軽も2030年半ばに電動化 EV重視で軽自動車規格の撤廃もあり得るのか
くるまのニュース / 2020年12月24日 7時10分
政府は、2030年代半ばの通称「脱純ガソリン車」の方針に関して、軽自動車も含めた検討をしていることが明らかになりました。国内市場では、約4割を軽自動車が占めていますが、今後の検討内容次第では軽自動車規格の撤廃もしくは変更の可能性も考えられます。そうなると、軽自動車税などの税制などにはどのような影響があるのでしょうか。
■日本市場にマッチした軽自動車が電動化で価格上昇の危機
2020年12月22日、新聞や通信社が同年11月に政府が明らかにした「2030年代半ばまでに純ガソリン車の新車販売をやめ電動車にする目標」に関して、新たに軽自動車も対象に含めることを検討していると報道しました。
これにより、現在の国内新車市場で約4割のシェアを誇り、地方部では無くてはならない移動手段のひとつとされる軽自動車の価格上昇が確実視されています。では、実際のユーザーは軽自動車の電動化に関してどのような反響を示しているのでしょうか。
11月の政府の方針のほか、東京都の小池都知事も「乗用車は2030年、二輪車は2035年までに純粋なガソリン車の新車販売をやめ、電動車に以降する」方針を固めていました。
この政府と東京都の方針表明は自動車業界のみならず、クルマを日常的に使用するユーザーにも大きな反響を呼んだのです。
この報道時には、軽自動車に関してアナウンスされておらず、自動車業界関係者は乗用車のなかに含まれると考えていましたが、今回の報道によりそれが確実視されました。
また、今回の報道では、軽自動車が電動化することで開発コスト増が予想されることから、小型の蓄電池に対する開発補助や国内生産の支援も同時に検討されるとし、今後は軽自動車価格の上昇がどこまで抑えられるかが注目されています。
国内市場において、軽自動車はここ20年ほどで性能・安全面が大幅に向上している一方で、価格もそれに合わせて上昇してきました。
かつては100万円を下回るものも存在していましたが、最近では150万円から200万円前後というモデルが主流です。
そうしたなかで、軽自動車が電動化することで、エントリーモデルが200万円を超えることが予想されます。
軽自動車の価格例として、日本で1番売れているホンダ「N-BOX」は、初代モデルが2011年11月に登場。その後、2代目モデルは2017年9月に登場して現在に至っています。
価格面において一概に比較は出来ないものの、初代モデルは発売当初(当時の消費税込み)124万円から146万円、N-BOXカスタムは144万円から178万円(ターボ仕様)となっていました。
その後、2代目モデルからホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」が全車に採用されるなど性能・機能が向上し、2020年現在の価格(消費税10%込)では、N-BOXが141万1300円から192万6100円、N-BOXカスタムは174万6800円から212万9600円と価格面だけでの比較では上昇しています。
また、スズキの軽自動車「スペーシア」はマイルドハイブリッドといわれる簡易的にモーターで発進や加速をアシストする機能が搭載されており、初代モデル(2013年)から2代目モデル(2017年)に掛けて、マイルドハイブリッドシステムが進化したことも含めて、エントリーモデルの価格が10万円から15万円ほど価格が上昇しました。
こうした軽自動車の状況において、今回の電動車にどこまで含まれるかで多く価格は変わってきます。
現在、電動車としては電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、そしてハイブリッド車(HV)が含まれているのが定説ですが、このハイブリッド車に前述のマイルドハイブリッド車が不透明です。
メーカー毎に仕様や定義により異なるものの、基本的にエンジンを使わずEV走行が可能なものをハイブリッド車、エンジンをアシストするのがマイルドハイブリッド車といわれています。
仮にEV走行が可能なハイブリッド車のみを電動車として定義した場合には、軽自動車価格は大幅に上昇することは避けられません。
代表例として、国産車においてガソリン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車を設定しているモデルとしてトヨタ「RAV4」が存在します。
それぞれのエントリーモデル価格は、ガソリン車(Xグレード)が274万3000円、ハイブリッド車(HYBRID Xグレード)が334万3000円、プラグインハイブリッド車(Gグレード)が469万円です。
実際には、それぞれの排気量や駆動方式が異なりますが、価格面だけで見るとガソリン車とハイブリッド車で約60万円、そのハイブリッド車をベースとしたプラグインハイブリッド車で約135万円の価格差が存在します。
