クラシック・ランドローバーが2500万円!! 高値の理由は「リボーン」にあり
くるまのニュース / 2020年12月2日 19時30分
新型「ディフェンダー」のデリバリーがスタートし、注目を集めているランドローバーだが、その先祖たるモデルたちは、オークションの世界でどの様な評価を得ているのか、北米で開催されたオークション結果を見てみよう。
■リボーン・プロジェクト第1号車は2500万円!
クラシックカー/コレクターズカーのオークション業界最大手のRMサザビーズ社は、北米インディアナ州エルクハートにて2020年5月に開催するはずだった大規模オークション「THE ELKHART COLLECTION」を、予定から約半年の延期に相当する10月23ー24日に、COVID-19感染対策を厳重におこなった上での対面型と、昨今の新スタイル「リモート入札」の併催でおこなうことになった。
2輪/4輪合わせて280台を超える自動車が集められたこのオークションは、実は詐欺の疑いで訴追され、破産宣告を受けたという、さる実業家の資産売却のためにおこなわれたものだそうなのだが、そのコレクションはまさに珠玉と呼ぶに相応しいレベル。
主に第二次大戦後に生産されたアメリカやヨーロッパ、あるいは日本車も含む名車・希少車たちが勢ぞろいした。
そんななかでVAGUEが注目したのは、新型の世界的大ヒットで再びスポットライトを浴びることになった元祖「ディフェンダー」と、その原型である元祖「ランドローバー」である。
ジャガー・ランドローバー・クラシック謹製のレストア車両を含めた、伝説のクロスカントリーカーたちが、アメリカのオークションでいかなる評価をうけたのだろうか?
●1950 ランドローバー「シリーズI SWB カー・ゼロ」
ランドローバー・リボーン・プロジェクト第1号車であるランドローバー「シリーズI SWB カー・ゼロ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
2017年初頭、ジャガー・ランドローバー社は、「ランドローバー・リボーン」と名付けたプログラムの一環として、ランドローバーのアイコン的存在でもあるオリジナルの「シリーズI」モデルを世界中から集め、細心の注意を払ってレストアすると発表した。
このプロジェクトのベース車両は25台。それぞれ、今も昔もランドローバーの本拠であるソリハルにある専用のワークショップに集結させ、熟練した修復チームのもとでプロジェクトが進められた。
「ジャガー・ランドローバー・クラシック」純正のレストア事業ゆえに、リボーン計画では可能な限りオリジナルパーツを保持し、交換が必要なものは、70年前のオリジナルの素材とプロセスを使用して作られた新しい部品に交換されると謳われた。
今回「THE ELKHART COLLECTION」オークションに出品されたのは、ランドローバー・リボーン・プロジェクト第1号として、数か月を掛けて修復された「カー・ゼロ」である。
もともとは、長年にわたって農業車両としてクイーンズランド州で使用されていた個体で、長年放置されていたところを発見されてソリハルに持ち込まれたという。
リボーン化にあたっては、元色であるブロンズグリーンにペイント。インテリアも時代考証によって選ばれたグリーンのビニール張りが施されている。また、オリジナルのキャンバストップと取り外し可能なサイドウインドウも、当然のごとく新品に取り換えられている。
エンジンは、修復後もシリーズI 最初期型のオリジナルである1.6リッター直列4気筒をリビルドしながら保持しているとのことである。
レストアの直後から、ジャガー・ランドローバー・クラシックのPR活動で世界を巡回していた「カー・ゼロ」。2018年の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」を訪れた際に、この個体そのものと対面している筆者としては、コンディションやレストアの精度、もちろん時代考証などには太鼓判を押しても良い。
レストアされてからの走行距離はわずか126kmということで、現オーナーのもとに移ったのちは、屋内で所蔵されていたようだ。
この記念すべき「カー・ゼロ」に、RMサザビーズ社は9万ー12万ドルのエスティメートを設定。そして競売ではビッドの応酬となり、なんとエスティメート上限の2倍に相当する24万800ドル。つまり約2520万円という、驚異の高値で落札されるビッグディールとなった。
これはランドローバーの歴史において、あるいはジャガー・ランドローバー・クラシック部門にとっても特別な意味を持つ1台であることを勘案すれば、当然の結果とも思われるのだ。
■ヤングタイマーでもディフェンダー人気は健在!
