「ガバッ」と開いて間口が広々! 個性的すぎる「観音開き」のクルマ5選
くるまのニュース / 2020年12月5日 6時10分
個性派クーペSUVとして、注目を集めるマツダ「MX-30」は、美しいスタイリングはもちろん観音開きの「フリースタイルドア」を採用して個性を強調しています。そこで今回は、観音開きドアを採用したクルマを5台紹介します。
■開口部がとにかく広い「観音開き」の魅力は?
SUV人気は依然として続いていますが、なかでもクーペスタイルの小型SUVが最近のトレンドになっています。
そんなクルマのトレンドとは別に、一般的ではないけれどインパクトが絶大で、忘れた頃に採用された車種が登場するのが観音開きドアのモデルです。
現に、個性派クーペSUVとして注目されるマツダ新型「MX-30」は観音開きの「フリースタイルドア」が採用され、さらに個性を強調しています。
そこで今回は、注目度抜群の観音開きドアを採用してきたクルマを5台ピックアップして紹介します。
●マツダ「RX-8」
現在のマツダにとって、外せないポイントは「SKYACTIVテクノロジー」と「魂動デザイン」ですが、しかしそれ以前のマツダにとってのアイデンティティは「ロータリーエンジン」でした。
ロータリーエンジンを搭載するスポーツカーの称号「RX」を受け継いだ最後のモデルが「RX-8」です。
マツダのスポーツカー「RX-7」は2ドアの本格派で、リアシートは補助席レベルでした。
そんな状況に当時資本関係にあったフォードから、次期モデルは「大人4名がしっかり乗れる4ドア」との条件がつけられ、車体の大型化・重量増を抑制するために開発されたアイデアが観音開きスタイルのフリースタイルドアだったのです。
フリースタイルドアを採用したRX-8は2003年から2012年まで生産され、それまでのRX-7に搭載されていたターボではなく、自然吸気のロータリーエンジンを搭載。
エンジンは654cc×2の排気量で、210馬力のノーマル仕様と250馬力のハイパワー仕様が用意されました。
そして4ドア化されたにも関わらず、全長4435mm×全幅1770mm×全高1340mmのボディサイズにとどめ、車重は1310kg(タイプS)と同クラスとしては軽い車重をキープしています。
RX-8最大の特徴ともいえるフリースタイルドアは、強度が求められるBピラーの代わりにアルミ製リアドアに「ビルトインピラー」を採用。
コンパクトなサイズのリアドアとしてクーペのようなスタイリッシュさを保ちつつ、ドア開度はフロントドアが70度、リアが80度とし、後部座席の乗降性を高めています。
ただし、フロントドアを開けないとリアドアが開閉できない仕様になっています。
2008年にはマイナーチェンジがおこなわれ、外装やインテリアも小変更が加えられましたが、全体のイメージは変わっていません。
ちなみにエンジンの最高出力は235馬力になってパワーダウンしたように見えますが、これはより実測値に近いパワー数値になったためです。
また足回りは、スタンダードモデルで16インチから17インチに、ハイパワーモデルの特別仕様車には19インチホイールを装着していました。
結果としてRX-8の観音開きドアは、4ドアモデルをいかに軽くスタイリッシュなまま乗降性を高めるために採用された実用性を考えてのものだったといえます。
●トヨタ「FJクルーザー」
トヨタには日本市場向けや北米市場向けなど、エリアのニーズに適した専売モデルが意外に数多くあります。
この「FJクルーザー」は、もともとは北米市場専用の中型SUVとして2006年にデビューしましたが、人気の高さから日本でも2010年に正規販売されたというユニークな経歴を持っています。
FJクルーザーの特徴は、少しレトロチックな外観です。丸型ヘッドライトや「TOYOTA」のロゴをあしらった楕円形グリルなど、名車「FJ40型ランドクルーザー」(40系ランクル)を連想させるデザインを採用。
無骨さと可愛さが共存したデザインは、女性からも評判は上々でした。
そんな「ゴツカワイイ」ボディは、全長4635mm×全幅1905mm×全高1840mmというアメリカンサイズ。
エンジンも4リッターV型6気筒という大排気量で、2トン近いボディを276馬力のハイパワーでグイグイ走らせてくれます。
日本仕様は、駆動方式がパートタイム4WDで5速ATの右ハンドルです。(北米仕様では6速MTも用意)
FJクルーザーは、往年の40系ランクルのイメージを大切にし、3ドア風のルックスに仕立てるために観音開きを採用しました。
隠されたリアドアにはピラーを内蔵しボディ強度を確保。少し立ち気味のAピラーと合わせて座席への乗降性も高めており、見掛け倒しではない個性的な装備となっています。
FJクルーザーのフレームは「ランドクルーザープラド」と共通のフルフレーム構造で、サスペンションやパワートレインは北米のピックアップトラック「タコマ」などと共用という、トヨタ版パイクカーの側面もありました。
本格的な悪路走破性も可能で、「クロスカントリー」や「オフローダー」と呼ぶほうがふさわしいともいえます。
●ホンダ「エレメント」
背を高くして頭上空間を稼いで、直線を基調で横方向の広さも確保する手法は、とくに軽ハイトワゴン系で多く用いられています。
なかでもホンダは、「マンマキシマム・メカミニマム」の思想をクルマ作りに取り入れており、車内が広々とした「N-BOX」が大ヒットしています。
