まるでスーパーカーみたいなセダンがあった!? とんでもエンジンの珍セダン5選
くるまのニュース / 2020年10月29日 6時10分
高性能なエンジンを搭載したクルマといえば、スポーツカーやスーパーカーが定番ですが、セダンにも高性能なエンジンを搭載した例は、数多く存在。そこで、高級車にとんでもないエンジンを搭載したモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
■今では滅多に見られないようなエンジンを搭載したセダンを振り返る
ハイパワーなエンジンを搭載したクルマといえば、スポーツカーやスーパーカーが代表的な存在ですが、必ずしもそれらのモデルだけとは限りません。
そのひとつがセダンで、これまでも数多くの高性能エンジンを搭載したモデルも存在。そこで、高級車なのにとんでもないエンジンを搭載したユニークなモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●キャデラック「CTS-V」
まさにマッスルカーと呼ぶにふさわしいエンジンを搭載した「CTS-V」
かつてアメリカの高性能車といえば、セダンやスポーツカーに限らず、大排気量のV型8気筒OHVエンジンを搭載するのが常識でした。
現在はだいぶ様変わりしており、ダウンサイジングされたエンジンにターボチャージャーを搭載しているモデルも増えています。
しかし、往年のマッスルカーを思わせる、大排気量エンジンにスーパーチャージャーを搭載したハイパーセダンがキャデラック2代目「CTS-V」です。
2008年に発売された2代目CTS-Vに搭載されたエンジンは、6.2リッターV型8気筒OHVスーパーチャージャーで、最高出力は649馬力を誇りました。
このパワーを後輪のみで路面に伝え、0-60mph(約96.5km/h)加速は3.7秒と、2トン近い車体を物ともしない加速力を発揮。
また、この大出力を受け止めるシャシもチューンナップされ、ブレンボ製ブレーキシステム、電子制御式LSD、減衰力をアクティブ制御するショックアブソーバなどが採用され、日常からサーキット走行までこなす実力を持っています。
外観では専用デザインのメッシュグリル、エアアウトレットの開いたカーボンファイバー製ボンネット、小ぶりなリアスポイラーなどを装備し、派手すぎない見た目ながらも高性能さを主張していました。
CTS-Vは日本にも正規輸入され、当時の価格1475万円(消費税込)です。ちなみに、日本仕様のトランスミッションは8速ATのみでしたが、アメリカでは6速MTも設定されていました。
●メルセデス・ベンツ「450SEL 6.9」
2トン近い重さでもへっちゃらなほどの高性能だった「450SEL 6.9」
メルセデス・ベンツの高性能モデルというと、メルセデス-AMGブランドから数多く販売されていますが、かつては自社ブランドでも高性能モデルを開発していました。
そのなかの1台が、1975年に発売された「W116型 Sクラス」の最上級モデルの「450SEL 6.9」です。
車名のとおり6.9リッターV型8気筒SOHCエンジンを搭載し、3速ATを介しておよそ2トンの車体を225km/hへといざないました。
最高出力286馬力と現在なら平凡なスペックですが、56.0kg-mという大トルクを発揮していたため、いまほどハイグリップではないタイヤも相まって、アクセルワークにかなり気を使ったといいます。
ただし、本来はメルセデス・ベンツのフラッグシップとして、スムーズな乗り心地とハンドリングを実現したプレステージサルーンとしても、高く評価されていました。
なお、先代の「W109型」でも「300SEL 6.3」が存在し、スポーツカーを追い回せるスーパーセダンと呼ばれていました。
●ランチア「テーマ 8.32」
見た目は地味だが華やかなエンジンを搭載した「テーマ 8.32」
イタリアのランチアといえばスポーツカーや高性能モデルが日本では有名で、とくにスーパーカーブームの頃のランチア「ストラトス」は、当時の少年たちを夢中にさせました。
このランチアは庶民の足となるようなコンパクトカーやセダンも数多く販売してきており、なかでも1984年に登場したランチア「テーマ」は、同社のミドルクラスセダン/ステーションワゴンとして、欧州でヒットを記録。
