新型ノートは高級車? 日産がバンダイナムコと共同で「音」を開発 小型車の常識を変える狙いとは
くるまのニュース / 2020年11月29日 9時30分
日産が日本市場を再強化するべく投入するコンパクトカーの新型ノート。パワートレインや運転支援技術が格段に向上しています。さらに、細部の「音」に関してバンダイナムコのサウンドクリエイターと共同で「音」を開発しました。なぜ、コンパクトカークラスにおいてこれほどまで「音」にこだわるのでしょうか。
■新型ノートは高級車並みに「音」にこだわっていた?
2020年11月24日、日産は日本市場でも人気の高いコンパクトカー新型「ノート」を9年ぶりにフルモデルチェンジすると発表しました。
2018年には登録車販売台数No.1を記録するなど、名実共に人気なノートですが、今回のフルモデルチェンジでは、コンパクトカーの常識を超えた施策が施されているといいますが、どのようなものがあるのでしょうか。
日産は、2020年5月28日に2019年度決算報告を公表。この際に、今後の事業構造改革「Nissan NEXT」を明らかにしています。
この「Nissan NEXT」では、「今後18か月で12の新型車を投入する」とアナウンス。そのなかには、日本市場において非常に重要なモデルとなる新型ノートの登場も匂わせていました。
それから約半年後、前述のとおり3代目となる新型ノートを世界初公開。新型ノートは、これまで日産が培ってきた電動化技術や自動運転技術などのノウハウを注ぎ込んだモデルだといいます。
なかでも、新型ノートに採用されるe-POWERは、先代ノートやミニバン「セレナ」、コンパクトSUV「キックス」に搭載されるものとは違い、第二世代e-POWERとして、さまざまな部分が改良されました。
また、自動運転技術では「プロパイロット」の進化版となる「プロパイロット(ナビリンク機能付き)」が国内の日産車に初採用されます。
さらに、デザイン面では2021年中頃に発売予定の電気自動車「アリア」に類似する先進性のあるデザインを採用したことで、コンパクトカーよりも上のクラスとなる存在感を放っています。
しかし、新型ノートはこれらの数値や見た目だけではない「質感」にも注力して開発されたと、日産の第二製品開発部の角田浩康氏は話します。
――新型ノートの質感について教えて下さい。
日産では、『高品質感活動』というものをおこなっており、新型ノートでもその細部に至るあらゆる部分の高品質感を目指して開発しました。
この高品質感とは、お客さまがクルマに近づいて、乗り込み、運転し、クルマを降りるまでの間に体感する『上質・高級感を感じる造りの良さ』および『お客さまの期待を超える考えられた演出』と定義しています。
『上質・高級感を感じる造りの良さ』では、一体感のある形状・見栄えや質感の良さ、統一感のある操作音。
『お客さまの期待を超える考えられた演出』は、シーンに応じた照明や音の演出、ドアの開閉など動きに変化をもたせた演出をいいます。
新型ノートにおいては、外観ではボンネットとライト部分やバックドア開口部のチリ(すき間)などの見栄え、ドアを開閉する際の音に関して高品質感を求めて開発しました。
車内では、ディスプレイ表示や各スイッチの操作感、樹脂製パーツの質感、グローブボックスの閉じ操作感、操作音や警告音の質感など細かな部分まで手を加えています。
なかでも高級感を感じやすい部分として、「ドアの閉じ音」がわかりやすいといい、運転手や同乗者に関係なく、そのクルマに触れる部分です。
ドアの閉じ音は『重厚で、収まりが良く、ガチャつかず、閉じる音量も適切』というポイントを抑えると高品質感を感じることがわかっています。
そのため日産では、ドアの閉じ音を音像解説により、高周波音の発生メカニズムを特定し、それらを改善することで安っぽい音から高品質な音へと改良しました。
※ ※ ※
ドアの閉じ音のひとつまで追求された新型ノート。この高級感や高品質感がどこまでユーザーに訴求できるか、今後発売されてからの課題となるかもしれません。
■日産がバンダイナムコと共同で「音」を開発した狙いとは
ドアの閉じ音を徹底的に解析してこれまでのコンパクトカーでは体感出来なかった高品質感を実現した新型ノートですが、そのほかの「音」でも高品質感を追求したといいます。
前出の角田浩康氏は、「情報提示音」の重要性について次のように説明します。
――高品質感を感じるアイテムの情報提示音とは、どういうものでしょうか。
情報提示音とは、クルマの乗るうえで聞こえてくる「WARNING(警告音)」「CAUTION(注意喚起音)」「報知音」を指しています。
今回、日産ではこれらの音を「簡単にわかる、聞きやすい」「感情的・情緒的」「高品質」という3つのキーワードで新しく開発しました。
世の中の情報提示音は、進化してきました。例えば、ポケベルのブザー音からスマホなどの好きな音楽に変化していることや、同じく駅の発車音もブザーから各駅に合わせたイメージ曲に進化しています。
また、クルマにおいても従来のブザー音から情緒的な音色を持たせた音に変わりつつあり、欧州のプレミアムブランドとなるメルセデス・ベンツやBMW、ボルボが採用をはじめてきています。
今回、日産では2020年秋に北米で発売された新型「ローグ」を皮切りに、日本では新型ノートから、音の開発をおこなっています。
前述の3つのキーワードだけで音を開発するだけでなく、日産ブランドらしさも考慮しました。
また、この情報提示音を開発するにあたり、バンダイナムコのサウンドクリエイターとのコラボレーションによって分かりやすく情緒的な音に仕上げました。
さらに、音を聞き取りやすくするために、運転席側のダッシュボードに情報提示専用のスピーカーの開発までおこなっています。
※ ※ ※
今回の新型ノートでは、警告や注意喚起といった何気ない音までこだわりぬいていますが、なぜそこまでする必要があったのでしょうか。
新型ノートについて日産の執行役副社長・星野朝子氏は次のように述べています。
「新型ノートは、第二世代e-POWERを搭載したことで、世界中の日産車においてもっとも注目されています。
さらに、ホームマーケットの日本で確実に成功を収めることが日産の電動化への道を確実なものにすると思っており、日産全体の期待を背負ったクルマです」
「WARNING(警告音)」「CAUTION(注意喚起音)」「報知音」といった情報提示音を日産テイストを盛り込んで新開発
このように、従来のコンパクトカーではその属性から一定数の品質を保っているのがほとんどで、高級感や高品質感はさらに上のクラスのモデルが求められているというイメージでした。
しかし、新型ノートでは、コンパクトカーでも「コンパクトカーの常識にとらわれることなく、新しい価値観を訴求する」という、まさに日産渾身の新型モデルなのです。
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