バブル期5000万円もザラだった!! 「テスタロッサ」のバリものが1800万円で落札!
くるまのニュース / 2020年12月23日 19時10分
バブル時代のフェラーリを象徴していた「テスタロッサ」は、コロナ禍において価格が落ち着いてきているようだ。そこで、テスタロッサとそのビッグマイナーチェンジモデルともいえる「512TR」のどちらが買い得感があるのか、最新オークションで検証してみよう。
■バブル時代に憧れの象徴だった「テスタロッサ」
COVID-19こと新型コロナウイルスによる惨禍が世界を覆うなか、2010年代中盤から驚くべき価格高騰劇を見せていたフェラーリのマーケット評価にも、大きな地殻変動があったようだ。
とくに近現代の量産モデルについては、一時期と比べて明らかな市況の落ち込みが見られることが、2020年に開催されたオークションの結果からも明らかになってきている。その厳しい情勢は、自動車界のスーパースターとしてバブル時代に君臨した「テスタロッサ」とそのファミリーについても変わらないのだろうか?
今回はRMサザビーズ社が2020年10月ー11月に英国とアメリカで相次いでオンライン開催した「LONDON」オークション、および「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品された1990年型テスタロッサ、そして1992年型「512TR」の2台を「レビュー」の俎上に載せて、現在の国際マーケット市況を探ってみることにしたい。
●1990 フェラーリ「テスタロッサ」
バブル期の象徴であったフェラーリ「テスタロッサ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
まずは、2020年11月11日から20日までRMサザビーズ北米本社が開催した「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品されたフェラーリ・テスタロッサを紹介しよう。
テスタロッサは「512BBi」の後継モデルとして1984年パリ・サロンに登場したフェラーリの12気筒ベルリネッタである。
1973年のデビューから連綿と進化を図ってきたBB系ユニットを4バルブ化し、390psまでスープアップしたボクサー12気筒5リッターのエンジンを、同じくBB系からホイールベースを50mm延長した鋼管スペースフレームに搭載。290km/hの最高速度を標榜した。
一方、新時代のフェラーリを宣言するごとき意欲的なボディは、もちろんピニンファリーナが架装。デザインワークは同社に所属していたスタイリスト、エマヌエーレ・ニコジアが中心になって手掛けたとされる。
そして、今や伝説として語られる北米のTVドラマ「マイアミバイス」でも、主人公ソニー・クロケット刑事の愛車として大活躍するなど、1980年代カルチャーを象徴するスーパーカーとして世界中のファンを魅了することになったのだ。
今回の出品車両は、モデル終盤にあたる1990年型。フェラーリの象徴である「ロッソ・コルサ」のエクステリアに、ベージュ/ブラウンのレザーインテリアの組み合わせで、走行距離は4800マイル(約7700km)にも満たない。
気になるコンディションもこの走行距離に見合ったもので、オリジナルのペイントとインテリアを保持しながらも、極めて美しい状態を保っている。
また、アフターマーケットのフロアマットがかなり非常に早い時期から重ねておかれていたことから、結果として本来の純正カーペットも新品同様。タイヤもオリジナルといわれており、本格的な運転をする前に新鮮なセットをお勧めせねばならないものの、このテスタロッサがあたかもタイムカプセルであるかのような夢を与えてくれよう。
ところでこの個体は、新車としてのデリバリーから現代に至るまで2オーナーのみ。今回のオークション出品車である現オーナーは2人目の所有者で、1991年以来所蔵を続けているとのことだ。
2019年には、北米の著名なフェラーリ・スペシャリスト「パトリック・オッティス・カンパニー」に所属するジョン・ハイム氏に委託して、2万ドル以上の費用を投じたリフレッシュを敢行しているという。
例えば、ベルト駆動のエンジンでは必須となるタイミングベルトの交換に加えて、燃料噴射システムを洗浄して調整。ブレーキの消耗品や冷却ホース、バッテリーなども交換した。また、テスタロッサの弱点とされる空調システムもオーバーホールするとともに、冷媒はR134クーラントに変換済みとのことである。
この出品に際しては、スケドーニ社製の革ポーチに収められたツールキットやけん引ジャック。およびサービス履歴を記した請求書やオーナーズマニュアルなどのドキュメントも完備。この象徴的なモデルが、新車として登場した際に及ぼしたインパクトを思い起こさせる1台といえるだろう。
テスタロッサの生産台数は、7177台と超高額のスーパーカーとしてはかなり多く、クラシックカー・マーケットにてこの種のクルマに求められる希少価値という点では、いささか分が悪いことは事実。それでも数年前のフェラーリ暴騰の際には、カリスマゆえに2000万円越えの取引が頻発していたようだが、今回のオークションでは17万500ドル、日本円にして1760万円で落札されることになった。
このプライスは、ひと頃よりは落ちついたともいえるが、依然としてかなりの高評価という見方もあるに違いあるまい。
■打倒「ディアブロ」だった「512TR」とは?