巨匠ジウジアーロがデザインしたボディは、直線基調ながらも空力性能に優れたスタイリッシュなフォルムです。
そして、1988年に追加ラインナップされた「テーマ 8.32」には、とんでもないエンジンが搭載され、だれもが驚きました。
そのエンジンとは、最高出力215馬力を発揮する3リッターV型8気筒DOHCで、フェラーリ「308」のエンジンをデチューンして移植されたのです。
外観はベーシックなテーマとほとんど差異はありませんが、エンブレムとトランクに格納される電動式リアウイングが、ハイパフォーマンスカーであることをアピール。
内装は本革とウッドをふんだんに使った豪華な仕様で、高級セダンとして販売され、バブル期と重なっていたことで日本にも上陸しています。
■もう二度と出ないかもしれない国産セダンとは
●マツダ「ロードペーサー」
類まれなロータリーエンジンを搭載した高級車の「ロードペーサー」
マツダは1967年に、世界初の量産ロータリーエンジンを搭載したスポーツカーの「コスモスポーツ」を発売。高性能でコンパクトなロータリーエンジンはスポーツカーに適したエンジンでしたが、マツダは小型車から大型車、バスやピックアップトラック、軽自動車まで、すべてのラインナップにロータリーエンジンを設定する、フルラインナップ化を進めました。
「サバンナセダン」や「ルーチェセダン」など、比較的実用的なセダンにもロータリーエンジンを搭載し、1975年に発売された高級セダンの「ロードペーサー」では、ロータリーエンジンのみを設定。
654cc×2ローターで135馬力を発揮する「13B型」エンジンを搭載し、騒音や振動が少ないロータリーエンジンならではの静粛性による、上質な室内空間は高く評価されました。
一方で、マツダは大型セダンを自社で生産する設備が無かったため、エンジン以外をオーストラリアのメーカーであるホールデンからOEM供給してもらい、ホールデン「プレミアー」の車体をベースにロードペーサーを生産しました。
スタイリッシュなボディは日本車と一線を画するものでしたが、日本人には馴染めなかったようで、さらに高額な車両価格と、もともとは5リッターを超えるV型8気筒エンジンが搭載されることを想定していた車体は重く、ロータリーエンジンの燃費の悪さに拍車がかかったといいます。
販売が低迷したため、発売からわずか2年後の1977年に生産を終了。いまでは大変貴重なモデルです。
●トヨタ「センチュリー」
国産市販乗用車で唯一のV12エンジンを搭載した2代目「センチュリー」
高級セダンに欠かせないのが、静粛性や乗り心地のよさ、そして余裕あるパワーなどが挙げられ、1960年代からトヨタの最高峰モデル「センチュリー」にはV型8気筒エンジンが搭載されました。
初代センチュリーは長期間にわたってV型8気筒エンジンが採用されましたが、1997年に登場した2代目センチュリーでは、日本の市販乗用車としては史上初で唯一のV型12気筒エンジンを搭載。
センチュリー専用に開発された、5リッターV型12気筒DOHCの「1GZ-FE型」エンジンは、最高出力280馬力と控えめなパワーでしたが、片側6気筒を別々に制御することが可能なように設計されていました。
これは片方の6気筒に不具合が生じても、もう片方の6気筒が機能して走行し続けられるようになっており、まさに要人のためのクルマに相応しいエンジンです。
この国内唯一の乗用車V型12気筒エンジンは、2018年にセンチュリーがフルモデルチェンジした際にV型8気筒+モーターのハイブリッドにスイッチされて、消滅してしまいました。
しかし、天皇陛下がお乗りになる御料車の「センチュリーロイヤル」にはこのエンジンが搭載されており、まだまだ活躍し続けることでしょう。
※ ※ ※
近年、ダウンサイジングターボエンジンの普及により、大排気量の自然吸気エンジンは少数派になってしまいました。
高出力が得られるターボエンジンも魅力的ではありますが、大排気量自然吸気エンジンならではの、アクセル踏んだ時のレスポンスの良さも、大いに魅力的です。
今後、ますます大排気量自然吸気エンジンは減っていくと予想されますので、手に入れたいという人はお早めに。
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