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車はアップデートする時代!? マツダ「スカイアクティブX」が進化したワケ

くるまのニュース / 2020年11月2日 14時10分

マツダは、スカイアクティブXのバージョンアップを図りました。従来型とはどのような部分が異なっているのでしょうか。

■マツダのスカイアクティブXが超絶進化!? 何が変わったのか。

 長期的に見るとピュアEVの時代がやってくるのは間違いありませんが、現時点では技術的な課題(とくにバッテリーの性能)も多いことから、直近で「オール電化」にはならず、ハイブリッドやPHEVといった「内燃機関+電動化技術」が主流となると筆者(山本シンヤ)は考えています。

 そのため、マツダは内燃機関が搭載される限りは今後も進化させていく必要があると考えています。

 そんな内燃機関の究極の姿といわれるのが、ガソリンをディーゼルのように自己着火させる究極の燃焼方式を用いた「ガソリンの圧縮着火エンジン」です。

 これまで主要な自動車メーカーが研究・開発をおこなってきましたが、マツダが独自の「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」を用いて世界で初めて実用化に成功したのが「スカイアクティブX」です。

 このスカイアクティブXが市場導入されてから約1年が経過しました。「マツダ3」を皮切りにクロスオーバーSUVの「CX-30」にも搭載。

 筆者は全域でドーピング感のない力強さとフラットな特性なのに加えて、雑味のないサウンドや抵抗感が少なそうな摺動部、滑らかに吹け上がる回転フィールなど、高度にバランス取りされた“高精度エンジン”のような繊細さも備えられ、個人的にはマツダが目指す「滑らかな走り」に一番マッチしたエンジンだと思っています。

例えるならば「究極の実用エンジン」といってもいいでしょう。

 ただ、ガソリン車+70万、ディーゼル車+40万というプライスに見合う魅力があるかどうかというと決定打に欠けるのも事実です。

 例えば、180馬力/224Nmのスペックに対してもう少し余裕は欲しいし、走りと燃費のトレードオフが少ないがハイブリッドに対抗できるほどの優位性を感じにくいなどが挙げられます。

 ちなみに筆者はデビュー時のインプレッションの結論でこう記していました。

「現時点の結論をいうと、スカイアクティブXは磨き甲斐のある原石だと思っています。つまり、スカイアクティブXは『夢のエンジン』ではなく『夢の扉を開けたエンジン』だと考えています」という風に記していました。

 かつてロータリーエンジンがそうだったように、今後の進化・熟成によって『ハイブリッド/EVよりも明らかにいいでしょ?』といわせてほしい。

 個人的には扱いやすく、動的質感が高く、官能性を備えるエンジンなので、スポーツカー向けユニットにも発展させてもいいと思っています」

※ ※ ※

 そんななか、スカイアクティブXのアップデートがおこなわれました。SPCCIは生まれたての技術であり、進化の余地はたくさんあるということでしょう。

 では、何が変わったのでしょうか。実はこのバージョンアップは「SPIRIT 1.1」と命名(整数はハード、小数点以下はソフトウェアの変更を意味)されています。

 これまでもマツダは時期に囚われず、「良いモノが出来上がったらすぐに提供」という考えの元に積極的な改良をおこなっています。

 筆者はその考えは賛成ですが、変更したことが上手く伝わっていないことを以前から指摘していました。これならばPC/スマホのOSバージョンアップと似ているので解りやすいかもしれません

 今回は1.1なのでハード変更はなく、制御つまりソフトウェア変更のみです。変更項目は大きく分けると3つで、ひとつ目は「燃焼制御の緻密化」で、混合気状態の予測モデル精度とくにEGRモデル精度を高めることで多くの新気導入が可能になり大幅なトルクアップを実現(180馬力/224Nm→190馬力/240Nm)しました。

 ふたつ目は「エアサプライの過給開始時期の変更」で、アクセルを踏んだときの瞬発力が引き上げられています。

 そしてみっつ目は「M-Hybridによるトルク制御の緻密化」で、トルク変動をISGのトルクコントロールで減衰させることで加速の繋がりがより滑らかになっています。

 正式発表は2021年初頭を予定していますが、今回一足お先にマツダの美祢試験場(サーキットコース/ワインディングコース)で現行モデルとSPIRIT1.1の乗り比べをおこなってきたので報告したいと思います。