●1963 ランドローバー「シリーズ IIA ピックアップ」
109にトラックボディを組み合わせた「ピックアップ」の「シリーズIIA」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
1958年に登場したランドローバー「シリーズII」は、初代以来のデザインを踏襲しながらも、若干の丸みを帯びたフェンダーや、それまでは省略されていたサイドスカートなど、のちのディフェンダーにも継承されるディテールが初登場することになった。
もともとショート80インチ/ロング107インチでスタートしたホイールベースは、ショート88インチ/ロング109インチとされた。
搭載されるガソリンエンジンは、「ローバーP4」と共通の2.3リッターに拡大されたほか、1961年にはディーゼル版の排気量も拡大されるなど、メカニズムにも細かい進化が施されたという。
そしてシリーズIIとしての誕生から3年後にあたる1961年には、小改良版たる「シリーズIIA」へと進化し、「シリーズIII」への代替わりを果たす1971年まで生産された。
今回のRMサザビーズ「THE ELKHART COLLECTION」オークションに出品されたのは、1963年モデルの109にトラックボディを組み合わせた「ピックアップ」である。近年の国際マーケットに現れるランドローバーらしく、大規模なレストアが施された1台だった。
総アルミ製ボディには亜鉛メッキが施され、ディフェンダーとなる以前の時代のランドローバーが弱点としていた、アルミ合金製パネルの腐食を防いでいる。
また、1989年から初代「ディスカバリー」に搭載され、1993年以降はディフェンダーでも標準エンジンとなった「200Tdi」ターボディーゼルエンジンをコンバートするなど、極めて趣味の良い「レストモッド」としての評価が下されて然るべき個体だったようだ。
このランドローバー109ピックアップに、RMサザビーズ社と破産管財人が協議の上で設定したエスティメート(推定落札価格)は6万ー7万5000ドル。
そして実際の競売では、エスティメートの上限を凌駕する7万7280ドル、日本円に換算すると約810万円で無事落札と相成った。
見た目は古き良き1960年代のランドローバー。でも、中身はデイリーユーズ(ただしアメリカでの……)にも充分に供することのできるディフェンダーに限りなく近いことを思えば、こちらもきわめて順当というべきオークション結果になったといえるだろう。
●1993 ランドローバー「NASディフェンダー110」
V8 OHVエンジンを搭載した500台のみの限定モデルとなる「NASディフェンダー110」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
RMサザビーズ「THE ELKHART COLLECTION」オークションに出品された、ほかの2台のランドローバーが、純然たるクラシック時代の「ランドローバー」であるのに対して、こちらは1990年代の「ディフェンダー」である。
2017年をもって生産を終えた今となってもアイコン的な人気を誇る一方で、1990年代の生産車両については「ヤングタイマー・クラシック」としても高い支持を得ている。
ランドローバー・ディフェンダーは、1990年に第3のランドローバー「ディスカバリー」が登場したことにより、新たにペットネームが授与されたものである。
各モデルはインチ単位のホイールベースが名称に追加され、それぞれディフェンダー90(ショート)/ディフェンダー110(ロング)/ディフェンダー130(トラック用のスーパーロング)となり、心臓部は初めてターボ化された4気筒ディーゼルエンジンがメインとされた。
そして、旧き良きローバー製V型8気筒エンジンは、北米・日本などの輸出向けや、時おり追加設定される限定車にのみ搭載されることになった。
今回「THE ELKHART COLLECTION」オークションに出品されたディフェンダー110は「NAS」の通称名で知られる北米仕様。もとをただせばGMビュイック由来で、アメリカ人が愛してやまないV8 OHVエンジンが組み合わされている。
NASディフェンダー110のV8モデルは500台のみの限定生産で、この個体はノースカロライナ州シャーロットのランドローバー正規ディーラーからデリバリーされたシリアルナンバー112とのこと。走行距離は3万7000マイル(約6万km)未満で、公式WEBカタログを見る限りでは、新車同様のコンディションを保っている。
そしてRMサザビーズ社と破産管財人が、このNASディフェンダーに設定したエスティメート(推定落札価格)は、5万ー7万5000ドルという、なかなか強気ともとれるものだった。
ところが、いざ競売が始まってみると価格はどんどん上昇し、終わってみればこちらもエスティメート上限を5万ドル近くも上回る12万3200ドル、邦貨に換算すれば約1300万円という驚きの価格で落札されることになったのだ。
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