市販タイヤとはどう違う!? 独自の承認マークが入る「純正タイヤ」が優れている理由とは
くるまのニュース / 2021年1月2日 11時30分
輸入車に純正装着されているタイヤのサイドウオールを見ると、BMWやMINIには「★(スター)」マーク、ポルシェには「N0」「N1」などNマーク、メルセデス・ベンツには「MO」「MOE」などと独自の記号やマークがついている。これらはメーカー承認タイヤを表すものだが、タイヤ専門店などで売られているタイヤとはなにが違うのか。
■新車の開発と並行して開発するのがメーカー承認タイヤ
タイヤには、クルマの重量を「支え」、エンジン出力やブレーキなど駆動力・制動力を路面に「伝え」、路面からの衝撃を「やわらげ」、方向を「転換する」という重要な役割を持つ。これらはタイヤの4大機能と呼ばれるもので、クルマのスポーツ性やコンフォート性能にも大きく関わってくる大切なパーツだ。
だからこそ、自動車メーカーはタイヤメーカーと共同で新車開発をおこなっている。そうして登場した新車には、自動車メーカーが承認した、いわば新車装着タイヤ(純正タイヤ)が装着されている。これは一般的に「OEMタイヤ」「OEタイヤ」などと呼ばれる。
それに対して、タイヤショップやカー用品店で販売されているタイヤは「REタイヤ」「リプレイスタイヤ」と呼ばれることが多い。
自動車メーカー承認タイヤには、独自のマークが付いていることがある。とくに輸入車の場合、承認マークが付いていることが多い。
タイヤのサイドウオールをよく見てみると、ポルシェの新車装着タイヤには「N0」「N1」「N2」「N3」などのNマーク、BMWやMINIは「★(スターマーク)」、メルセデス・ベンツは「MO」(メルセデス・オリジナル)など、アウディは「AO」(アウディ・オリジナル)や「RO」、ボルボは「VOL」、フェラーリは「F」などが刻まれている。またルノーはルノー・スポールモデルのみ「R.S.」マークが入っている。
これは、新車装着されたタイヤのメーカーがミシュランでもグッドイヤーでも、ブリヂストンでもBMW車ならば「★」、メルセデス・ベンツ車ならば「MO」と同じ承認マークが入る。
ただし、輸入車の新車装着タイヤには必ずこの承認マークが入っているというわけではない。たとえばフォルクスワーゲンの新車装着タイヤには、このマークが入っていない。
タイヤは走行距離に応じて摩耗していくもの。それではタイヤを交換する際、新車で装着されていたのと同じタイヤを選んだほうが良いのか、それとも市販のタイヤのほうが良いのか。そして両者にはどのような違いがあるのだろうか? タイヤメーカーのブリヂストンに話を聞いた。
「新車に純正装着されているタイヤは、『そのクルマの特性に合ったタイヤ』になっています。自動車メーカーが新型車を開発するにあたり、その車両の特性、キャラクターに合わせたタイヤをメーカーからの要請を受けて開発・提供しています。
多くの場合、車種ごとに少しずつ違った仕様のタイヤになっています。たとえば同じサイズで同じブランドのタイヤでも、他の車種に装着するとフィーリングが変わってしまうこともあります」とのことだ。
ブリヂストンの広報担当は続ける。「市販タイヤの場合は、いろいろな車種に装着されることが前提ですので、どのクルマに装着してもマッチングが取れるような仕様にしています。そのなかでお客さまのカーライフに合わせたタイヤを選んでいただきたいと考え、さまざまなタイヤをラインナップしています。
たとえばスポーティなドライビングを楽しみたい方には、グリップ性能やハンドル操作のレスポンスに長けたPOTENZA(ポテンザ)を、また快適な車内空間を求められる方にはREGNO(レグノ)を用意し、走行時の静かさや乗り心地を提供しています」とコメントした。
■タイヤ交換をする際は自分の求める性能をよく考えて選びたい
他のタイヤメーカーにも同じ質問を聞いた。
「基本的には、市販タイヤというのは純正タイヤが摩耗し、交換用タイヤとしてご使用いただくタイヤです。愛車の性能や乗り味、そして使用用途に応じて、お客様の好みやサイズを含め、幅広く選んでいただけるラインナップが特徴です。
一方、純正タイヤは新車購入時に自動車メーカーが標準装備しているタイヤで、1車種あたり複数のタイヤメーカーが採用されていたりします」(日本ミシュランタイヤ 広報担当)
BMWのモデルに新車装着されたタイヤには「★(スター)」マークが入っている。MINIも同様だ
「純正タイヤは、自動車メーカーの要求性能に応え、そのクルマとベストマッチするように専用設計されたタイヤです。多くの純正タイヤはクルマ開発の一環として(新車開発と同時に)テストされており、その目標性能は自動車メーカーが設定しています。
そして市販タイヤは、商品ブランドごとに静粛性重視やスポーツ走行重視など、それぞれ特徴を持っています。弊社が設定する性能目標にのっとり、幅広いカテゴリーの車両に装着できるように設計されています」(横浜ゴム 広報担当)
純正タイヤは、その車両の性能を発揮できるように作られていて、市販タイヤは幅広い車種に合うように設計・開発。ブランドによっては、特徴を持たせた作りになっているようだ。
では、愛車のタイヤを交換したい場合、純正タイヤが良いのか、あるいは市販されているタイヤのほうが良いのだろうか。
ブリヂストンの広報担当は「2015年から『ちゃんと買い』というプロモーションをおこなっています。自分の愛車に装着していたタイヤよりも性能の低いタイヤを選ぶと、クルマ本来の性能が発揮できなくなるので、純正タイヤを基準にタイヤを選んでいただきたい、というものです。
具体的には、いまよりももっと乗り心地を良くしたい、雨の日でも安心して走りたい、そして燃費を良くしたいなどに合わせ、商品を選択していただけるものです。交換時にしっかりと自分の目的に合ったタイヤを選んでもらえることが重要です。もし、いまお使いのタイヤに少しでもご不満があるようでしたら、販売店でご相談いただけたらと思います」とコメントした。
これまで装着していた純正タイヤが良ければ、新車を購入したカーディーラーにて純正タイヤに交換することも可能だ。
横浜ゴムの広報担当は「いままで履いていた純正装着タイヤに満足されているようでしたら純正タイヤを、お客様の重視する性能やお好みがある場合は、その特徴をもった市販用タイヤをお勧めします」とコメントする。
* * *
余談だが、純正タイヤには、市販用タイヤには付いているタイヤのラベリングが表示されていない。
タイヤのラベリングとは「AA-b」「A-c」などと表記され、転がり抵抗性能とウエット性能を等級で表したものだ。
じつはこのタイヤ・ラベリング制度の対象は「消費者が交換用としてタイヤ販売店などで購入する乗用車用夏用タイヤ」となり、店頭でタイヤを購入する人が、その性能をひと目でわかるようにするための表示なのだ。
だから市販用タイヤでは表示されているが、純正タイヤにはついていない。同様に、夏用タイヤではないスタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤ、乗用車用タイヤではないSUV用タイヤにもこうしたラベリングは表示されない。
純正タイヤにラベリングが表示されていないからといって、そのタイヤの転がり抵抗が悪いわけでもなく、ウエットグリップ性能が低いということもないので心配は無用だ。
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