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「カーステ」って死語? カセット・CD販売と共に変化 ドライブの必需品は過去の話なのか

くるまのニュース / 2021年1月25日 9時10分

かつてドライブといえば「カーステから流れる音楽を楽しむ」という時代がありましたが、現在ではすっかり影が薄くなってしまったカーステレオ。このまま時代の波に流されなくなっていくのでしょうか。

■カーステがドライブに欠かせなかった時代

 現在ではすっかり影が薄くなってしまったカーステですが、かつてドライブといえば「カーステから流れる音楽を楽しむ」という時代がありました。
 
 最近ではスマートフォンがひとつあれば済む時代になりつつありますが、このまま時代の波に流されなくなっていくのでしょうか。

 カーステとは、「カーステレオ」の略称で、「カーオーディオ」とも呼ばれます。

 金曜の夜、トヨタ「ハイラックス・サーフ」や三菱「パジェロ」にスキー道具を積んで松任谷由実や広瀬香美を聞きながらスキー場を目指したり、湘南へのドライブにはサザンオールスターズ、夜の高速道路ではTM NETWORKなど、今の若い世代では考えられませんが、当時では、カーステから流れる音楽は、ドライブシーンに欠かせないものとされていました。

 そんなカーステレオの歴史は、自動車産業の歴史とともに歩んできました。

 世界初のカーラジオは1930年に米国で発売された「モトローラモデル5T71」といわれています。

 当時はゼネラルモーターズが大衆向けブランドの「シボレー」を、クライスラーが同じく「プリムス」を立ち上げ、人気を博していた時代で、自動車の大衆化とともにカーオーディオの歴史が始まったといえます。

 日本では1951年に、クラリオンが初の純正ラジオ「ル・パリジャン」を日野「ルノー」に提供しています。

 その後クラリオンは、1963年に日本初のカーステレオを誕生させます。ここからカーステレオの普及が本格化します。

 1970年代には通称「8トラ(ハチトラ)」こと、「8トラック・カートリッジテープ」が登場。クルマのなかで好きな音楽を聴くということが一般化するようになりました。

 1980年代には、いわゆる「カセットテープ」と呼ばれる「コンパクトカセット」の再生ができるカーオーディオが普及します。

 カセットテープの登場により、手持ちのレコードやラジオから録音した音楽を自分好みに編集し、ドライブ中のBGMとして楽しむという文化が生まれました。

 ハチトラに比べ、早送り・巻き戻しができる点やコンパクトなサイズ感が受け、人気を高めていきます。

 さらに、カーステレオの普及に伴い、これまでレコードを中心に発売されていた音楽ソフトが、カセットテープとしても売られるようになりました。

 一般社団法人日本レコード協会の調査によると、平成元年の1989年には7230万1000本ものミュージックカセットが生産されています。

 ドライブの友として欠かせなくなったミュージックカセットは、高速道路のサービスエリアや観光地のみやげ店などでも売られるようになりました。

 そして1990年代は、CDの時代となります。ダッシュパネルに装着されたデッキとは別に、CDを6枚から12枚を連続して再生することのできる「CDチェンジャー」も登場し、クルマのオーディオルーム化が加速しました。

 CDの生産枚数も増加し、日本レコード協会によると1998年には3億291万3000枚のCDが世に送り出されています。

 時代と共にカーオーディオにさまざまな変化が見られたなか、1980年代からは、カーステの外観にも変化が生じました。

 従来は純正のラジオ以外、カセットデッキなどはオプション品で、ダッシュボードの下につり下げて取り付けるのが一般的でしたが、ドイツ工業規格(DIN)がカーオーディオのサイズを規格化すると、多くの車種でダッシュパネル内に収納されるようになります。

 車内の「特等席」を得たカーステは、派手なディスプレイを競うように取り入れていきました。

 音に合わせてスペクトラムアナライザが光り、照明付きのボタンやダイヤルの数が、その多機能さを誇ります。

 また、リヤパーセルシェルフに設置されたスピーカーには、オーディオブランドのロゴが後続車に向けて大きく描かれ、なかにはライトアップされていたり、ブレーキランプに合わせてロゴが赤く点灯するものもありました。

