BMW「M5」が275万円! 同じエンジンを搭載した「Z8」の落札価格は?
くるまのニュース / 2020年12月14日 19時10分
小排気量ターボが当たり前の時代になってしまったが、いまから20年ほど前までは、自然吸気大排気量エンジンも隆盛を誇っていた。F1のレギュレーションが自然吸気エンジンだった時代だ。この時期に、BMWでは名機と呼ばれるV8自然吸気エンジン、「S63B50」を搭載したモデルがあった。この名機を搭載した2台のアイコニックなBMWを紹介しよう。
■大排気量でも自然吸気でブンブン回していた時代
燃焼効率の高さを求めた小排気量ターボエンジンが主流となりつつあるいま、大排気量NA(自然吸気)エンジンの愉しさを実感した経験を持つ人も減ってきている。
というよりも、クルマを運転することに愉しさを求めるというのが、すでに古い考え方なのかもしれない。
しかし、である。運転しているクルマがよくできたものなら、たとえ渋滞中や、街中をゆっくり走っているときであっても、運転そのものに愉しさを覚えるはずである。
その愉しさの大きなポイントのひとつは、エンジンにあるだろう。エンジンの回転数によって変化するサウンドやパワーデリバリー。モーターでは得られない個性を感じられるエンジンの魅力は、わかる人にはわかるはずだ。
電子制御されてはいても、燃焼によって膨張したガスの力を利用するという、いわば原始的な部分が人の野生を呼び起こすのかもしれない。
●2002 BMW「Z8」
エンジンを製造するカーメーカーのなかで、昔から高評価を得ているのがBMWだ。
第一次世界大戦当時から航空機用エンジンを製造していたBMWは、その後オートバイの分野に進出。第二次世界大戦後には自動車の分野に進出し、数々の名機といわれるエンジンを開発し、モータースポーツの世界でも数多くの勝利を手にしてきた。
そんなBMWが、2000年前後にMモデルに搭載していたのが、5リッターV型8気筒自然吸気──S63B50型エンジンである。
94.0mm×89.0mmというショートストロークのこのエンジンは、最高出力400psを6600rpmで、最大トルク500Nmを3800rpmで発生する。
このスペックを現代のエンジンと比較してみてほしい。ピストンやクランクがはるかに軽い2リッター程度のエンジンですら、最高出力を発生するのはせいぜい7000rpm程度だ。ひと昔前なら、9000rpmまで回るエンジンも存在したが、いまは6000rpmを超えると高回転といわれる時代である。
V型8気筒のS63B50型エンジンが、いかに高回転型ユニットであったかがわかるだろう。
■「Z8」と「M5」、気になる落札価格は?
S63B50型エンジンは、5リッターであるにも関わらず、7000rpmまで軽々と回る。その強烈なトルクとパワー、そして高回転時のサウンドは、一度体感すると忘れられない気持ちよさがあった。
機会があればぜひ、このエンジンを搭載したE39型「M5」、もしくは「Z8」に乗ってみてほしい。きっとアナログの良さを再発見できることだろう。
●2000 BMW「M5」
ストレートシックスではなく、V型8気筒エンジンを搭載したことで、デビュー当時話題になったBMW「M5」(E39型)(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
今回、RMサザビーズのオークションに、S63B50型エンジンを搭載したE39 M5とZ8が出品された。
M5は、2000年式でサンルーフ付き。HIDヘッドライトも装備された個体で、走行距離は6万7000マイル(約10万7000km)である。
予想落札価格の2万5000ドルー3万5000ドルに対して、落札価格は2万6400ドル(邦貨換算約275万円)であった。
内装のウッドトリムはきれいだが、レザーシートには若干のヘタリがあり、実用でついたと思しき外装の細かい傷も多数見受けられた。コンクールコンディションを求めている人からは見向きもされないだろうが、エンジンのフィーリングや走りの愉しさを味わいたい人にとっては、お買い得といえるものだろう。
もう1台のZ8は、2002年式。このクルマは当時のBMWのフラッグシップともいえるコンバーチブルカーで、製造された台数は5700台ほどであった。しかもこの個体は、内外装ともに美しく、走行距離は2万3600マイル(約3万7800km)と少ない。
こうしたZ8の予想落札価格は15万ドルー17万5000ドル(邦貨換算約1560万円ー1820万円)であった。新車価格は、日本では1600万円強、アメリカでは約13万ドルだったことを考えると、すでにプレミアが付きはじめていると考えていいだろう。
残念ながら今回のオークションでは流札となってしまったが、この先、投資目的での購入者が増えていくことも予想される1台となるだろう。
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