トヨタ 新型「アリオン」世界初公開! セダン市場縮小も2車種投入する狙いとは
くるまのニュース / 2020年11月22日 7時30分
トヨタは、2020年11月20日より中国で開催されている広州モーターショーにて、日本でも販売されているセダン「アリオン」と同名の中国版となる新型「アリオン」とその姉妹車となる新型「レビンGT」を世界初公開しました。日本や北米では、セダン市場が縮小傾向にあるなかで、なぜ新たなセダンを2車種導入するのでしょうか。
■トヨタ新型「アリオン」世界初公開!? 姉妹車「レビンGT」と同時公開!
2020年11月20日に中国で広州モーターショーが開幕。そのなかで、トヨタは一汽トヨタ(第一汽車との現地合弁)から新型「アリオン」を、広汽トヨタ(広州汽車との現地合弁)から新型「レビンGT」を発表しました。
9月に開催された北京モーターショーは通常4月の開催が新型コロナウィルス感染症の影響で延期されていましたが、広州モーターショーは例年11月開催なので開催日の面では影響を受けることはありませんでした。
そのなかで、トヨタが発表した新型アリオンと新型レビンGTを発表。
日本でアリオンといえば、かつてラインナップされていた「コロナ」の姉妹車である「カリーナ」の後継車種であり、アリオン自体の姉妹車である「プレミオ」もコロナの後継車種となります。
プレミオとアリオン両車種とも2007年のフルモデルチェンジ以来、13年もの間、数回のマイナーチェンジを経て販売されており、そろそろ次期型が登場するのではないかと噂されている車種です。
この車種は保守的で比較的コンパクトなセダンを好む高年齢層や、捜査覆面車両の用途で各都道府県・自衛隊・在日米軍の警察組織が主に購入していますが正直売れ行きは芳しくないようです。
ではこの度発表された新型アリオンはどのような車種なのでしょうか。
簡単に表すなら、「カローラのホイールベースを延長して装備もアップグレードし、アリオンという名前を付けたクルマ」です。
つまりは日本でおなじみの5ナンバーサイズのアリオンとはまったく違う立ち位置となります。
中国語名で「傲瀾(ao lan)」と名付けられたこのアリオンは、グローバルモデルとなるカローラのホイールベースを50 mm延長し、2750 mmとしています。
中国におけるカローラの搭載エンジンは中国限定の9NR-FTS型1.2リッター直列4気筒エンジンと、ハイブリッド向けの8ZR-FXE型1.8リッター直列4気筒エンジンを用意。
発表された新型アリオンは「アヴァロン」と同じM20A-FKS型2.0リッター直列4気筒エンジンを搭載しています。
全体的なデザインは既存のカローラを向上させたデザインとなっていますが、サイドバイサイドで比較するとリアのドアが若干長くなっており、後部座席の空間をより広くしたものとみられます。
一汽トヨタの現行ラインナップのなかでは「カローラとアヴァロンの間」に位置するモデルとなります。
ではアリオンが「カローラのホイールベースを延長して装備もアップグレードし、アリオンという名前を付けたクルマ」なら、レビンGTはどのようなモデルなのでしょうか。
こちらも「レビンのホイールベースを延長して装備もアップグレードし、GTを足したクルマ」になります。
レビンGTは中国語名で「凌尚(ling shang)」と名付けられており、「凌」という字はベースとなるレビンの中国語名「雷凌(lei ling)」に由来します。
レビンといえばスプリンタートレノの姉妹車、「カローラレビン」のイメージが今も日本では根強いと思いますが、中国では2014年に一汽トヨタが生産・販売するE180系カローラの姉妹車として広汽トヨタからデビューしました。
レビンGTもエンジンなどの基本的な部分はアリオンと同じですがエクステリアデザインなどはアリオンがカローラの流れを汲んでいるのに対し、こちらはレビンの流れを汲むものとなっています。
また、ラインナップ上の車格も一汽トヨタのアヴァロンの立ち位置が広汽トヨタではカムリなため、レビンGTは広汽トヨタのラインナップでは「レビンとカムリの間」に位置するモデルです。
■トヨタがアリオン&レビンGTを同時投入する狙いとは
ベースとなる車種のホイールベースを延長させたモデルを展開するのは主にメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどのドイツ車メーカーがよくおこなう手法です。
とくにメルセデス・ベンツは「Sクラス」のロングホイールベース(LWB)版は世界中で展開していますが、中国ではSクラスに加えて「Aクラス」や「Cクラス」、「Eクラス」のLWB版もラインナップに揃えています。
トヨタがこのような車格のセダンを今回投入した理由のひとつの、中国市場で年間40万台以上も販売される人気モデルの日産「シルフィ」(中国仕様)が属する「A +級セダン」クラスのモデルがなかったことが挙げられます。
中国市場では年間40万台以上も販売している日産「シルフィ(中国仕様)」
中国市場ではセダンは大まかに「A〜D級」の4つの車格に分類されており、それぞれA級はトヨタのカローラやホンダ「シビック」、フォルクスワーゲン「ボーラ」など、B級がトヨタのカムリやホンダ「アコード」、マツダ「マツダ6」、フォルクスワーゲン「パサート」など
C級がトヨタ「クラウン」、メルセデス・ベンツ「Eクラス」、BMW「5シリーズ」など、そしてD級がレクサス「LS」、メルセデス・ベンツ「Sクラス」、BMW「7シリーズ」などが該当します。
そしてそれぞれのクラスの間に位置する車格が最近は台頭してきており、今回のアリオンとレビンGTはA級とB級の間に位置する「A+級」という車格に該当します。
A級セダンを少し広くしたが、B級セダンにまでは至らないというこのA+級セダンは、長らく前述のシルフィやフォルクスワーゲン「サギター」(ジェッタの中国向けモデル)が独占してきた市場です。
今回トヨタがA+級セダンに該当するアリオンとレビンGTを投入することで、中国市場でのラインナップで欠けていた「カローラとアヴァロンの間」「レビンとカムリの間」のセダンを望んでいた消費者の声に応えながら競合他社が独占するクラスに挑戦していく狙いがあるようです。
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