、お店に入る前には日本と同じく必ず手の消毒をしないと入店できません。

 お店によっては屈強なガードマンが立っていて、マスクなしで入店するなんて絶対無理! パリはマスクをしていないと罰金が科せられるのと、いたるところに警官がいて目を光らせていました。ボクも電話をするのに少しマスクを外したら、あっという間に警官がやってきて怒られました。

 このあたりは日本よりも厳格だった気がします。ところが、山間部のモルジンに着くとマスクの着用率が明らかに下がっています。確かに人は少ないし大丈夫かも、って雰囲気はあるのだけど。バカンスシーズンなのでみんな気が緩んでいたのかもなあ。それでも、スーパーなどの店内に入る時はマスクは必須でした。

●いまのところ、以前と同じ状況での観戦は無理

この頃には感染再拡大のニュースも流れていたのだけど、ギャラリーの皆さんは知ってか知らずかこんな感じ。ソーシャルディスタンスって何??この頃には感染再拡大のニュースも流れていたのだけど、ギャラリーの皆さんは知ってか知らずかこんな感じ。ソーシャルディスタンスって何??

 さてラリーの方はというと、驚いたことにこんな状況下でも普段通りのフォーマットで開催されました。7月にエストニアから再開されたWRCは、ギャラリーの数を制限するといった対応をとっていたのだけど、フランスは制限はなくて何もかも普段通り!

 もちろん、ディスタンスを確保してマスクはしてね、というアナウンスはあるのだけど。マスクをしてる人もいればしてない人の姿も。ボク達メディアは、ステージでの撮影中はマスクを外すこともあるけど、選手へのインタビュー時は必ず着用していました。

 また選手達もインタビューを受けたり、サービスに戻った時などには必ず着用していました。モンブランの麓のキレイな景色のなかで撮影していると、確かに気が緩んで「マスクなしでいいや」って気分になるので、これが観光客だったらなおのこと気が緩むだろうなあ。ましてや日本よりも遥かに厳格なロックダウンを経験した後だし、気持ちは理解できます。

 フィニッシュのセレモニーもいつも通り開催。街の中心部で開催されたので、大勢のギャラリーが密集していました。ヤバイよなあ~と、少し不安な気持ちに。

 この取材の後、ル・マン24時間レースの取材にも行こうと思っていたのだけど、こちらはメディアの人数も制限されボク達の申請は受理されませんでした。

 入国できないので諦めたニュルブルクリンク24時間レースもメディアの数を大幅に制限。いつもだったら数万人の観客が何日もキャンプして、まるでフェスのようなレースだけど、グランドスタンドなど一部への入場を許可したのみ。

 WRCも同様で、スウェーデン以降ボク自身は取材に行っていないのだけど、やはり人数が制限されています。ギャラリーも同様で、販売されるチケットが限定されたり、観戦場所が限定されたりしている様子。

 サーキットと比べるとラリーは山のなかや街のなかが舞台なので、サーキットの観客席よりも密集度は低いので観客を入れやすいといえます。とはいえ、WRCなどの人気が高いイベントは多くの人が集まるので、第2波に見舞われている現状では今後はラリーも無観客で開催されるかもしれません。

 いまの状況がこの先何年続くか分からないけれど、安心して観戦できる日が来ることを願ってやみません。

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