■マツダOSバージョンアップ!? 何がどう変わったのか。

 スカイアクティブXは発進時の応答性の良さは「ディーゼル」、常用域のフラットなトルク感は「ライトプレッシャーターボ」。

 そしてレッドゾーンまでスッキリ綺麗に吹け上がる感じは「ガソリンNA」と、さまざまなエンジンの長所がシームレスに融合している所が特長ですが、SPIRIT1.1はその特徴がより解りやすくなったように感じました。

 具体的にいうと、アクセルを踏んだ時の「瞬発力」と「レスポンス」が増しています。現行モデルも決して悪くはありませんが、SPIRIT1.1に乗ると眠そうだったエンジンがシャキッと目覚めたような違いです。

 スペックは前述のとおり180馬力/224Nm→190馬力/240Nm(社内測定値)に引き上げられていますが、常用域(2000rpm-3000rpm)のトルクは数値以上の差を感じました。

 今回はETCレーンを模したシーン(20km/hから加速)、高速道路の合流を模したシーン(30km/h→70km/hの加速)、高速道路の坂道での加速を模したシーン(70km/hからの加速)などを体感しましたが、SPIRIT1.1は明らかに少ないアクセル開度で同じように走れます。

 MTは現行モデルでは躊躇せずシフトダウンするシーンでもSPIRIT1.1だとシフトキープのままでOK、ATはビジーシフトが影を潜めました。

 筆者はマツダのATの多段化は必須だといい続けてきましたが、SPIRIT1.1ならガマンできるかも。

 燃費は認可前なので具体的な数値は公表されませんでしたが、同条件で簡易計測してみるとMT/AT共にSPIRIT1.1のほうがいい値(現行モデル+1.0km/L-1.5km/L程度)を示していることを確認できました。

 これらを総合的に評価すると、SPIRIT1.1は実用エンジンがスポーティエンジンになったような変化です。

 恐らく現行モデルはスカイアクティブX初導入ということで耐久性/信頼性を重視するために多くのマージンが取られていました。

 しかし、SPIRIT1.1はより使いこなせるようになった印象で、結果として本来目指していた性能に一歩近づいたのではないかと思っています。まさにロータリーエンジンのときと同じように「進化し続ける」わけです。

 このSPRIT1.1は現行モデルへの無償アップデートも検討中だそうです。これは海の物とも山の物ともつかないスカイアクティブXの可能性を信じて購入してくれた最初のユーザーに対する「感謝の気持ち」といってもいいかもしれません。

「SKYACTIV-X」をバージョンアップを実施「SKYACTIV-X」をバージョンアップを実施

 ただ、残念なのは今回も視覚的な変化がほとんどないことです。ちなみにSPIRIT1.1であることが解るのはフロントフェンダー左右に追加された「SKYACTIV X」エンブレムとリアの「e SKYACTIV X」エンブレムのみと、またしても間違い探しレベルです。

 何度もいいますが、個人的には世界初の圧縮着火エンジン搭載車を所有する喜びが感じられる「プラスα」はシッカリ与えるべきだと思っています。

 例えばディーラーオプションの「シグネチャースタイル」のような無駄を省いたエクステリアに、あえて無駄をプラスさせる空力デバイスや専用デザインのアルミホイール、インテリアの質の良さを損なわずに高揚感を高める専用素材(例えば滑りにくい素材でホールド性を上げるなど)。

 さらに世界の一流ブランドを効果的に使うなどなど、マツダ3のトップモデルであることをもっと主張すべきです。ユーザーはパワーユニットを買うのではなく、クルマを買うわけですから。

 実は今回はパワートレインの変更のみと聞いていますが、実際に走らせるとシャシも変わっているように感じました。

 具体的にはシッカリ感が増したステア系、鼻先の重さを感じさせない回頭性、姿勢変化を抑えながらもしなやかさを持った足さばき、ギャップを乗り越えたときのおさまりの良さ、より積極的に動かす方向のリアなど、エンジン同様にシャキッと目覚めたハンドリングに変化していました。果たしてこれは個体差なのでしょうか。

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