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なぜホンダは中国で魅力的なEVを次々投入も他国で売らない? テスラやBMWと異なる戦略とは

くるまのニュース / 2020年12月7日 7時10分

ホンダは、2020年11月下旬に中国で開催された広州モーターショーで中国専用EVの第三弾となる「M-NV」を東風ホンダから発売すると公表しました。一方でテスラやBMWは中国の工場で生産したEVを2021年始めから欧州に輸出すると明かしています。なぜ、ホンダは中国から輸出せず、独自の小型電気自動車「ホンダe」や、北米ではGMとの協業による別のEV戦略を展開するのでしょうか。

■ホンダは、中国では魅力的なEVが続々投入も、なぜ他国で売らない?

 中国で魅力的な電気自動車(EV)を続々と発表しているホンダですが、そうしたモデルは日本をはじめとするほかの地域では販売されていません。
 
 しかし、米国の電気自動車メーカーのテスラは、2020年10月中頃に上海工場で生産したEV「モデル3」を欧州に向けて輸出を開始すると発表。同じくドイツのBMWも2021年始めに欧州向けへの輸出を開始するとしています。
 
 では、ホンダもテスラやBMWと同様に中国で開発・生産しているEVをグローバルで展開する可能性はあるのでしょうか。

 中長期的に見れば既定路線となっているクルマの電動化ですが、その方向性や積極性については、自動車メーカーごとに異なる戦略を採っているのが現状です。

 日系自動車メーカーでいえば、トヨタはハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を軸にしつつ、将来的にはFCV(燃料電池車)の普及を目指しています。

 また、トヨタは中国市場でホンダと同様に「C-HR」ベースの中国専用EVを2車種展開するなど、さまざまなパワートレインを展開。

 一方、日産は早くから電気自動車(EV)の開発に注力しており、2010年から「リーフ」をグローバルで展開し、2021年中頃には第二弾として「アリア」もグローバルで導入するなど、今後もその方向性は継続するようです。

 マツダやスバルのような中規模自動車メーカーは、電動化への大規模投資ができないことから、トヨタなどの自動車メーカーとの協業をしたり、モデルや販売地域を絞り込む「選択と集中」をおこなうことで、将来を模索しています。

 そんななか、独自の戦略を採るのがホンダです。ホンダは、以前より「クラリティ フューエルセル」や「クラリティ PHV」といったFCVやPHVも市場に投入している一方で、2020年にはブランド初のEVである「ホンダe」を日本や欧州で発売しています。

 販売台数はそれほど多くはないものの、あらゆる電動パワートレインをラインナップしているのは、ホンダの技術開発力の強さを示しているといえるでしょう。

 そんなホンダですが、最近になって電動化が加速しています。そして、その中心となっているのが中国です。

 ホンダは、現地の合弁企業である広汽ホンダから「VE-1」、東風ホンダから「X-NV」というEVをそれぞれ2018年と2019年に発表しています。

 そして、2020年11月の広州モーターショー2020では、東風ホンダから「M-NV」が発表されました。

 これらは、細部こそ異なるものの、基本的には日本でも発売されているコンパクトSUVの「ヴェゼル」をベースとしたコンパクトSUVスタイルのEVです。

 スタイリングはもとより、EVにおいて重要となる航続距離についても500km近くとなるなど、実用的なレベルに仕上がっています。

 また、現地での販売価格も日本円換算で200万円台となっているなど、単なる技術アピールのためのモデルではなく、しっかりと「販売台数を稼ぐクルマ」であることがうかがえます。

 もともと、世界でもっとも電動化を推進している市場のひとつである中国に対して、電動車を積極的に投入していくというのは決して不思議なことではないですが、電動化は中国市場だけの専売特許というわけではありません。

 実際に、欧州各国では、2030-2050年頃をめどに内燃機関のみの新車を販売することを規制する方向に向かっています。日本や北米でもそうした議論が進められています。

 一般消費者からすれば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった内燃機関を搭載したクルマのほうが現時点ではまだまだ身近かもしれません。

 しかし、自動車メーカー側の視点に立つと、早ければあと10年以内の間に、電動車を開発して量産体制を構築し、販売網や整備ネットワークの整備も進めなければならないのです。

 そして当然のことながら、販売する電動車は、機能的にも価格的にも魅力的な商品である必要があります。

 一方で、ホンダの場合、すでに中国市場で実用的な機能かつ価格のEVを販売していることから、来たるべき電動化の時代への対応はそれほど難しくないと考えることもできます。