1992年に発売されたホンダ「アコード・ワゴン」に設定された「AM/FM電子チューナー + フルロジックカセットデッキ + 5スピーカーオーディオシステム」1992年に発売されたホンダ「アコード・ワゴン」に設定された「AM/FM電子チューナー + フルロジックカセットデッキ + 5スピーカーオーディオシステム」

 そんな一時代を築いたカーステですが、カーオーディオの市場規模は現在、バブル期の5分の1ほどになってしまっています。

 経済産業省の機械統計年報によると、カーオーディオの年間販売台数は平成元年の1989年が1816万9718台だったのに対し、令和元年の2019年では346万3381台、金額ベースでは1989年が35億2626百万円、2019年は6億8789百万円と大幅に減少しています。

 この衰退を招いた大きな原因のひとつは、アップル「iPod」の登場です。

 アップルは、2001年10月24日に「1000曲ポケットに入れて持ち運べる超小型MP3プレーヤー」として、iPodを発表しました。

 場所を選ばずにiPodひとつでさまざまな音楽を聞くことができる手軽さが反響をよび、6年後の2007年には累計販売台数が1億台を突破するなど、瞬く間にユーザーの心を掴んだ音楽機器となりました。

 これにより、カセットテープやCDなどの販売は徐々に落ち込んでいきます。

 日本レコード協会によると、2010年のカセットテープの売上は28万6600枚、2015年には8万枚、2019年には3万3600枚と数値が格段に落ちています。

 CDの売上全体をみても、2010年には2098万7900枚だったのに対し、2015年には1696万4900枚、2019年には1343万2000枚となっています。

 このように、iPodの普及によりカセットテープやCDなどを再生する専用のヘッドユニットが不要になってしまい、カーステレオはiPodの音楽を車内に流すアンプと、ラジオの機能があれば十分ということになり、脇役的な立場へと変化していきました。

 また、最近ではスマートフォンの普及によりiPodのような音楽プレーヤーではなく、スマートフォンだけで、電話やメール、インターネット、そして音楽も聞くことができる時代となりました。

 日本レコード協会が発表する音楽配信売上実績をみると、2018年の総売上は160億7000万円、ストリーミングでは7億6000万円と前年比120%、直近の2020年1月から3月までを見ても、総売上は187億5600万円、前年比112%、とくにストリーミングが大きく数値を伸ばし音楽のサブスクリプションでは114億4700万円と、前年比130%超えとなっています。

 スマートフォンの普及により、カーステは音源の再生という機能を外部機器に譲り、むしろカーステ側が、スマートフォンの機能を自動車内の環境に最適化する付属機器のような役割に変化したのです。

 自動車用品店のスタッフは、以下のように話します。

「iPodが登場した頃は、トランスミッターやアダプターなど、カーステと接続する機材が販売されていましたが、今はBluetoothなどが標準で付いていますので需要は少なくなっています。

 機能的には、スマートフォンがつながって音楽が聴ければ十分というお客さまが多いのではないでしょうか」

 また、カーナビの普及もカーステを変化させ、衰退させていく要因になったといえます。

 最近のクルマでは、カーオーディオがカーナビと一体化し、液晶ディスプレイを備えたことでDVDやテレビの視聴が可能になり、音楽再生の機能が主役の座を追われたような状況になりました。

 さらに、バックモニターや「アラウンドビューモニター」など、安全装備の一部を含む車内外の装備が、純正やディーラーオプションのナビゲーションシステムに組み込まれたことで、社外オーディオを選択する余地がなくなったことも、カーステの衰退に影響しているようです。

 自動車メーカーがカタログやCMで売り出している機能は、純正ナビシステムを装着しないと実現できないケースが多くなっているのです。

 クルマが多機能化したことによって、ユーザーの選択肢が狭くなったといえるのかもしれません。

 別の自動車用品店スタッフは、以下のように話します。

「メーカー純正品やディーラーオプション品が、カーナビやバックモニター機能の付いた高性能なものになったので、車外品を取り付けるのはとにかく安く済ませたいか、特別なこだわりのあるお客さまになりました」

※  ※  ※

 いつの時代も、音楽はドライブに楽しさを添えてくれる重要なパートナーです。

 カーステという本来の形は時代とともになくなりつつも、クルマの中で音楽を聞く文化は形を変え今後も進化を遂げていくといえるでしょう。

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