実はかなりお金がかかっていた!? 見た目に似合わず気合がスゴい車3選
くるまのニュース / 2021年1月20日 16時10分
スポーツカーや高級車といった高額なクルマでは、エンジンや足まわり、装備などに高いコストがかかっているのが一般的です。しかし、そうした高額なクルマでなくても、意外とお金がかかっていたクルマも存在。そこで、実は高コストだったクルマを3車種ピックアップして紹介します。
■高級車じゃないけどお金がかかっていた意外なクルマを振り返る
一般的に高性能なスポーツカーや高級車といった高額なクルマでは、エンジンやサスペンション、ブレーキ、内装の仕上げ、装備、塗装など、さまざまな部分にお金がかかっています。
諸性能の向上だけでなくクルマとしての価値を高めるために、素材が吟味されたり精度の高い部品が採用され、なかには人の手によって仕上げるといった製造方法がとられることも珍しくありません。
一方で、それほど高額なクルマではないにもかかわらず、製造にお金がかかっていたクルマも存在。そこで、見かけによらず実は高コストだったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「マキシマ」
わずか3年間の販売のためにエンジンの大部分が新設計された「マキシマ」
日産は1981年に「ブルーバード」をベースにした上級モデルの「マキシマ」を、北米市場で発売。日本でも1984年から「ブルーバードマキシマ」の名で販売を開始しました。
そして、1988年には3代目がデビューし、日本でもマキシマへと名前が変わり、独立した車種として展開します。
3代目マキシマは、外装に曲面を多用することで柔らかな印象を醸したスタイリッシュなアッパーミドルクラスのセダンで、日本では好景気という背景もあって人気となりました。
この、一見するとなんの変哲も無いように思えるセダンのマキシマですが、1991年のマイナーチェンジで登場した「マキシマ 3000SV」のエンジンが注目に値します。
そのエンジンは3リッター直列6気筒DOHCの「VE30DE型」で、4代目「フェアレディZ」や初代「シーマ」にも搭載された「VG30DE型」をベースとしていました。
もともとFR用に開発されたVG30DE型を、FFのマキシマに搭載するにあたって単に横置きに対応しただけでなく、マキシマのエンジンルームのスペースの問題から、シリンダーヘッドとバルブ駆動系(タイミングチェーンまわり)は新規で設計されています。
最高出力は195馬力を発揮し、マキシマの商品力を向上させることに成功しましたが、パワーの割にエンジン重量増という欠点もあり、1994年のフルモデルチェンジ時にFF/FRに共用することを念頭に新開発された、V型6気筒「VQ30DE型」エンジンにスイッチされました。
そのため、VE30DE型は3代目マキシマ以外には使われず、わずか3年間で生産を終了してしまいます。
VE30DE型はVG30DE型というベースがあったにせよ、たった1車種のために主要な部品が新開発されたことを考えると、とても贅沢なことではないでしょうか。
●トヨタ「プリウスα」
高額な部品が惜しみなく投入されるなど先進性があった「プリウスα」
1997年に、トヨタは世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を発売。後にハイブリッド車の拡充を進め、さまざまな車種が発売されて現在に至ります。
そのなかの1台が2011年に登場した「プリウスα」で、3代目プリウスをベースにしたハイブリッド専用のステーションワゴンです。
バリエーションは大きく分けて2列シート5人乗りと3列シート7人乗りをラインナップし、大人がゆったりと座れる居住空間に、最大1070リッターの荷室容量を確保。
外観は3代目プリウスの意匠を踏襲し、空力性能を重視したスタイリッシュなフォルムを実現しています。
プリウスαは単にプリウスのボディを伸ばしただけのように思えましたが、実際には3列シート車はプリウスよりも早期にリチウムイオン電池を搭載するなど、技術的にも先進的でした。
3列シート車ではスペースを稼ぐ必要があったため、プリウスのニッケル水素電池ではなく、小型化が可能ながら高価なリチウムイオン電池が採用されたということです。
その後、プリウスαは2014年のマイナーチェンジでフロントフェイスが一新され、2017年には先進安全技術の充実が図られるなど改良がおこなわれてきましたが、2021年3月末に生産を終了すると正式にアナウンスされています。
■単なる「N-BOX」の派生車というレベルではないモデルとは!?
●ホンダ「N-BOXスラッシュ」
外装の大部分が新設計されるなど開発者のこだわりが凄かった「N-BOXスラッシュ」
現在、日本の自動車市場でもっとも売れているクルマといえば、ホンダ「N-BOX」シリーズです。初代は2011年に発売され、ライバルひしめく軽ハイトワゴンのなかでも、同社独自のセンタータンクレイアウトの採用とエンジンルームのサイズ圧縮などにより、ライバルを上まわる広い室内空間を実現したことで大ヒットしました。
そして2014年には、N-BOXをベースに全高を1670mmまで低くして、クーペをイメージしたフォルムの派生車「N-BOXスラッシュ」が登場。
N-BOXスラッシュは、主にアメリカで古くから存在するカスタマイズカーの「チョップドトップ」のように、すべてのピラーを短くして全高を下げる手法を採用。
さらに、リアドアがN-BOXのスライドドアに対してヒンジドアに変更されるなど、ボンネットまわりのフロントセクション以外のボディパネルと、ウインドウガラスすべてが新規で設計されたことになります。
内装も色や素材にこだわり、5つの世界観を表現した5パターンを用意。オーディオは8スピーカー+サブウーファーのハイクオリティなものが設定され、ディーラーオプションで内装の微振動を低減するデッドニングキットが用意されるほど、音質にこだわっていました。
ほかにも、電動パーキングブレーキやパワーステアリングのアシスト力を選択できる「モード切り替えステアリング」など、N-BOXスラッシュのみに搭載された装備があります。
開発者のこだわりが凝縮されたN-BOXスラッシュは、2代目N-BOXが発売された後もモデルチェンジすることなく継続して販売されていましたが、2020年2月に販売を終え、後継車はありませんでした。
※ ※ ※
クルマに限ったことではありませんが、大量生産をおこなう製品ではボルト1本に至るまで、厳格なコスト管理がおこなわれています。
そのコストが度外視されたクルマとして有名な例が、本文中にも登場した初代プリウスです。
初代プリウスの新車価格は215万円(消費税含まず)と、当時の同クラスのクルマよりも50万円ほど高価でしたが、実際にはかなりのバーゲンプライスで、トヨタも赤字覚悟だったという逸話があります。
いまではハイブリッド車が爆発的に普及し、飛躍的に燃費が向上したことや先進安全技術や快適装備が充実したうえで、200万円未満から販売されていることを考えると、企業努力と技術的な進歩の凄さが垣間見えるのではないでしょうか。
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