また、電気自動車においては日産「リーフ」(40kWh仕様)のエントリー価格が332万6400円です。
なお、SUVタイプの電気自動車「アリア」は2021年中頃に登場する予定となり、日産はエントリーモデルと見られる65kWh/2WDについて、「お客さまの実質購入価格は約500万円からとなる見込みです」と説明しています。
さらに、軽自動車に近いボディサイズでいえば、ホンダの小型電気自動車「ホンダe」(35.5kWh)は451万円と、単純な比較は出来ないものの現時点で軽自動車をEV走行が可能な電動車に置き換える場合には、エントリーモデルの価格は約300万円近くになります。
こうした軽自動車の価格について、ホンダの販売店スタッフは次のように話します。
「クルマ全般にいえることですが、新しい技術や機能が追加されるごとにその分の価格上昇は否めません。
なかでも、軽自動車は価格が安いというイメージがあるため、改良やマイナーチェンジで価格が上がると違和感を持つお客さまも少なくありません。
しかし、最近の軽自動車はコンパクトカー(5ナンバー車)並の性能・機能なこともあり、乗り出し価格で考えると250万円前後になることも珍しくないです。
また、2030年頃には電動車は必須になるでしょうし、その頃には乗り出し価格が300万円以上が普通になるのであれば、恐らくそこまでお客さまからマイナスの反応はないかと思います」
※ ※ ※
2019年で軽自動車規格が制定されてから70年を迎え、今やコンパクトカー並みの性能を実現している軽自動車ですが、2030年には80年を超えます。
その頃には、技術の進化によりモーターやバッテリーなど電動化に関する技術の開発コストが抑えられ、現在の標準化した安全装備のように電動車が標準となれば、「脱純ガソリン車」も騒ぎ立てることもないのかもしれません。
■本当の問題は、電動化ではなく軽自動車規格にある?
軽自動車規格は、その時代に合わせて変更されています。現在の軽自動車の定義は、ボディサイズが全長3400mm×全幅1480mm×全高2000mm以内、エンジン排気量は660cc以内(最高出力は自主規制で64馬力まで)、最大4名乗車で貨物積載量350kg以下となります。
ここで今後の課題となるのが、現在の軽自動車規格内でバッテリーを搭載することによる、デメリットです。
軽自動車はその規格を最大限に活かした室内空間が魅力となり、昨今では全長1700mm以上かつ後席スライドドアを採用する前述のN-BOXやスペーシアが人気です。
しかし、今後バッテリーの小型化を進めていくとはしているものの、EV走行可能な電動車として製品化するにはそれ相応のバッテリースペースが必要といえます。
また、重量増による軽自動車としての耐久性など軽自動車規格の根本的な見直しがおこなわれる可能性もあり得ます。
そうなると、軽自動車税や自動車税にも影響が出ると考えられます。現在の自動車税は、軽自動車[四輪以上](自家用車)で1万800円です。
なお、自動車税は排気量で決まり、「1リッター以下」が2万5000円、「1リッターから1.5リッター以下」が3万500円、「1.5リッターから2リッター以下」が3万600円といったように、排気量が大きくなると自動車税も高くなります。
また、軽自動車(乗用車)の上の区分では、5ナンバー車(小型自動車)というものがあり、これは「排気量2000cc以下、全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下」と定められていますが、軽自動車規格が変更されると、そのほかの規格や税にも問題が発展する可能性があります。
実際に、ソニー損保が2018年に調査した「2018年 全国カーライフ実態調査」において、ドライバーが負担に感じるものとして「自動車税」がもっとも高い結果となっています。
軽自動車は、普通車(5ナンバー車や3ナンバー車)と比べて、車両価格や税などの維持費が安価に抑えられることが最大のメリットでしたが、前述の電動化による開発コストや、税制面での優遇差がなくなると軽自動車市場に大きな変革が起こり得ます。
日産の5ナンバー車となる新型「ノート」はフルモデルチェンジで、全車ハイブリッド(e-POWER)となったものの、約202万円を実現。
一方で、5ナンバー車に分類される日産の新型「ノート」はフルモデルチェンジでガソリン車を廃止。ハイブリッド車(e-POWER)のみとなり、エントリーモデルとなる「S」が202万9500円となるほか、最新の性能や機能を搭載しています。
今後、これまでの軽自動車に対するイメージと、5ナンバー車でどのように国内市場のバランスを取っていくのかにも注目されます。
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