パッと見はキワモノだけど実は大真面目!? ブランドイメージと異なる珍車5選
くるまのニュース / 2021年1月23日 6時10分
ブランドイメージというのはメーカーにとって非常に重要なものです。なかでもスポーツカーや高級車などに特化したメーカーは、そうしたクルマを作り続けることで、ユーザーから絶大な人気と信頼を得ているといえるでしょう。しかし、そんなブランドイメージとは異なる車種を販売した例も存在。そこで、ブランドイメージからかけ離れた珍しいクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
■ブランドイメージを覆すような珍車を振り返る
自動車メーカー各社には、なんらかのブランドイメージがあります。さまざまな車種を展開しているメーカーではブランドイメージが希薄になりがちですが、スポーツカーや高級車などに特化したメーカーはブランドイメージを非常に重視しており、これがユーザーから絶大な人気と信頼を得ることにつながっているといえるでしょう。
たとえば、現在、世界的に人気が高いSUVですが、フェラーリは未だにSUVを販売していません。
一方で、さまざまな理由からブランドイメージを覆すような車種を展開したケースも存在。そこで、ブランドイメージからかけ離れた珍しいクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
●キャデラック「エスカレードEXT」
ラグジュアリーなピックアップトラックとして満を持して登場した「エスカレードEXT」
キャデラックは米ゼネラルモーターズが所有する高級車ブランドで、誕生から100年以上もの長い歴史があります。
かつて、キャデラックを所有することはアメリカでは成功者の証であり、過去30年ほどは大統領専用車にキャデラックの名が使われるなど、高級車ブランドとしての地位を不動のものとしています。
このキャデラックから2001年に発売されたのが、同ブランド初のピックアップトラックである「エスカレードEXT」です。
ベースとなったのは巨大なフルサイズSUVですが、大元はシボレーのSUV「サバーバン/タホ」とあって、ピックアップアップトラックに仕立てるのはそれほど難しくはなかったと思われます。
2007年には2代目が登場。エンジンは6.2リッターV型8気筒OHVを搭載し、最高出力は410馬力を誇り、内装もキャデラックにふさわしい豪華絢爛なものでした。
また、荷台前部のハッチを開けるとキャビンとつながる機構を採用し、長尺な荷物に対応するなど実用性も重視されています。
アメリカでは税金や保険料でピックアップトラックが優遇されているため、比較的高額な車両価格のモデルでも人気が高いのですが、エスカレードEXTは成功したとはいえず、2015年に3代目エスカレードが登場した際に消滅してしまいました。
●アストンマーティン「シグネット」
超ミニサイズながら高級車としてのオーラがある「シグネット」
英国を代表する高級スポーツカーメーカーといえばアストンマーティンです。創立は1913年と長い歴史のあるメーカーで、第二次世界大戦以前から高性能なスポーツカーを作り、現在は高級かつ高額な2ドアクーペを主力商品として販売しています。
このアストンマーティンが2011年に突如、超小型車の「シグネット」を発売しました。
シグネットはトヨタ「iQ」をベースにしたモデルで、iQの完成車をトヨタから購入して、専用設計のボディパーツや内装パーツが手作業で組み替えら、シグネットに仕立て直す手法で生産。
外観のシルエットはiQと大きな違いはありませんが、アストンマーティンのアイコンにもなっている伝統のフロントグリルや、ボンネットのエアインテーク、フロントフェンダーのエアアウトレットなどで、アストンマーティンらしさが随所に見られます。
内装もシートやトリムに本革をふんだんに使用することで、高級車にふさわしい仕立てで、各部に遮音材の追加や、エンジンとトランスミッションのマウントを変更することで、車内の静粛性を向上させていました。
アストンマーティンがシグネットのような小型車を販売した背景には、メーカーへ課せられた燃費規制をクリアする目的があったようですが、2013年生産を終えてしまい短命でした。
ちなみにシグネットは日本にも正規輸入され、当時の価格は475万円(消費税8%込)からと、iQの3倍近い値段でした。
●ランボルギーニ「LM002」
悪路走破性が高く高級SUVの先駆け的存在だった「LM002」
フェラーリとならぶ老舗スーパーカーメーカーといえばランボルギーニです。このランボルギーニが2018年に発売した高級SUVの「ウルス」は、現在、好調なセールスを記録しています。
実はランボルギーニがSUVを発売したのはウルスが最初ではなく、かつて「LM002」というプレミアムなオフロードカーを販売していました。
ランボルギーニは1977年のジュネーブモーターショーで、アメリカ軍向け高機動車のプロトタイプ「Cheetah(チーター)」を発表し、1981年にはチーターを一般向けにモディファイした「LM001」を製作。
そして、1982年に自社製4.8リッターV型12気筒エンジンを、アルミニウムとグラスファイバーを使用したボディに搭載した「LM002」を同社初のオフロードカーとして発表し、1986年から市販を開始しました。
