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アーマーゲー時代の狂気ワイドボディ「AMG 560 SEC」の凄さとは?

くるまのニュース / 2021年1月30日 17時10分

バブル期、フェラーリに並んでヒエラルキーのトップに君臨した「アーマーゲー」こと「AMG」のワイドボディモデルとは、どのようなクルマだったのだろうか。

■バブル期「アーマーゲー」と呼ばれていた「AMG」

 アメリカにおいて冬の避寒リゾート地として知られているアリゾナ州スコッツデールでは、毎年1月中旬から下旬にかけて複数の有力オークションハウスが結集し、世界のクラシックカー業界の一年を占う競売が大挙しておこなわれている。

 それは、新型コロナウイルス禍の真っただなかにある今年も変わることなく、「ボナムズ」や「バレット・ジャクソン」、「グッディング&カンパニー」などの大手各社が、インターネットを活用したオンライン型を中心に、大規模な競売を展開した。

●1989 メルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」

 クラシックカー/コレクターズカーのオークションハウス最大手のRMサザビーズ社は、スコッチデール市内の自動車愛好家向け会員制クラブハウス&車両ストレージ施設「OTTO CARCLUB」を会場に、COVID-19感染対策のために入場制限をおこないつつ、メインはオンラインとする大規模オークション「ARIZONA」を、2021年1月18−22日(18−21日にプレビュー、22日に競売)に開催することになった。

 この「ARIZONA」オークションには自動車だけでも84台が出品されることになったが、そのなかで今回VAGUEが注目したのは、メルセデス・ベンツ「560SEC」をベースとしたAMG製コンプリートカーである。

 まだダイムラー・ベンツ社(当時)傘下に収まる以前の1980年代初頭、アファルターバッハのAMGは、メルセデス製V型8気筒SOHC16バルブ「M117」エンジンに組み合わせる、バンクあたりDOHC32バルブのサンドキャスト(砂型鋳造)シリンダーヘッドを自社開発した。

 加えて、スロットルボディおよび吸気マニホールドの換装により吸気効率をアップ。カムプロフィールも「ホットな」ものとした上に、エキゾースト系も格段にワイルドなものへと刷新したことで、排気量を6リッターまで拡大した最上級版「6.0」では、385psという大パワーをマークすることに成功した。

 このスペシャルな4カム32Vエンジンは、当時のW126系「Sクラス」を筆頭に、C124系クーペにも「ハンマー」のペットネームとともに搭載された。しかしもっともアイコニックだったのは、C126系クーペの「SEC」。しかもワイドボディにとどめを刺すのだ。

 AMGのC126クーペで「ワイドボディ」を成す美しい曲面構成のブリスターフェンダーは、FRP製ながら極めて優れたフィニッシュを見せる。ただし、この時代のSECベースのAMGがすべて装着していたわけではなく、あくまでオプションだったとのこと。

 このオプションの有無は、現代のクラシックカー・マーケットでも相場価格を大きく左右する要素となっているようだ。

 かのバブル期の日本では、なぜか「アーマーゲー」と呼ばれつつ、並みいるスーパーカーたちと同じくらいに憧れの対象となってきたAMG製メルセデスについては、これまでVAGUEでも幾たびかオークションレビューを届けてきたのだが、今回紹介する個体もまた、実は日本と深いゆかりのある1台なのである。

■AMGジャパンがオーダーした1台の評価はいかに?

 今回RMサザビーズ「ARIZONA」オークションに出品された、1989年型「560 SEC AMG 6.0ワイドボディ」は、シルバーに近い「パールグレーメタリック」のボディに「アンスラサイト(グレー)」レザーの組み合わせ。「AMGジャパン」のオーダーにより、バブル真っ盛りの1988年9月に日本に向けて送り出され、翌年わが国で初登録されたという。

●1989 メルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」

バブル期の日本で「アーマーゲー」と呼ばれ、並みいるスーパーカーたちと同じくらいに憧れの対象だったメルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」(C)2020 RM Sothebysバブル期の日本で「アーマーゲー」と呼ばれ、並みいるスーパーカーたちと同じくらいに憧れの対象だったメルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」(C)2020 RM Sothebys

