「クラウンSUV」は成功しない!? 需要低迷も高級セダンに求められる使命とは

くるまのニュース / 2020年11月26日 7時10分

トヨタの高級セダン「クラウン」がセダンからクロスオーバー車へと方向転換するという話が出ています。セダンの需要が低迷していますが、クラウンのクロスオーバー化は正しい道なのでしょうか。

■カテゴリーを変更して成功した車種はほとんどない

 先ごろ「トヨタ『クラウン』を従来のセダンを廃止し、クロスオーバー車化を検討する」という報道があり、あくまでもSUVではなくクロスオーバー車やSUVに似たモデルへの検討ということです。

 メーカーに真偽を尋ねると「将来の商品計画については返答できません」との回答でしたが、販売店の一部からは別の話も聞かれました。

「クラウンは、高級車としての位置付けを受け継ぎながら、カテゴリーをクロスオーバー車に変更します。『ハリアー』よりもさらに上級のクロスオーバー車に発展します」とのことです。

 さらに直近の報道では、「セダンプラス」という新しいカテゴリーに発展させる話も出ています。

 しかし過去を振り返ると、同じ車名でカテゴリーを変更して、好調に売れた車種はほとんどありません。

 たとえば日産「レパード」は、初代が4ドアと2ドア、2代目は2ドアのみ、3代目は4ドアのみとコンセプトを頻繁に変えた結果、売れずに終わりました。

 とくにクラウンは、1955年の初代モデル発売以来、基本的に4ドアセダン(4ドアハードトップを含む)を主体に歩んできました。セダン以外のボディタイプでは、クラウンの車名とイメージが合わないでしょう。

 次期クラウンがカテゴリーを変える理由は、登録台数が下がったからです。

 現行クラウンは2018年6月に登場して、同年の登録台数は、先代型も含めて1か月平均で約4200台でした。

 それが2019年は現行型のみを販売したのに、1か月平均で約3000台に下がり、2020年はコロナ禍の影響が収まってきた9月と10月が2000台少々です。

 クラウンは2020年11月に一部改良を受けた影響もあり、9月・10月の登録台数が控え目になったことも考えられますが、低調であることに変わりはありません。

 このような事情によって、クラウンをクロスオーバー車に変更するわけです。しかし、セダンを欲しがるユーザーは、そこまで減ってしまったのでしょうか。

 国内でコンパクトカーを手掛ける開発者は、以下のようにコメントしています。

「中高年齢層のお客さまの間では、いまでもセダンの人気が根強いです。乗り心地や質感を重視されることもあり、日本車から欧州車に乗り替えるお客さまも多く見られます。

 一方、若いお客さまは、ボディが短いために運転しやすい、トランクスペースのないコンパクトな車種を好まれます。また、ミニバンで育った人が増えたことも影響しているのでしょう、スライドドアを備えた車種の人気がとくに高いです」

 ホンダ初代「ステップワゴン」などのミニバンが普及を開始したのは、1990年代の中盤です。1990年に生まれた人が就学年齢に達した頃なので、いまの20代から30代前半のユーザーには、ミニバンで育った人も多いです。

 そうなると2列シートの車種でも、天井が高く、スライドドアを備えた軽自動車やコンパクトカーが馴染みやすいでしょう。

 とくに軽自動車のホンダ「N-BOX」やコンパクトワゴンのトヨタ「ルーミー」などは、小さなボディで運転しやすく、価格も割安で、なおかつ車内は広く後席を畳めば自転車なども積みやすいです。

 若い人達にとって、実用的なファミリーカーを購入するなら、セダンではなく背の高い軽自動車やコンパクトカーになります。

■クラウンが若返りを図ったことで失ったものとは?

 その一方でクラウンを扱うトヨタの販売店からは、以下のようなコメントも聞かれました。

「クラウンの売れ行きは以前に比べると下がりましたが、2020年11月の一部改良でインパネの形状を見直しました。エアコンを液晶のタッチパネルから、従来と同様の一般的なスイッチに戻しています。この効果もあり、お客さまがクラウンに戻り始めた印象を受けます。

 クラウンには、もう少し高級セダンで頑張って欲しいです。クロスオーバー車に変更される報道もありますが、SUVのラインナップは、すでに上級車種のハリアーも含めて充実しています。

 セダンの人気が低迷しているといわれますが、小型の『プレミオ』や『アリオン』も、新型になったら必ず購入すると約束しているお客さまがいらっしゃいます」

2020年11月2日一部改良したトヨタ「クラウン」2020年11月2日一部改良したトヨタ「クラウン」

 クラウンはユーザーの若返りを目的に、現行型ではクルマ造りを大幅に変更しました。日本ではトランクスペースが明確に分かるセダンスタイルが人気ですが、現行クラウンはリアウインドウを寝かせたクーペ風です。

 全幅は1800mmですが、全長は4910mmに達しており、このサイズは以前用意された上級の「マジェスタ」と同等。街中では少々運転しにくい印象もあります。

 走行性能では、安定性が高まった代わりに乗り心地が硬めになり、以前の柔軟な感覚が薄れました。

 また、インパネは前述の通りマイナーチェンジで変更されましたが、発売当初は液晶パネルを上下に2つ並べていました。

 そしてグレード名も、馴染みのある「ロイヤルサルーン」が廃止され、スポーティな「RS」が主力になっています。

 現行クラウンは若返りを図りましたが、代わりに中高年齢層のユーザーは離れてしまいました。さらに若いユーザーはクラウンの車名に馴染みにくいために、売れ行きを下げたといえます。

 しかも、いまはトヨタの全店が全車を売るため、クラウンが販売されていたトヨタ店のユーザーが、以前はトヨペット店のみの取り扱い車種だった「アルファード」やハリアーに簡単に乗り替えられるようになりました。

 トヨタの全店が全車を扱う体制に以降して、クラウンのユーザーが別のトヨタ車に移った事情もあります。

 クラウンをクロスオーバー車に変更するのは早計で、前述の通り成功する見込みも乏しいです。

 クラウンは欧州車的なスポーティ指向に振りすぎたので、セダンスタイルを保ちながら軌道修正を図り、高級セダン路線で改めてクルマ造りを見直すべきでしょう。

※ ※ ※

 セダンを欲しがるユーザーが減っているのは確かですが、その魅力まで薄れたわけではありません。

 セダンは重心が低く、後席とトランクスペースの間に隔壁があることからボディ剛性を高めやすいです。低重心と高剛性は、走行安定性と乗り心地、つまり安心と快適を向上させます。

 このセダンの価値を求めるユーザーはいまでも多いです。とくに最近は衝突被害軽減ブレーキの普及もあり、安全に対する関心が高まっています。そのために欧州車のセダンは、いまでも人気が高いのです。

 走る楽しさではなく、多くのユーザーに響く安心と快適の観点から、セダンの価値を改めて追求して欲しいです。

 現行クラウンは、走る楽しさを強く表現したことでユーザーが離れました。そこを修正すれば、クラウンは現在の自動車市場に合ったセダンの価値を身に付けて、再び少しずつ人気を高められるでしょう。

 それはクラウンに限らず、すべてのセダンにブレイクスルーのヒントを与えます。そこに挑むべきは、65年の伝統を持つクラウンにほかなりません。

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