 むしろ、航続距離が500km、価格が300万円以下というEVであれば、いまの日本でも購入を検討する消費者は少なくないかもしれません。

 また、欧州などでは、各メーカーの新車販売台数のうち、一定の台数をEVなどの電動車にしなければ追徴金などのペナルティが課される「CAFE規制」という環境規制が進められています。

 各メーカーは新型EVを投入することでこの規制へ対応しており、その代表的な例がマツダ「MX-30」、そして前述のホンダeです。

 ただ、ここで疑問が浮かびます。ホンダの場合、すでに中国市場でヴェゼルベースのEVを投入していることから、単なる規制対応のためならば、そうした中国生産のEVを欧州などの各地域へ展開すれば良いのではないでしょうか。

 もちろん、地域ごとに細かな規制対応は必要ですが、そもそも世界戦略車であるヴェゼルは世界の主要地域で販売されているため、規制対応自体はそれほど難しいことではないでしょう。

 実際に、ある業界関係者は「中国で展開している日系自動車メーカーのEVを日本や欧州で販売することは、技術的にはそれほど難しくはない」と話します。

 また、ホンダは2020年9月に米国のGMと北米における戦略的アライアンスに合意。ここでは、GMのグローバルEVプラットフォームをベースにホンダ向けの新型EV2車種を共同開発すると明かしています。

 これらのグローバルにおけるEV戦略について、ホンダは次のように話します。

「ホンダのクルマは、グローバルモデルと地域専用モデルに分かれています。

 しかし、現時点で、ホンダが展開するEVは、中国専用、日本や欧州のホンダeが展開されており、それぞれの現地法人などがその地域にあったモデルを展開する戦略を採っています」

※ ※ ※

 トヨタには「適地適車」という理念があるように、各地域に合わせたクルマづくりは、日系自動車メーカーのお家芸ともいえるものです。

 ホンダもまた同様の理念に沿った戦略を採っているということなのでしょう。

■日本展開も? SUVスタイルの次世代EVコンセプト

 中国で開発・生産したEVを世界展開するにはさまざまなハードルがあるといいます。

 実際に、合弁相手である広州汽車や東風汽車との契約や、中国政府による規制、さらにはEVの心臓部であるバッテリーの調達の問題なども、中国で生産しているEVを海外に展開しない(できない)理由と考えられます。

 また、年間の新車販売台数が約3000万台と、世界の新車の約30%を占める中国市場を最優先したいという事情もあるのかもしれません。

 営利企業である以上、もっともビジネス上のメリットがある地域に注力するのは当然です。

 しかし、そう悲観することはないかもしれません。そのヒントは、2020年9月に開催された北京モーターショー2020で発表された「Honda SUV e:concept」という、SUVスタイルのEVコンセプトカーにあります。

北京モーターショー2020でホンダが世界初公開した「HondaSUV e:concept」。ホンダがEVの量産を見据えその方向性を示すEVコンセプトカーとなる。北京モーターショー2020でホンダが世界初公開した「HondaSUV e:concept」。ホンダがEVの量産を見据えその方向性を示すEVコンセプトカーとなる。

 ホンダ広報部では同車を「将来、中国で初となるホンダブランドのEVの量産を見据え、その方向性を示すEVコンセプトカー」と説明するなど、今後を担う重要なモデルという位置づけであることがわかります。

 同車は、ホンダの現地法人であるホンダ技研科技によって開発が進められたという点では、中国市場をメインターゲットに据えたモデルであることは間違いありません。

 しかし、このコンセプトSUVは将来的に中国市場以外でも展開する可能性があるといいます。

 ホンダは次のように説明します。

「Honda SUV e:conceptは、大量生産を前提としたコンセプトカーです。具体的な地域や時期は未定ですが、市販化された際には中国以外の地域での展開も検討しています」

※ ※ ※

 新型車の開発では、開発そのものと同等以上に重要なのが量産化であるといわれています。

 数万台単位の個体を一定の品質で保つためには、工場設備への投資や部品調達システムの構築など多大なコストと時間が必要です。

 一方で、量産すればするほど、1台あたりのコストは下がるため、ひとつのモデルを各地域で展開することは、消費者にとってもメーカーにとってもメリットは少なくありません。

 ホンダは、広州汽車や東風汽車とヴェゼルベースのEVを開発・生産するなかで、EVの量産ノウハウを得てきたといわれています。

 そうしたノウハウを活かして登場するであろう新型EVは、まさしくホンダの命運を握るモデルとなるかもしれません。

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