なぜ新型フェアレディZやジムニーは歴代車がモチーフに? 原点回帰する新型車が増える訳
くるまのニュース / 2020年10月29日 7時10分
2020年9月16日に世界初公開された日産新型「フェアレディZ」(プロトタイプ)は、歴代モデルをモチーフにしたデザインが話題になりました。新型フェアレディZのように、最近の新型車は過去のモデルをオマージュすることが増えていますが、それはなぜなのでしょうか。
■歴代モデルのオマージュで新型なのに懐かしいモデルが増加!
最近の新型モデルを見ると、歴代モデルをモチーフにしたデザインが増えています。その典型といえるのは、2020年9月にプロトタイプ(試作車)が披露された日産新型「フェアレディZ」でしょう。
ヘッドランプやラジエターグリル、リア側のピラー(柱)、テールランプなど、1969年に発売された初代モデルの「S30型フェアレディZ」、あるいは1989年に登場した4代目モデルの「Z32型」などをモチーフにしています。
2019年に復活したトヨタ「スープラ」も同様です。直列6気筒エンジンを搭載するためにボンネットを長く伸ばした2シーターのボディ、リアフェンダーが力強く張り出してリアウインドウを寝かせた後ろ姿など、1967年に発売されたトヨタ「2000GT」と共通点が見られます。
このほか、スズキの現行「ジムニー」も、フロントマスクの形状など、1970年に登場した初代モデルを連想させ、日産の現行「スカイライン」は、リアコンビネーションランプを2019年のマイナーチェンジで変更して、往年の歴代モデルが採用した丸型を強調しています。
またマツダ「ロードスター」はデザインではありませんが、現行モデルになってソフトトップに1.5リッタ―エンジンを搭載。これも初代モデルの面影を感じさせます。
歴代モデルをモチーフにして新型モデルをデザインすることが多いのは、なぜなのでしょうか。
この背景には複数の理由がありますが、まず新型モデルのコンセプトが原点に回帰して、歴代モデルに近付いたことが挙げられます。
新型フェアレディZは、「純粋なスポーツカーの価値を改めて見出す」という考え方で開発され、その結果、外観も共通性の高い初代モデルや4代目モデルを踏襲しました。
ジムニーも同様で、先代モデルは快適性や都会的な雰囲気を強めましたが、現行モデルでは悪路指向を見直しています。車両コンセプトが初代モデルに近づいたことから、外観も初代モデルをモチーフにデザインされたのです。
また、ホンダ「N-ONE」は、2012年に登場した初代モデルも2020年秋にフルモデルチェンジする新型モデルも、1967年に発売された「N360」がモチーフです。
小さなボディに広い室内を備える優れた空間効率、運転の楽しさ、デザインや走りの爽快感などがN360に似ていることから、外観にも共通性を持たせました。
外観は車両コンセプトの表現手段なので、同じようなことが歴代モデルをモチーフにしたほかの車種にも当てはまるというわけなのです。
■若者のクルマ離れもひとつの要因に?
歴代モデルをモチーフに採用する理由として、ユーザーの高齢化もあります。スポーツカーには若者向けの商品というイメージがありますが、実際は意外に高齢化しています。
価格が高くなった影響もあり、50代から60代が中心的な年齢層になる車種も多いです。
新型「フェアレディZ」と歴代モデル
そうなるとフェアレディZであれば、初代モデルに憧れたり、あるいは所有した経験のあるユーザーが主な対象になります。その気持ちに訴えることも狙って、歴代モデルをモチーフに選んでいるのです。
海外のスポーツカーでは、アメリカ車のフォード「マスタング」やシボレー「カマロ」も、2000年以降のモデルは初代モデルをモチーフにしています。
この2車種もフェアレディZと同様、1960年代に初代モデルを発売して、割安な価格により好調に販売され、スポーツカーの普及を促進する大切な役割を果たしています。アメリカにおいても、初代モデルの現役時代を知っている人達をターゲットとしたのです。
海外メーカーの輸入代理店では、次のようにコメントしています。
「海外でも日本と同じように若年層のクルマ離れが進んでいます。スポーツカーのユーザーは高齢化しており、新型モデルが初代モデルに似たデザインを採用するようになりました。
また中高年齢層から見れば懐かしいボディスタイルが、若い人達にとっては新鮮に見えることもあります。単なる懐古趣味ではなく、新しい価値を与えることで、新たな需要の掘り起こしも狙っています」
※ ※ ※
最近は売れ筋カテゴリーのSUVでも、原点回帰のニーズが高まっています。
歴代モデルがモチーフではありませんが、人気の高いトヨタ「RAV4」や「ライズ」は、外観が古典的な悪路向けのSUVを連想させます。
この人気動向は、ジムニーの好調な売れ行きとも合致するでしょう。輸入車ではジープ「ラングラー」の販売に弾みが付き、ジープブランドの最多販売車種になりました。
歴代モデルをモチーフにしたクルマが増えた背景には、見方を変えると、開発コンセプトやデザインの行き詰まりもあるでしょう。
売れ行きを伸ばせる新しいアイデアが生まれず、結果的にクルマ造りが原点に戻り、その表現手法として歴代モデルがモチーフになっています。
歴代モデルに偏らず、進化する先鋭的なモデルと歴代モデルをモチーフにした車種の混在する状況が、ユーザーにとって好ましいのかも知れません。
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