 もともとシュトゥットガルトで作られた量産型560SECは、アファルターバッハのAMGファクトリーに属する熟練工たちによって大変身を遂げていた。

 AMG謹製の6.0リッター32バルブエンジンにワイドボディパッケージまで含めたプライスは、もとより高価なメルセデス・ベンツのフラッグシップSECクーペの車両価格と合算することによって、この時代におけるもっとも高価なロードカーの1台となった。

 きわめて高価なこの価格は、当時もっとも裕福だった愛好家だけがチューニングメーカーのカタログの頂点を堪能できることの証だったのだ。

 今回の出品車両も、特別にエクスクルーシブな「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」の1台。エンジンナンバー/トランスミッションナンバーの双方ともに、まずはメルセデス・ベンツとしてのマッチングナンバーを示している。

 AMGでは「Gen II(第2世代)」と呼ばれている純正フロントフェンダーとフロントバンパーなどのボディパーツには、当時の西ドイツ交通当局が認可したナンバーが記載されている。

 くわえて、5.6リッターから6リッターに増強された32バルブユニットの専用カムカバー、排気マニホールドやスロットルボディにもAMG純正であることに加え、アファルターバッハ工場でエンジンを組み上げた職人のIDコードを示すナンバーが刻まれている。

 さらに、AMG純正の4ピストン式フロントブレーキキャリパーは、AMG純正ビルシュタイン製ショックアブソーバーともども、このクルマのエクスクルーシブな特質を明らかにしているのだ。

 この時代のAMG製コンプリートカーのなかには、最初のオーダー主の意向により、これら純正パーツの一部しか装着されていないものも存在するという。しかしこの個体では、車両全体に最上級のパーツがふんだんに使用されている。

 純正リミテッド・スリップ・デフの脇からリアエンドに抜ける、ステンレス鋼製エキゾーストもそのひとつ。AMGの刻印が施された、ツインのエンドマフラーも装備されている。

 ただフロントフェンダーに装着された、現代の「AMG」ロゴを持つプラスチックバッジのみは、最近になって追加されたかと見えるものの、そのほかは当時そのままの姿を示しており、新品のブリヂストン「ポテンザ」に組みつけられた3ピースの17インチホイールも、新車時以来の純正品が装着されている。

 そして、オークション出品時の走行距離は9万400km。日本にデリバリーされた際のマニュアル&サービスマップの小冊子やAMGのドキュメントポーチ、ジャッキ、スペアタイアなどの純正アクセサリーも添付されているそうだ。

 ところでメルセデス560SEC AMGワイドボディといえば、さる2020年8月に同じRMサザビーズ北米本社が開催したオンライン限定オークション「SHIFT MONTLEY」にて、今回の出品車と同様のワイドボディを持ち、同じく「AMGジャパン」が日本の顧客のためにオーダーした、5.6リッター32バルブの560SEC AMGを紹介したことを記憶している人もいるだろう

 この時には、オークショネアに支払われる手数料も含めれば、エスティメート上限を超える25万3000ドル(約2670万円)で落札されるに至っている。こうした最新例を思えば、今回の「ARIZONA」オークションで設定された17万5000−22万5000ドルというエスティメート(推定落札価格)は、かなりリーズナブルとも思われよう。

 2020年8月に出品された個体が、このモデルを代表する人気色「ブルーブラック」であるのに対して、今回の車両はやや好みの分かれるパールグレーメタリックであること。また、内外装のコンディションや走行距離なども前回の車両ほどではないことなどを加味しての価格設定がおこなわれたものと考えられる。

 今回は「Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品だったことから、たとえ出品者の意に沿わない価格であっても必ず決済されてしまう取り決めとなっていたのだが、現地時刻の22日13時からおこなわれた競売では20万1600ドル、つまり、邦貨換算約2090万円で無事落札に至った。

 これは「ホンモノの」560SEC AMGワイドボディが、依然として大人気であることを裏づけるオークション結果とみて間違いあるまい。

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