相次ぐ廃止も!? なぜセダンは人気低迷?「セダンを選ぶ理由が…」若者の本音とは
くるまのニュース / 2021年1月10日 9時30分
かつてセダンは、クルマの基本形としてさまざまなモデルがラインナップされていましたが、現在では車種が減少。販売も低迷しているといわざるを得ません。高齢者には根強い人気があるセダンですが、若者にとってはどうなのでしょうか。
■セダンの悩みはユーザー層の高年齢化
2020年11月に中日新聞が報じた「次期型クラウンでは、セダン廃止し、クロスオーバー化を検討」というニュースに、日本中のクルマ好きに激震が走りました。
その後、「セダンプラスという新しいジャンルになる」といった噂が立ちましたが、トヨタからアナウンスはなく、クラウンの動向が注目されています。
トヨタ「クラウン」といえば、1955年に初代が発売された日本を代表する高級セダン。2018年に登場した現行モデルは15代目にあたり、伝統のある国産車のひとつです。
隆盛期となる1990年の年間販売台数はなんと約24万台。これは、いま日本で一番売れているホンダ「N-BOX」の2019年の年間販売台数(23万6635台)と同等という、驚異的な数字です。
昨今では、さすがにクラウンの販売台数は落ち込んでいますが、それでも現行型が登場した2018年には5万台超、2020年も約2万2000台と、エントリーグレードでも500万円近い高級車としては十分なセールスを記録しているともいえます。
そんなクラウンのセダンタイプが消滅するという話題になるのも、「セダン」というジャンル自体が低迷しているからにほかなりません。
最近ではレクサス「GS」やトヨタ「マークX」、日産「ティアナ」「シルフィ」、ホンダ「グレイス」「シビックセダン」などが相次いで販売を終了。
また、トヨタの「プレミオ」と「アリオン」が2021年3月末をもって生産終了となることが、公式ホームページで案内されています。
現在のSUVのように、かつてトヨタはセダン(4ドアハードトップ含む)だけでも充実したラインナップを展開していましたが、今後は「カローラ」「カムリ」「センチェリー」「ミライ」のみになる可能性があるのです。
センチュリーとミライが少し特殊なモデルということを考えると、実質カローラとカムリだけです。果たして、そこまで販売車種を絞るほどセダンは不人気なのでしょうか。
メーカーを問わず、実際に現場で販売を担当するディーラーマンは口をそろえて、「セダンは中高年齢層には根強い人気があるが、若者からあまり支持されていない」と話します。
実際、2015年の時点でカローラのセダン購入者の平均年齢は70歳、クラウンユーザーの平均年齢層は60代とされていました。
ちなみに、ユーザー層の若返りを狙ったという現行カムリですが、それでも30代後半から40代前半がターゲット。
ほかのセダンと比べれば若い年代を取り込もうとしているものの、30代・40代を「若者」とカテゴライズするには悩ましい世代ともいえます。
■いまの若者はセダンに乗らずに育った!? セダンのイメージとは
セダンというジャンルは若い世代にはあまり響いていないようですが、10代や20代の若年層はどのようにセダンを見ているのでしょうか。
実際に聞いてみたところ、もっとも多かったのは「積極的にセダンを選ぶ理由がない」という意見です。
スポーティさを求めるならハッチバックやクーペ、趣味を重視するならSUVやワゴン、多人数で乗る機会が多いならミニバンを選択するという「理由」がありますが、セダンはその動機づけが弱いといいます。
マイチェンで若者の人気を取り戻した日産「スカイライン 400R」
免許を取得して間もないKさん(19歳・女性)は「セダンはトランクの先が見えなくてバックでの駐車が難しい」との理由で、マイカーを購入するなら後方の長さが掴みやすいハッチバックタイプのコンパクトカーがいいといいます。
また、「地味」や「若者が乗って似合うデザインのクルマがない」といったスタイリングに対する否定的な意見も見受けられました。
たしかに、いま新車で販売されているセダンは堅実なスタイルのモデルが多く、若者に向けたスポーティなデザインに振ると、実際の購買層である中高年が離れてしまいかねません。この辺はメーカーとしても頭を痛めているところではないでしょうか。
ネガティブなコメントもある一方で、セダンを支持する声も少なくありません。
「人と荷物が別の空間というのがいいです。外から荷物も見えませんし」とTさん(26歳・男性)はいいます。
ワゴンやハッチバックでもトノカバーでラゲッジルームを隔てることは可能ですが、音や匂いまではなかなかシャットアウトできません。防犯という面でも完全に内部が見えないセダンのトランクのほうが安心といえるでしょう。
「メルセデス・ベンツやBMWみたいに、高級車はやはりセダンがビシっとしていいです」という意見はクルマ好きの若者にも多く、セダンはクルマの基本形との認識はいまも変わらずあるようです。
昔のように「冠婚葬祭に乗り付けるならセダンに限る」みたいな固定観念はさすがになくなりましたが、「将来的にはセダンに乗りたい」という考え、つまり年齢を重ねた大人が似合うフォーマルなクルマというイメージは根強く残っています。
ただ、いいかえるなら、セダンは「若いいまのうちに乗るクルマ」ではないということで、多くの若者が求めている将来のセダンはメルセデス・ベンツBMWなどの高級輸入車なようです。
※ ※ ※
若い人たちから話を聞いてもっとも驚かされたのは、自身が子供のころに両親が乗っていたクルマがセダンではなかった人が多かったことです。
たとえば、いま25歳の人が物心ついたころを5歳と仮定すると、記憶があるのは2000年以降になります。
当時はホンダ「ストリーム」やトヨタ「エスティマ」などのミニバンが販売台数ランキングの上位を独占し、1990年代のクロカン四駆ブームの名残も。
そうした背景もあり、家のクルマはカローラでも「カローラスパシオ」だったり、三菱「パジェロ」だったりと、なれ親しんでいたのはセダン以外のクルマだったという回答が数多くありました。
そもそもセダンで育っていないのだから、自身のクルマ選びでもセダンという選択肢が出てこないのは、ある意味当然のことなのかもしれません。
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