事故続発「ホワイトアウト」に遭遇したらどう対処? 雪の視界不良の危険性とは
くるまのニュース / 2021年1月21日 11時10分
強風と雪による視界不良「ホワイトアウト」によって起きたと見られる交通事故が、2021年1月19日に東北地方や北海道で相次ぎました。ホワイトアウトの発生による事故を防ぐために、道路管理者やドライバーはどのような対応をするべきなのでしょうか。
■ホワイトアウトが原因と見られる事故が相次いで発生
強風で積もった雪が舞い、視界が不良になることを、ホワイトアウトといいます。ホワイトアウトが原因とみられる交通事故が2021年1月19日、東北地方や北海道で相次いで発生しましたが、こうした事故を防ぐ方法はないのでしょうか。
東北自動車道の事例を見ると、事故発生は午前11時50分頃。場所は、片側2車線の下り線、宮城県の古川インターチェンジと長者原(ちょうじゃはら)サービスエリアの間です。
そこに、衝突した乗用車やトラックなど約140台が足止めされました。
各種報道で事故現場の映像を見ると、140台のうち、乗用車数台がスピンした状態で止まっており、そこにタンクローリーや大型トラックが玉突き衝突している様子が分かります。
テレビなどのインタビューで、その時間帯に同じ場所を走行していたドライバーは、古川インターチェンジの手前に「この先 地吹雪地帯」という看板があり、その前までは雪はほとんど降っていなかったが、地吹雪地帯に入るとホワイトアウト状態になった、と証言しています。
NEXCO東日本によると、事故発生当時、地吹雪地帯は最高速度50キロ規制がかかっていたといいますが、こうした状況を俯瞰してみると、なぜ事前に通行止めにしなかったのかという疑問が浮かびます。
地吹雪地帯という名称を使っているように、ここは東北自動車道周辺が平坦な農地で、過去にも強風が吹くことが多いことが分かっていたところです。
気象情報によってこの日は強風となることも事前に分かっていました。むろん、ホワイトアウトがクルマの走行で極めて危険な状態であることも分かっています。
さらにいえば、NEXCO東日本管轄では2020年12月16日から発生した新潟県内・関越自動車道での大雪による立往生、またNEXCO中日本管轄では2021年1月10日から発生した福井県内・北陸自動車での立往生で、気象変化に対応した事前通行止めの必要性を、道路管理会社、自治体、そして利用者、それぞれが強く認識したばかりです。
NEXCO中日本・金沢支社長は1月18日におこなわれた福井県災害対策本部会議で、大雪の場合は除雪のため「予防的通行止めを今後は躊躇なく判断する」と説明したばかりでした。
ここで問題となるのが、「判断基準」です。
地吹雪の発生を正確に予測することは難しいのかもしれませんが、少なくとも道路側のカメラなど、または関係者による現場での目視による報告で、現場の状況変化はNEXCO東日本の交通管制側で把握しており、それによって最高速度50キロ規制をかけたはずです。
それを通行止めにするとなると、関越道と北陸道での立往生の事案で露呈したように、自治体や警察と連携をかなりスピーディにおこない、状況によっては道路管理者の社内基準を超える決断が必要になります。
近年、道路インフラ側には道路環境を把握するさまざまなセンサーが導入されていますが、最終判断の下すのはAI(人工知能)ではなく、人です。
雪への対応だけではなく、気象変化に対する道路管理の在り方について今一度、関係各位での防災対策として議論を深める必要があると強く思います。
■ホワイトアウトに遭遇したらドライバーはどうすればよいのか?
では、通行止めにならない状況でホワイトアウトに遭遇したら、ドライバーはどうすればよいのでしょうか。ここからは、過去にホワイトアウトでの走行経験がある筆者(桃田健史)の私見です。
まずは、減速するべきですが、減速し過ぎては後方からの衝突の可能性が増します。
理想的には、制限速度を厳守しながら走行するべきですが、ドライバーの運転経験の差やその日の体調などによって、制限速度を維持することすら困難な状況になることも予想され、結果的にはドライバーひとりひとりが臨機応変な対応をするしかありません。
そのうえで、近くのパーキングエリアやサービスエリアに退避することが求められると思います。
道路がホワイトアウトしたらどう乗り切るべき?
また、渋滞発生時の最後尾車がおこなうようにハザードランプ(非常点滅表示灯)をつけて走行することもあり得ますが、道路交通法上でハザードランプは道路上や路肩で緊急に停車または停止している時に使用することが基本になっており、ホワイトアウト時は停車車両と走行車両との見分けがつかず、不慣れなドライバーは急ブレーキを踏み衝突事故の危険性を生む可能性も考えられます。
ホワイトアウト時の走行中のハザードライト使用については今後、警察と道路管理者がさらに議論を深め、明確な指針を広く広報する必要があると考えます。
別の視点では、自動速度制御装置(ISA)の導入が考えられます。
近年発売されている新車は、車載カメラやGPSの位置情報から制限速度を認識し、ダッシュボードに制限速度を表示できるモデルが増えています。
ISAはこうした速度の認識機能を使って、速度超過に対して音声などによるドライバーへの警告、さらには強制的な速度制限を自動でかける装置です。2022年から欧州では、音声による警告を第一弾として導入が義務化されます。
日本でも、国土交通省が先進安全自動車推進検討会として、ISA導入に向けた基本設計書を公開しています。そのなかで2016年の軽井沢スキーバス事故や、2019年の池袋での高齢ドライバーによる暴走事故など、社会実情におけるISAの必要性を記載しています。
ホワイトアウトなど雪道での走行についても、事故発生のひとつの要因として、一部のドライバーは速度規制がかかっても、通常の制限速度、またはそれ以上の速度で走行している実情があり、ISA導入の必要性を感じます。
今後、さまざまな観点からホワイトアウトでの事故対策を講じるべきだと考えます。
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