これと同様の手法でデザインされたSUVが、「エレメント」です。
2002年にホンダ・オブ・アメリカで開発されたSUVの逆輸入モデルとして、2003年にエレメントが日本デビュー。
西海岸のライフセーバーがいる詰め所をコンセプトに、10フィート(約3m)のサーフボードが積めるように、防水性に優れる素材を使ったインテリアと、観音開きスタイルの「サイドアクセスドア」を採用しました。
前後バンパーやフェンダー、サイドシル部分を未塗装の樹脂製パネルにすることで「ギア感」を演出。両サイドをBピラーレスとすることで、抜群の開放感を実現しています。
エレメントはテールゲートも上下分割式となっており、サイドアクセスドアと合わせて車内を丸見え状態にすることができるなど、ドアの開口部の広さにこだわったモデルでした。
エレメントのベースは都市型SUVの草分け的存在である「CR-V」で、全長4300mm×全幅1815mm×全高1790mmと当時としてはワイドなボディに、160馬力の2.4リッター直列4気筒エンジンを搭載。
通常はFFで駆動し、必要な場合のみ4WD化するデュアルポンプシステムを採用した「リアルタイム4WD」を搭載していました。
なお、日本では2005年に販売が終了し、わずか2年ほどしか販売されませんでした。
■コンパクトカーにこそ最適な観音開きドア
●ミニ「クラブマン」(R55)
日本で人気の輸入コンパクトカーで代表格とも言えるのが「MINI」ブランド。
イギリスのローバー社が開発した「ミニ」をコンセプトに、BMWが手がける現代版として蘇ったのは2001年のことです。
テールゲートが観音開きのミニ「クラブマン」
3ドアハッチバックを基本にさまざまなボディバリエーションを展開していくのも、ミニならではの特徴です。
2006年のフルモデルチェンジで徐々にプレミアム化を目指していたミニですが、当時人気だったステーションワゴンの使い勝手をプラスさせたボディバリエーションとして登場したのが「クラブマン」です。
面白いのは、基本的な3ドアでありながら、狩猟用に荷室を延長させた「シューティングブレーク」というクーペワゴンのようなスタイルを継承するとともに、テールゲートを跳ね上げ式ではなく、左右分割の観音開きとしていることです。
広いラゲッジスペース実現のために全長が240mm延長されましたが、それでも全長3937mm×全幅1683mm×全高1426mmというコンパクトさを実現。後席の足元も80mmの余裕が生まれています。
エンジンは、120馬力の1.6リッター直列4気筒エンジンと高性能版の「クーパーSクラブマン」には175馬力の同ターボエンジンを搭載。
駆動方式はFFのみですが、ATだけでなく6速MTも用意されています。
クラブマンはテールゲートに観音開きドアを採用。高さを気にしないでラゲッジへのアクセスが可能になるなど日常での使い勝手も優秀です。
1人で乗っても家族で乗ってもさまになる、ファッション上級者のようなミニといえます。
●フィアット「500 3+1」
かつては走行中に進行方向とは逆にドアが開いてしまうことから「スーサイドドア(自殺用ドア)」の異名まで与えられた観音開きドアですが、技術が進歩した現代でも個性を演出する手法として採用されるケースがあります。
2020年にフィアット「500」のフルモデルチェンジが発表されましたが、新型モデルでは完全なEVに進化することになりました。
そして、個性的な500をさらに個性的にする手法として、3ドアに1枚ドアをプラスする「3+1」というボディタイプを発表。
新型500は、3ドア、カブリオに加え、「3+1」という3種類のバリエーションを用意。2021年にデビューする予定です。
ボディサイズは全長3630mm×全幅1690mm×全高1530mmで、現行型と比較して前後左右に60mmずつ、上方向に40mm大きくなりますが、ボディサイズを守ったままで「3+1」を実現させています。
注目度が高い「3+1」ですが、1957年に登場した2代目500で採用されていたスーサイドドアをモチーフに、片側のみに小型の観音開きドアを搭載することで、全体のシルエットを維持。
重量増もわずか30kgに抑えつつ、ピラーレスの大きな開口部を実現させました。
パワーユニットは、118馬力を発揮する電気モーターと42kWhのリチウムイオンバッテリーの組み合わせで、航続可能距離を320km(WLPT値)となります。
ドライブモードは、「ノーマル」、回生ブレーキの効きを最大化させる「レンジ」、次の充電ポイントまでたどり着けるように走行以外の装備の電力を減らす省エネ走行の「シェルパ」という3種類を標準搭載。
さらに急速充電器にも対応し、80%の充電までの所要時間を35分に、走行距離50km分の電力はわずか5分で充電できるようになっています。
※ ※ ※
観音開きドアは、強度の問題や走行中にドアが開かないような対策が施されていれば、見た目のインパクト以上に、実用性に寄与する装備であるともいえます。
高齢化社会においては、クルマの乗降性も大切なポイントになってきます。今後は、さまざまなモデルに観音開きドアが採用されることになるかもしれません。
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