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走行距離たったの983km! 奇跡の「チゼタ」が「ディアブロ」に似ている理由とは

くるまのニュース / 2021年1月22日 19時10分

もともとランボルギーニの社員だった男が、海を渡ってアメリカ西海岸で夢を現実のものとしたチゼタ「V16T」とは、どんなスーパーカーだったのだろうか。

■ひとりの男の夢が形となったスーパーカー

 2021年1月の第4週の週末は、オートオークションの世界にとって、もっとも大きな盛り上がりを見せる期間であるといってもよい。

 これはアメリカのアリゾナ州スコッツディールを中心に、メジャー・オークショネアから、比較的規模の小さなオークショネアまでが、一斉に今年最初の本格的なオークションを開催するためで、見方によってはここで2021年の動きが決まるといってもあながち間違いではないのである。

●1993 チゼタ「V16T」

 各社はすでに出品車の多くを公開し始めているが、そのなかで、個人的にまず目に留まったのは、1993年式のチゼタ「V16T」だった。

 イタリアン・スーパーカーの世界に詳しい人には多くの解説を必要としないが、このV16Tを開発・生産したのは、当時モデナの新興勢力として語られたチゼタ・モロダー社である。

 チゼタとは、創業者のひとりであり、かつてはランボルギーニでテストドライバーやメカニックの職にあったクラウディオ・ザンポーリのイニシャル、「CZ」をイタリア語した音である。

 モロダーは世界的に有名な音楽家、ジョルジョ・モロダーの姓である。このふたつを組み合わせ、チゼタ・モロダー社となった。

 1973年にランボルギーニを辞したザンポーリは、その数年後にイタリアを離れ、カリフォルニアでイタリア車のスーパースポーツ・ディーラーを経営していたが、彼にはどうしても諦められない夢があった。

 フェラーリやランボルギーニがそうであったように、自分の名前を掲げたスーパーカーを生み出すこと。その夢はあまりにも壮大で、多くの資金を必要とするものだったが、その計画に賛同してくれたのがモロダーだったのである。

 ザンポーリは1980年代を迎える頃には、早くもその胸中に理想的なスーパースポーツ像を描いていたという。鋼板を組み合わせて製作されたスペースフレームを基本骨格に、それに前衛的なデザインのボディパネルを張り合わせていくという手法は、小規模生産を前提とするモデルにはベストな手法。

 ボディデザインは、かのマルッチェロ・ガンディーニに委ねられた。しかし当時ガンディーニは、クライスラー・グループにあったランボルギーニで「カウンタック」の後継モデルとなる次期12気筒モデル「ディアブロ」をデザイン中で、チゼタのディテールには、そもそもディアブロに与えられるべきデザイン要素が多数採用されているともいう。

■ガンディーニ作という神通力は通用するのか

 実際に完成されたボディは、まさに空気の壁を切り裂くが如き鋭いウェッジシェイプスタイルだった。

 ドライバーの着座位置は見た目にはかなり前方にあるが、これはリアミッドに搭載されるエンジンに直接の理由がある。ザンポーリは自身の野心作にV型16気筒エンジンを横置き搭載するという驚異的な発想で、このスーパースポーツを完成させたのである。

●1993 チゼタ「V16T」

チゼタ「V16T」には右ハンドル仕様も存在した(C)2020 Courtesy of RM Sotheby'sチゼタ「V16T」には右ハンドル仕様も存在した(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 車名のV16Tとは、V型16気筒エンジンを横置き搭載することを意味している。

 パートナーのモロダーは、第1号車が完成するのに前後して、このプロジェクトから離れてしまったため、車名はシンプルに「チゼタV16T」と呼ばれることになったが、実際に完成したプロトタイプは、ザンポーリの夢をそのまま形にした、まさに理想そのものであった。

 チゼタV16Tのボディサイズは、全長4442mm×全幅2060mm×全高1115mm。印象的なのはやはり全幅の大きさで、実際にV16Tの姿を見ても、リアに向って増していくボリューム感は強く印象に残る。

 リアミッドに搭載されたV型16気筒エンジンは、プロトタイプ時には560psを宣言していたが、プロダクション仕様では520psにデチューンされた。組み合わせられるトランスミッションは5速MTだ。

 アリゾナ・オークション2021の主催者、RMサザビーズの調査によれば、オークションに出品されたS/N:101のV16Tは、シンガポールのディーラーから、ロイヤル・ブルネイのファミリーに代わってオーダーされたものだという。

 ロイヤル・ブルネイは、このブルーのV16Tのほかに、ブラックを2台購入しており、その特長はいずれも右ハンドル仕様であることだった。当然のことながら出品車も右ハンドル仕様モデルとなっている。

 シンガポールに出荷されたこのV16Tは、理由は不明ながら25年以上にわたって、そのままディーラーに保管されたという。ロイヤル・ファミリーのための保管であるから、メンテナンスやクリーニングもきちんとおこなわれたことだろう。

 オドメーターが刻む走行距離は、わずかに983kmでしかない。

 プロトタイプを含め、十数台のみが生産されたのみというチゼタV16T。今回RMサザビーズは、それに60万−75万ドル(邦貨換算約6230−7800万円)というエスティメート(予想落札価格)を示してみせた。はたしてその結果はいかに。

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