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5ナンバー車はないがしろ? デカくなる新型モデル! 小型と軽規格が邪魔をする日本市場の行方

くるまのニュース / 2020年12月16日 7時10分

日本独自の規格である「5ナンバー車」。かつては税制優遇などの恩恵も少なくありませんでしたが、グローバル化の昨今ではその存在意義自体が見直されています。なぜ近年では5ナンバー車の存在意義が薄れているのでしょうか。

■消えゆく5ナンバー車

 昨今の日本市場では、「5ナンバー車(小型自動車)」の存在意義が薄れているといいます。
  
 かつては税制優遇などの恩恵も少なくありませんでしたが、グローバル化している自動車市場とくに日本では、軽自動車や小型自動車の規格が転換期を迎えようとしています。

 現在の道路運送車両法では、普通自動車、小型自動車、軽自動車、大型特殊自動車および小型特殊自動車に分類されます。

 乗用車の場合、普通自動車は「3ナンバー車」、小型自動車は「5ナンバー車」とも呼ばれ、軽自動車も含めて、それぞれ税制面や有料道路の通行料などで差が出ることがあります。

 普通自動車および小型自動車、そして軽自動車は、基本的には車体寸法と排気量(電気自動車の場合は定格出力)によって規定されています。

 一般的な軽自動車のエンジンが660ccであることはよく知られていますが、これは660ccが軽自動車として認められている排気量の上限だからです。

 一方、普通自動車と小型自動車の違いを明確に説明できるユーザーはかつてほど多くないといわれています。

 小型自動車は「排気量2000cc以下、全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下」であり、それらのうちひとつでも超えると普通自動車として扱われます。

 小型自動車の代表格としては、トヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」、日産「ノート」といったコンパクトカー、トヨタ「シエンタ」「ノア/ヴォクシー」やホンダ「フリード」「ステップワゴン」、日産「セレナ」といったミニバンが挙げられます。
 
 しかし、軽自動車に比べて、小型自動車、いわゆる「5ナンバー車」は近年影を潜めています。

 かつては、前述した売れ筋モデル以外でも、多くの小型自動車がラインナップされていました。

 しかし小型セダンでは、トヨタ「アリオン」や「プレミオ」の生産終了がアナウンスされ、日産「シルフィ」も生産終了していることが明らかになりました。ホンダ「グレイス」も同様です。

 また、前述のミニバンでもグレードによってはエアロパーツなどで全幅が拡大し、3ナンバー車扱いになる例もあります。

 さらに、ヤリスは小型自動車ですが、ヤリスをベースにしたヤリスクロスは全幅が拡大されているため普通自動車扱い、さらにフィットはクロスターというグレードのみ普通自動車扱いと異なるのです。

 このように、メーカーもまたかつてほど「5ナンバー車」を死守しようという姿勢ではないようです。

■もはや「5ナンバー車」にメリットがない?

 では、なぜ小型自動車(5ナンバー車)は影を潜めてしまっているのでしょうか。

 それは端的にいって、小型自動車であるメリットが薄れてしまっているからです。

 そもそも、小型自動車という概念自体は古く、戦前にはいまのような区分制度が見られます。

 その後改正を経て、1960年に現在と同様の小型自動車規格が制定されますが、当時はクルマそのものが贅沢品であり、ごく一部の富裕層のためのものでした。

 富裕層から税金をとるのが世の常であったため、クルマもその標的となりましたが、一方でモータリゼーションも進んでいたため、小型自動車という規格を制定し、より贅沢品である普通自動車にはより多くの税金を課すという制度となったのです。

 現在でも、一部地域で「3ナンバー」のタクシーがより上級なものとして扱われたり、駐車場で「3ナンバーお断り」という例が見られるのは、そうした時代の名残といえます。

 しかし、バブルの頃になると、クルマそのものは決して贅沢品とはいえなくなるほど一般に浸透しました。

 そうした流れを受けて、1989年には税制を改定。排気量や重量が同等であれば、小型自動車と普通自動車の税金面での差がほとんどなくなりました。

 税制面の優遇が事実上ほとんどなくなったことで、小型自動車のメリットは「車体が小さいこと」とそれにともなう「車体価格の安さ」という2点に集約されるようになりました。

 しかし、いずれも軽自動車にも見られる特徴であり、軽自動車のほうが明確に税制が安いことから、小型自動車を選択するメリットは薄れつつあります。

グローバル化により、これまでの5ナンバー車から3ナンバー車になったトヨタ「カローラシリーズ」グローバル化により、これまでの5ナンバー車から3ナンバー車になったトヨタ「カローラシリーズ」

 また、昨今の自動車業界事情も小型自動車には逆風です。ある業界関係者は次のように分析します。

「ここ10年ほど、自動車業界のトレンドは『プラットフォームの共有化』となっています。

 少数のプラットフォームをベースに複数のモデルを開発することで、各市場のニーズに応えながらも生産効率を上げることができるため、コストメリットを得ることができます。

 しかし、『小型自動車』というのはあくまで日本独自の規格であり、専用のプラットフォームを作るほどのボリュームはありません。

 グローバルで売れる『3ナンバーサイズ』のモデルを日本に導入するほうが合理的です。

 また、日本市場専用モデルを開発するのであれば、軽自動車のほうが販売台数を計算できるというメリットがあります。

 この20年、クルマは大きく変化しました。多くの安全運転支援技術が搭載され、ディスプレイオーディオのような最新装備も増えました。

 それにともない、新車価格も上昇しています。こうした価格上昇を最小限にするためには、プラットフォームの共有化によるコストダウンは必須です。

 一方、小型自動車のような日本独自の規格は、そうした戦略の恩恵を受けることができません。

 このように考えると、小型自動車は今後消えてゆく運命であることは間違いないでしょう。

 例外的に残るのは、ごく一部の売れ筋モデルと、海外市場でも販売できるコンパクトカー、すなわち『結果的に5ナンバーサイズ』のモデルに限定されると思われます」

※ ※ ※

 かつては明確なメリットのあった小型自動車ですが、現在では事実上その役目を終えたといえます。

 市場特有の法規制が強すぎると、「ガラパゴス化」してしまうこともありますが、小型自動車に関してはユーザーに対しても明確なメリットが薄れていることから、近い将来、この分類自体が変化するかもしれません。

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