トヨタ新型「GRヤリス」は本格4WDスポーツも意外な美点が!? 公道試乗で判明した実力とは
くるまのニュース / 2020年11月21日 18時10分
自動車評論家の国沢光宏氏が、トヨタ「GRヤリス」の公道試乗をおこないました。いったいどのような印象を持ったのでしょうか。
■「新型車と思えないくらい自然」 GRヤリスの実力は?
プロトタイプをサーキットで試乗して、すでにレポートしているトヨタ「GRヤリス」ながら、まだ公道をじっくり試していない。はたして使い勝手や乗り心地、絶対的な速さ感など、どんなレベルだろうか。
試乗車は「何でも付き」の最上級グレード。といってもスポーツモデルなので豪華装備じゃなく、LSDや高性能タイヤなど速さを追求するアイテムのフル装備です。
一般道を走るクルマとして考えれば十分なホールド感を持つドライビングシートに座り、プッシュボタンでエンジン始動。
1速を選びクラッチミートすると、このあたりの操作感は新型車と思えないくらい自然です。シフトフィール良好! クラッチ繋がるストロークや位置もほどよい。新型車って完成度低いことが少なからずあります。
試乗会場は山の上にあるホテルだったこともあり、ワインディングロードを普通のペースで下っていく。ステアリングギアボックスの容量が大きいため、ハンドルを切った量に対し素直にクルマは反応してくれる。ハンドルの重さもちょうど良い感じ。
いろんな意味で熟成されている。普通の新型車なら1回、2回の改良を受けた程度の仕上がりといって良いでしょう。
サスペンションはスポーツモデルとあって減衰力をキッチリ出しています。その割に初期が滑らかに動くため乗り心地も悪くない、と思っていたら、路面の段差など大きい入力があると「ガツン!」ときた。このあたり、KYBの限界かもしれません。
三菱「ランサーエボリューション」シリーズ(ランエボ)も、スバル「WRX」シリーズも、KYBが最後まで要求値に届かずビルシュタインを選んだ。
滑らかな路面の高速道路など走っていればとても快適ながら、荒れた途端にドタバタします。コーナリング時のようなロール速度だと、これまた悪くない。
サーキットを走るなら問題無し! もっとも厳しいのはターマックラリーのように荒れたワインディングロード走ったときの挙動でしょう。ここを改善したら乗る心地の奥行きも出る。
GRヤリスの開発陣が長い時間を掛けてKYBを改良していくのか、それとも「良いものは躊躇わず使う」という選択して実績のあるダンパーを採用したグレードを作るか、興味深い。
KYBのダンパー、スバルと三菱が15年掛けてモノにならなかった。ここはZF(ザックス)あたりを使ったらいいと思う。
しっかりしたクルマ作りが出来ない自動車メーカーにはB級ランクの製品しか出してこないZFながら、GRヤリスの開発チームならA級ランクのダンパーを作ってくれると思う。
正規グレードじゃなく、オプション設定でもいい。少なくとも私(国沢光宏)がGRヤリスを買ったらダンパーは手を加えます。もちろん普通の人なら標準で満足出来るだろう。
■内燃機関のみのスポーツカーという貴重な存在
乗り心地がしっとりすれば質感だってググッと上がる。駆動系の遊びは無く、ブレーキタッチはガッチリしていて気持ち良い。素晴らしいことに優れた性能を持つ自動ブレーキだって付く。
加えてブレーキホールド機能付きのため、坂道発進で面倒なサイドブレーキ操作不要。万が一エンストしても、アイドリングストップ付きだから自動で始動してくれます。
トヨタ新型「GRヤリス」
バリバリの高性能モデルながら街乗りしていてストレス無し。ランエボとWRXもストレス無く乗れるクルマだったけれど、GRヤリスには「軽快感」がある。
このクルマに近いモデルを挙げるならポルシェ「911」でしょう。いや、10タイプくらいの路面コンディションで勝負したら911に勝てると思う。コストパフォーマンス、高いです。
このまま乗るのも良いが、私なら前述の通りダンパーを変更し(前のめりになった車高は、もう少しリアを落としたい)、バーチャル発表会に出ていたGRヤリスのような大型リアウイングを付ける。
というか、なんでリアウイングのオプションを用意しなかったのか不思議でならない。モリゾウさんが乗っていたGRヤリス、カッコ良いです。
そうそう。1.5リッター直列3気筒+CVTを組み合わせたFFの「RS」グレードにも試乗してみた。AT限定免許で乗れるため、GRヤリスの雰囲気を楽しむならいいと思う。
WRC好きならラリーカーのような大きいリアウイングを付け、奥さん用のクルマとして導入するも良い? ボディや車体骨格など共通なので、どんな走りをしたってボディは余裕しか感じない。
世界規模で燃費規制が厳しくなっているご時世、もうGRヤリスのようなガソリンエンジンだけで走るスポーツモデルは出てこないだろう。エンジンで走るクルマ好きにとって、最後のプレゼントのような存在です。
気になる人はぜひディーラーで試乗してみたらいいと思う。
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