日本限定47台のニュル最速「メガーヌ R.S.トロフィーR」を丸山浩氏が筑波で試す!
くるまのニュース / 2021年1月24日 19時10分
プロレーサー、テストライダー・ドライバーの丸山浩氏によるオーナー目線のインプレッション。今回のテストカーは、ルノー「メガーヌ R.S.トロフィーR」だ。
■プロのFF使いが「メガーヌR.S.トロフィーR」を走らせたら?
ニュルブルクリンク北コースにおいて、2019年4月に量産FF車最速の記録を打ち立てたルノー「メガーヌ R.S.トロフィーR」。世界限定470台のうち、日本への割り当てはわずか47台。
このルノー・スポールの技術の粋を注ぎ込んでパフォーマンスを極めたメガーヌ R.S.トロフィーRを、女性と男性の目線から試乗してみることにした。
●FF使いのプロレーサー丸山浩氏のインプレ
もう20年近く前の話になりますが、私は「FF使い」としてホンダ「シビック」を駆り、地方選から全日本、そしてスーパー耐久まで、数々のレースで優勝を経験してきた。
現行モデルの「シビック タイプR」を打ち落とす最速のFF車と謳われるルノー・メガーヌR.S.トロフィーRは、その名に「R」を冠するだけあって、300psものハイパワーエンジンを搭載。それを前2輪だけで駆動させようというのだから、FF使いとしては興味津々だった。
ストリートでは思ったよりも快適だ。足まわりはもちろん引き締められていて、路面の凸凹をガッツリと拾う。ダンピングが効いているためお世辞にも乗り心地良好とはいいがたいが、シビックのレーサーを街乗り用としても走らせていた私からすれば、こちらの方が全然マシ(笑)。
ある程度のしなやかさはあるし、フルバケットシートも座り心地がいいと表現させてもらおう。後方視界やミラーの見えやすさにも配慮が行き届いているし、シフトフィールも柔らかさと節度感があり、使いやすい。まず最初に、「これは普通に街乗りできるクルマだな」という印象を持った。
ただし、公道では300psは、やはりハンパないパワーだ。タイヤが冷えている状態で不用意にアクセルを踏み込むと、あっという間にフロントのグリップを失ってしまいそうになる。
基本的なハンドリングに関しては非常に素直だが、常に300psのパワーのことを意識しておく必要がある。FFスポーツカーのなかでも、緊張感はかなり高い方だ。
だからこそ、サーキットで走らせたら楽しそうだと、大いに期待しながら筑波サーキットに向かった。
最初に走ったのはコース2000だ。ピットアウトして、その上質な乗り味には驚かされた。
足まわりは引き締められていながら、しっとりとした接地感がある。走り始めたばかりでまだタイヤも冷えていたのに、ドライビングが楽しい。ただし。パワーはさすがにスゴイ。1.8リッターターボは低回転域からトルクフルで、2500rpmあたりからグッと盛り上がり、高回転域に差しかかってもさらに伸びようとする。この伸び切り感は、本格的にタイムアタックをする時には間違いなく武器になるはずだ。
ハンドリングも素晴らしかった。これだけハイパワーだとFFならではのネガが出てしまいそうだが、シャシ剛性の高さでしっかりとカバーしている。
旋回でフロントに荷重を乗せていくとスッとリヤが出るのだが、電子制御が出過ぎをほどよく抑えてくれる。
巨大なローターを備えたブレーキがまた秀逸で、非常にコントローラブル。ブレーキを使って意のままに荷重移動できるから、アンダーステアやオーバーステアを出すことなく、フロントからグイグイと引っ張られるようなドライビングが可能だ。
今回は広報車ということで、タイヤとブレーキを傷めないよう、ほんの数周、確認レベルのペースで走っただけだった。それでも筑波コース2000で軽く1分5秒台をマークしたので、ニュルブルクリンクにおけるFF最速の称号は伊達でない。
Sタイヤのようなハイスペックタイヤに替えるだけで、1分3秒台は余裕だろう。あまりに楽にタイムが出てしまうので、FF使いとしてはテクニックの使いどころがなく、拍子抜けするほどだった。
シャシ剛性とパワーのバランスが本当に優れていて、ルノーの開発者たちがサーキット走行を楽しみながら作り込んだだろうことが伝わってくる。
さらに楽しめたのが、筑波コース1000だった。コース2000では慎重にドライビングしたが、ショートコースということで少し攻め込んでみたのだ。
すると、きれいにリアがスライドして、なおかつ非常にコントローラブル。スッと収束させることも容易だし、アクセルを踏み込んでいけばフロントから気持ちよく引っ張ってくれる。自分でリアのスライド量を加減しながらのドライビングは、純粋に楽しかった。
300psエンジンに目を奪われがちなメガーヌR.S.トロフィーRだが、このクルマの面白さの本質は自由自在なハンドリングにあったのだ。
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