1992年1月。日本を含む主要マーケット各国で同時リリースとなったフェラーリ512TRは、1980年代の傑作スーパースポーツ「テスタロッサ」を1990年代の最新テクノロジーでリファインし、ランボルギーニ「ディアブロ」など後発のライバルに負けないスーパースポーツの雄へと、再び押し上げるために用意されたモデルである。
●1992 フェラーリ「512TR」
1990年代のテクノロジーで「テスタロッサ」をリファインした「512TR」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
一見したところ、テスタロッサのボディ内外装にフェイスリフトを加え、パワーを上乗せしただけのマイナーチェンジ版にも映るが、その実はシャシから大規模な変更を受けていた。
それまでエンジンを支えていたサブフレームは、剛性アップと軽量化のためにメインのチューブラーフレームと一体化。エンジンの搭載位置も、わずか数cmながら低められた。
また、前後ホイールは18インチに拡大されると同時に、テスタロッサではやや不安のあったストッピングパワーについても、大径化されたベンチレーテッド・ディスクブレーキによって概ね満足すべきものとなったのだ。
加えて、カロッツェリア・ピニンファリーナが手掛けたボディのスキンチェンジもかなり大規模なもので、前後のバンパーはより丸みを帯びた形状へとブラッシュアップ。テスタロッサ時代には複数のパーツで組み立てられていたリアのエンジンフードも一体プレスとされた上に、左右フィンがテールエンドまで伸びるスタイルとなった。
またインテリアも大幅にモダナイズされる傍らで、ダッシュパネルとセンターコンソールは、1970年代のフェラーリのようにセパレート化が図られた。
一方、テスタロッサで初めて気筒当たり4バルブとされた4943cc180度V型12気筒4カムシャフトエンジンは、ムービングパーツの軽量化とともに、シリンダーとライナーもニカシルコーティングも最新化された。
燃料供給もテスタロッサ時代のボッシュKEジェトロニックからモトロニックML2.7に変更。さらに吸/排気系に大規模なモディファイを受けることになった結果、パワーは400psの大台を遥かに越えた428ps。当時5ps刻みでのパワー表示が慣例とされていた日本仕様では、中身は同じながら「425ps」へとアップを果たした。
そしてかつての365/512BB以来、久しぶりに300km/hの大台に達する最高速を公表することになったのである。
さて、このほどRMサザビーズ「LONDON」オークションに出品されたのは、1992年から1994年の間に2280台が生産されたうちの1台。ボディはおなじみのロッソ・コルサで、タン(当時のフェラーリではBeige)のインテリアを組み合わせている。
1992年10月にマラネッロ工場からライン・オフし、1993年1月18日にスイスにデリバリーされ、その後まもなくスイス国内登録がおこなわれたという記録が残されている。
2015年にスイス国内で現在のオーナーに譲られたのち、スイスおよびモナコのフェラーリ・スペシャリストによって、定期的に必要なメンテナンスサービスを受けているとのことで、オドメーターに約4万1500kmを示す現在となってもコンディションは極上。もちろん、パワートレインは本来のマッチングナンバーを維持している。
今回のオークション出品にあたっては、オリジナルのマニュアルや資料、ツールキット、サービスドキュメントなども添付されており、美しいコンディションも相まって、現状のマーケットにおけるハイエンドに近い512TRといえるだろう。
オンライン限定でおこなわれた競売では9万3500ポンド、日本円に換算すれば約1300万円で落札されることになった。つまり今回紹介するテスタロッサとの間には約460万円の価格差が生じたのだが、この評価には走行距離やコンディション以上の要素が作用しているかに感じられる。
テスタロッサと見比べると、512TRはパフォーマンスやクオリティについて大幅なブラッシュアップが図られている一方で、例えばエンジンフードの造形やインテリアなどには、明らかなコストダウンの痕跡が見受けられるのは否めない。
なにより「かつて憧れていた」というノスタルジーを含む、コレクターズアイテムとしての資質。そして「時代のアイコン」感という点において、テスタロッサには及ばないことも、512TRとの価格差に反映しているかに感じられるのだ。
とはいえ、これくらいのグッドコンディションの512TRが「1300万円コース」に戻ってくるという相場感が、全世界のスタンダードとなることを歓迎するファンは決して少なくないというのも、間違いのない事実であろう。
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