税金・保険に燃料代…日本は車の維持費が高すぎ!? アメリカの車事情との違いは?
くるまのニュース / 2021年1月23日 16時10分
日本には車検制度があり、ガソリン価格も高く、クルマを所有する際の維持費が高額といわれています。一方で世界有数の自動車大国アメリカは誰もがクルマを持てるイメージがありますが、アメリカのクルマ事情はどのようになっているのでしょうか。
■州によって登録方法や税法が異なるアメリカ
クルマを所有するには、車両本体の価格以外にもさまざまな税金や保険料、燃料費など、「維持費」が必要です。
そして日本は、厳密な車検制度や高い自動車関連税などがあり、クルマ所有するのに多額の費用がかかる国だといわれています。
一般社団法人日本自動車工業会(自工会)によると、日本の自動車関連税はドイツの約2.8倍、イギリスの約2.4倍、アメリカとの比較では約31倍と試算されるとのことです。
一方で、自動車保有台数(乗用車・トラックやバスを含む)を見てみると、1位のアメリカは2億8149万9000台、2位の中国は2億3122万台、3位は日本で7828万9000台となっています(2018年度、自工会調べ)。
国土の広さや人口が違うとはいえ、アメリカでは日本の約3.6倍ものクルマが保有されていますが、これだけ多くの人がクルマを持つことができるアメリカのクルマ事情は、日本とどのような違いがあるのでしょうか。
アメリカのクルマ事情について、ニューヨーク在住20年以上のTさん(40代・女性)に聞いてみました。
「アメリカ国内で時差が4時間もあり、地域によっては外を歩けないほどの寒さになる地域もあれば、暑すぎて歩くと熱射病になってしまうような地域もあります。
以前住んでいたフロリダでは、最寄りのスーパーでも数マイルもあって歩いては行けず(1マイル:約1.6キロメートル)、買い出しは常にクルマでした。
ニューヨーク州内でも場所によってはクルマ事情もかなり変わり、日本のように地下鉄などの公共交通機関が発達しているのはマンハッタンくらいで、それ以外の都市はクルマがないと日常生活ができないほどのクルマ社会だといえます」
さらに、日本は政府主導であるのに対し、アメリカは連邦政府より各州の権限が強い50の州が集まった合衆国です。
連邦法もありますが、それよりも税収や保険などは各州によってバラツキがあるのが現状だといいます。
「まずアメリカは、連邦法より州法のほうが強制力が高いといえます。ニューヨークでは、クルマ事情も含めて、FBI(連邦捜査局)ではなくニューヨーク市警察が仕切っているとでもいえばいいでしょうか。
各州によってクルマの検査方法もバラバラですし、そもそもドライバーズライセンス(免許)を発行する権限も州ごとになっています」(ニューヨーク在住Tさん)
ニューヨーク州とは橋を渡るだけというくらい近い距離のニュージャージー州でも法律や保険料が違うそうです。また、環境に厳しいカルフォルニア州と、のどかなアイダホ州では保安基準も全然違うのだとか。
「アメリカで統一している基準といえば『Registration(レジストレーション)』と呼ばれる車両登録証でしょうか。これがニューヨークなら年に1回、ほかの州でも2年に1回は更新が必要になります。
あとは日本の強制保険(自賠責保険)と同じように保険に必ず加入しなければ、クルマは購入できません」(ニューヨーク在住Tさん)
アメリカでは最初に車両登録するだけでOKなのかと思いきや、それだけで済まないようです。
しかも購入価格にかかる州税(消費税)もバラバラで、さらに市税も加わるため、最終的な購入金額に差が生まれるといいます。
■アメリカでは最初に保険に加入しないとクルマが買えない!?
アメリカは州によってクルマを保有するための手続きが違いますが、Tさんに話を聞くなかで日本と大きな違いがあったのが購入の手順です。
日本ではディーラーや販売店などで商談し、クルマの購入が確定してから税金や保険料を支払うことになりますが、アメリカはまず保険料を支払うことがファーストステップなのだそうです。
アメリカのガソリンスタンド
「ニューヨークでの話になりますが、まず必要なのが保険の加入です。これは年齢によって金額も違い、さらに車両までカバーするのかどうかによっても価格が違います。
また、クルマのボディカラーによって保険料も変わります。赤など目立つ色は、それだけ取り締まりの対象になりやすいので保険料も高額になっています」(ニューヨーク在住Tさん)
しかもニューヨークの場合は『Registration』(車両登録証)だけでなく、『Certificate of Title』(クルマの権利書)も必要になります。
加えてニューヨーク州発行のドライバーズライセンス、パスポート、ビザ、出入国記録、社会保障番号、アメリカで発行されたクレジットカードと、6つのIDが必要になるのだそうです。
ちなみにクルマの購入はローンが一般的で、現金一括払いのような支払いは安全面から拒否されるケースもあるといいます。
こういった細かい手続きはブローカーと呼ばれる業者に依頼するのが一般的で、ニューヨークの場合は毎年の誕生日に『Registration』(車両登録証)を更新する必要があるとのこと。
ある部分では日本以上に手続きや支払い件数が多いアメリカですが、それでもトータルでみると日本よりは維持費は安く済みます。
「ニューヨークでの『Registration』(車両登録証)の更新費用はだいたい年間20ドルから30ドル程度。1ドル105円で計算すると、日本円として約2100円から約3150円くらいです。
保険料は、私の場合はフルオプション(日本でいう車両保険込み)していることもあり、年に1200ドル(約12万6000円)程度でした」(ニューヨーク在住Tさん)
そして、ガソリン代は日本と比較するとやはり安価。ニューヨークはほかの州と比べると物価が高いことが有名ですが、それでも1ガロン(約3.78リットル)3ドル程度、約83.2円/Lということです。
物価の高いニューヨークでもガソリン代は日本の約3分の2程度で、ほかの州ならもっと安いといわれています。
ガソリンのほうが水より安い地域もあり、アメ車が大排気量エンジンで燃費をあまり気にしなくてよかったのも当然だといえます。
※ ※ ※
アメリカでクルマを所有・維持するのは、思ったより大変なことが分かりました。
それでもやはり日本の自動車関連税は高く、この維持費の高さでクルマ購入を諦めてしまう若い人も多そうです。
アメリカ並みに安くとはいいませんが、せめて欧州レベルまで税金が下がり、また各国で認めている「ヒストリック登録」や「25年ルール」のような、古いクルマの優遇制度が確立されて、若い人にもクルマが買いやすい環境になってほしいものです。
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