1986年には、当時、ランボルギーニで最高峰のスーパーカー「カウンタック」用に開発した5.2リッターV型12気筒48バルブエンジンをデチューンして搭載し、駆動方式はフルタイム4WDで、最高速度は210km/h、0-100km/h発進加速7.8秒という当時のオフロードカーとしては驚異的な走行性能を実現。
また、内装はオールレザーで仕立て、オーダー次第でさまざまな装備を搭載できるなど、高級SUVの先駆け的存在でしたが、セールス的に好調ではなく、1993年に生産を終了しました。
今でこそ、超高級SUVは珍しくありませんが、「ミウラ」やカウンタックが代表作だった当時のランボルギーニが作ったオフロードカーは、かなりインパクトがありました。
■一代限りで消えた2台のスポーツユーティリティトラックとは
●メルセデス・ベンツ「Xクラス」
メルセデス・ベンツらしく高級なイメージを醸した「Xクラス」
メルセデス・ベンツは世界的にもプレミアムブランドとしての地位を確立していますが、バンや大型トラックといった商用車の生産にも力を入れています。
そして2018年にメルセデス・ベンツ初のミドルサイズ・ピックアップトラックの「Xクラス」が発売されました。
同社がラインナップする初のダブルキャブ・ピックアップトラックであるXクラスは、日産のピックアップトラック「NP300 ナバラ」がベースで、当時、ルノー・日産アライアンスと共同開発というカタチで誕生。
内外装にはメルセデス・ベンツ流のデザインが反映され、「スリーポインテッドスター」を掲げるフロントフェイスの採用や、インパネまわりも独自にデザインされ、ピックアップトラックでありながら高級感を演出しています。
搭載されたエンジンは2.3リッター直列4気筒ディーゼルターボ、2.3リッター直列4気筒ディーゼルツインターボ、3リッターV型6気筒ディーゼルターボの3種類で、一部地域ではガソリンエンジンも設定。
駆動方式は4WDと2WDがあり、純粋に荷物を運ぶ商用車として使われる「ワークメイト」も用意されました。
デビュー当初からXクラスはピックアップトラック人気が高いアメリカでの販売は想定しておらず、欧州やオーストラリア、南米などの地域に限られていました。そのせいか販売的には失敗に終わり、発売からわずか2年ほどの2020年に生産を終えてしまいました。
●スバル「バハ」
日本で売っていたらヒットしそうなほど斬新なスタイルの「バハ」
前述のとおり、アメリカでは古くからピックアップトラックの需要が高く、仕事で使うだけでなく乗用車のような使われ方や、レジャー用としても人気があります。
そうした背景から1970年代の初頭、スバルのアメリカ法人は日本の本社に向けて、小型ピックアップトラックの開発をリクエストし、1977年に初代「レオーネ4WD」をベースにしたピックアップトラック「ブラット」が発売されました。
スタイリッシュな外観とレオーネで実績を積んでいた悪路走破性の高さから、若者を中心にヒットしましたが、アメリカでは1987年に販売終了となり、スバルのラインナップからピックアップトラックが消滅してしまいました。
そして、2003年に「レガシィ ランカスター(北米では「アウトバック」)」をベースにした、ダブルキャブのピックアップトラック「BAJA(バハ)」を発売し、再びピックアップトラック市場へと復帰。
バハはアウトバックの荷室部分を荷台(ベッド)に作り変える手法で生産され、外観では専用デザインの前後バンパーにオーバーフェンダー、サイドプロテクターが装着され、SUT(スポーツユーティリティトラック)のイメージを強調しています。
搭載されたエンジンは当初、2.5リッター水平対向4気筒自然吸気のみでしたが、2004年に217馬力を誇る2.5リッター水平対向4気筒ターボを追加し、トランスミッションは5速MTと4速ATを設定し、駆動方式はAWDのみです。
バハはスタイリッシュなボディとパワフルなエンジンを搭載したピックアップトラックとして、マリンスポーツやアウトドアレジャーの愛好家から人気となりましたが、より大型のミドルサイズ、フルサイズピックアップトラックほどの需要はなく、2006年に生産を終了。
これ以降、スバルのラインナップにピックアップトラックは設定されていません。
※ ※ ※
SUV人気の世界的な高まりから、前出のウルスだけでなく、マセラティ「レバンテ」やロールスロイス「カリナン」、ベントレー「ベンテイガ」など、それまでSUVをラインナップしていなかった高級車メーカーが次々と市場に参画するようになりました。
その先駆けといえるのがポルシェ「カイエン」で、発売当初は生粋のスポーツカーメーカーであるポルシェがSUVを出したことに、否定的な意見が数多く見られたほどです。
しかし、カイエンは市場に受け入れられてヒットし、その後、エントリーモデルのSUV「マカン」や、エグゼクティブサルーンの「パナメーラ」もヒットするなど、ポルシェのブランドイメージ改革は成功したといえます。
ブランドイメージは時として強力な武器になりますが、一歩間違えると存亡の危機を招きかねませんから、ポルシェの成功は稀有な例でしょう。
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