バーチャル空間で実車を運転!? 世界初! ボルボの「究極のドライビングシミュレーター」とは

くるまのニュース / 2020年11月25日 17時10分

スウェーデンに本社を置くボルボカーズは、世界初となる「究極のドライビングシミュレーター」についての技術説明をライブ配信でおこないました。一見すると、普通のドライビングシミュレーターに見えるのですが、一体何が究極なのでしょうか。

■リアルとバーチャルでボルボが安全デバイスを開発?

「なるほど、これは結構凄い」

 オンラインでおこなわれた、スウェーデンのイエーテボリからのライブストリーミングを観ながら、思わず唸ってしまいました。

 イエーテボリといえば、ボルボカーズ本社の所在地です。

 今回の発表に関して、ボルボからの事前情報では、安全デバイス開発に対する「ア・ミリオン・モア(より多くの人たちを救う)」というタイトルだけ聞いていましたが、詳細については知らされていませんでした。

 ライブ画面では、なにやらIT系の研究施設のような場所が映し出されましたが、それが「ボルボ・オープン・イノベーション・エリア」だということです。

 最初に紹介されたエンジニアは、イノベーションリーダーでVR/AR(仮想現実)部門のエクスパート、ティモテ・フローリン・ガイアラア氏です。彼からは、自動車業界では馴染みのない企業やシステムの名前が次々と紹介されました。

 まずは、ユーニティ(Unity)です。ビデオゲーム開発で代表的な開発プラットフォームとして知られています。

 同社最新のリアルタイム3Dソフトウエアを使います。実際に、ボルボのエンジニアが今回のライブストリーミング中に、点群での三次元計測してソフトウエアに取り込む様子を紹介しました。

 次に、テスラスーツです。スポーツウエアのように上半身と下半身にピッタリと装着する、全身触感スーツです。

 なお、テスラスーツは、あのEVのテスラとは無関係です。

 人の動きに対して、座標軸での位置ではなく、触覚によるフィードバックをデータ化し、乗車員の姿勢や衝撃を受ける箇所、シートベルトのプリテンショナーの作動時や、エアバックが開いたときなど、さまざまなシーンで触覚のデータ化を実現します。

 逆に、システム側から指示を出すことも可能で、両腕での触感を高める指令を出したところ、テスラスーツを身につけたボルボの女性エンジニアの両腕が、ポンっと上に跳ね上がりました。

 これら、ユーニティとテスラスーツを融合させることで、人がVR/ARとして認識するためのデータが集約・解析できるということです。

■あっと驚くボルボの「究極のシミュレーター」とは?

 次に登場したのが、ヒューマンファクターズ部門のシニア・デザイン・エンジニアのアレクサンダー・エリクソン氏です。

 彼の前には、一般的なドライビングシミュレーターと、VR/ARを社会実装する上で欠かせない、バリヨ(Varjo)のヘッドセット「XR-1」を装着したエンジニアの姿が見えます。

 ここにユーニティの3D技術を融合させ、リアルに近い運転感覚を実現しています。

 ボルボの「究極のドライビングシミュレーター」 ボルボの「究極のドライビングシミュレーター」

 実験例として、自動運転でのレベル3で、クルマのシステムから運転者に運転を移行する、テイク・オーバー・リクエスト(TOR)をおこないます。

 具体的に何秒で安全運転に復帰できるのか、その方法として視覚や振動など、どのような接触方法が良いのかを検証します。

 ただし、シミュレーターの外観としては、ほかの自動車メーカーや大学などの研究機関でも一般的におこなわれている機材と同じように見えて、これだけでは「究極の…」とはいい切れないという感想を持ちました。

 シミュレーターの奥へ行くと、今度は「XC60」をベースとした試験車がありました。

 案内役は、人中心での方法論と機械との研究をおこなう、ユーザーエクスペリエンス部門のシニア・テクニカル・リーダーのカスパー・ウィックマン氏です。

 まずは、試験車両後部に搭載された各種機器を説明。続いて後席ドアを開けると、ノートパソコンを抱えて後席後部のモニターを見ているエンジニアの姿があります。

 あとで分かったことですが、ライブストリーミングの最初からここまでが本番に向けた
“前段”だったのです。

 ライブストリーミングの画面が、事前収録されたテストコースでの実走行風景に切り替わりました。すると、驚いたことが起こりました。

 運転席に座るドライバーが、バリヨのVR/ARヘッドセットを装着した状態で、ハンドルを握りながら実車で走り出したのです。

 ヘッドセット内の画面では、進行方向の右側から、大きなヘラジカが道路を横断しようとしています。

 車両が自動で急ブレーキをかけると、ドライバーのテスラスーツから即座にデータが収集され、それがユーニティを活用したソフトウエアプログラム上で、人の動きとして助手席の位置で再現されました。

 人に見えるデータの点群の集合体がアバターで、名称はエバです。まさに、リアルとバーチャルの融合です。

 ウィックマン氏は「これと近いデバイスを使っている自動車メーカーがあると思いますが、(実車走行を直接絡めた)ここまで状態で具体的な研究開発をしているのは、世界で我々ボルボだけだと認識しています」とボルボの特異性を強調しました。

 これがボルボがいう「究極のシミュレーター(アルティメート・シミュレーター)」です。

 確かに、走行中の車内で、VR/ARヘッドセットを装着する実験について、筆者(桃田健史)は2019年1月に米・ラスベガスで、アウディ「e-tron」の後席乗車し、アウディがディズニーと共同開発したエンタメ系ソフトウエアを体験しましたが、実車の運転席でVR/ARヘッドセットということは、その時点で想像できませんでした。

 近い将来、日系自動車メーカーも、こうしたリアルとバーチャルを融合させ、さまざまな走行シーンを再現しながらの自動車開発が当たり前になるのかもしれません。

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