大衆車でもカッコイイ! スタイリッシュボディのベーシックカー5選
くるまのニュース / 2021年2月16日 6時10分
コンパクトカーや軽自動車のように庶民の足として活躍するクルマたちは、かつて「大衆車」と呼ばれました。なかでも昭和の時代に発売された大衆車は、ひとつの車種で複数のボディタイプを設定することで、さまざまなニーズに対応しており、スタイリッシュなモデルも存在。そこで、イカしたデザインの大衆車を5車種ピックアップして紹介します。
■昭和の時代は大衆車でもグッドルッキング!
近年、クルマのジャンルを示す言葉のなかで、あまり耳にすることがなくなったのが「大衆車」です。文字どおり大衆=庶民のためのクルマで、1960年代の終わりに誕生し、マイカーの普及に大きく貢献しました。
現在はコンパクトカーやミニバン、軽自動車が大衆車に該当しますが、かつてはセダンや2BOXハッチバックが主流だった時代があります。
なかでも昭和の時代に発売された大衆車では、ひとつの車種で複数のボディタイプを設定するのが一般的で、さまざまなニーズに対応していました。
そこで、大衆車の1グレードながらスタイリッシュなモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●日産3代目「サニー クーペ」
スタイリッシュなフォルムでもはやスペシャリティカーといえる「サニー クーペ」
1966年に誕生した日産(ダットサン)「サニー」は、まさにマイカー時代到来に向けて開発された大衆車です。当初は2ドアセダンのみでしたが、4ドアセダン、2ドアクーペ、ライトバン、ピックアップトラックなどを展開。
その後、1970年に登場した2代目もさまざまなボディタイプのラインナップを継承し、さらにスポーティグレードを設定しました。
さらに1973年デビューの3代目では、海外市場を見据えてボディの大型化が図られ、セダンを軸に、ライトバン、そしてスタイリッシュな3ドアハッチバッククーペがありました。
3ドアハッチバッククーペは、1.2リッター直列4気筒OHVエンジン車が「サニー クーペ」、1.4リッター(後に1.6リッターが追加)SOHCエンジン車が「サニーエクセレント クーペ」と呼称。
フロントフェイスはセダンから踏襲していましたが、テール部分は丸形6灯式ライトの個性的な専用デザインとされました。
また、フロントウインドウから後端まで緩やかなカーブを描きながら傾斜するラインによって、美しいサイドビューを演出。独特な形状のCピラーと三角形のクオーターウインドウも、スポーティかつ斬新です。
もはや大衆車と呼ぶことがふさわしくないほどスタイリッシュなサニー クーペは若者を虜にし、アメリカでもヒットを記録。
1977年に登場した4代目も3ドアハッチバッククーペは継承されましたが、直線基調のデザインに変更され、3代目の美しさや斬新さは薄れてしまいました。
●トヨタ4代目「カローラ リフトバック」
ラインナップでも異端な存在だった「カローラ リフトバック」
トヨタを代表する大衆車「カローラ」は1966年に誕生。2代目からは「レビン」、姉妹車の「スプリンター」では「トレノ」の名で、スポーツグレードが加わりました。
そして、1987年には5代目となるカローラレビン/スプリンタートレノ(以下、レビン/トレノ)が登場。大きなトピックスとして、この代から駆動方式がFFとなったことが挙げられます。
レビンとトレノの外観の違いは、4代目のAE86型を踏襲するかたちで、レビンが固定式ヘッドライト、トレノがリトラクタブルヘッドライトを採用し、イメージは大きく異なっていました。
グレード構成は1.5リッターと1.6リッターのふたつのエンジンにより大きく分けられ、1.6リッターエンジンは先代から継承した4A-GEU型を横置きに搭載。最高出力は120馬力を発揮し、気持ちの良い吹け上がりを実現。
5代目レビン/トレノはレースではシビックの後塵を拝しましたが、クルマとしての品質はさすがトヨタ車というべき高さで、各部の質感などレビン/トレノの方がシビックよりも大きく勝っていました。
●マツダ2代目「ファミリア ロータリークーペ」
ロータリーエンジンを搭載した2番目のモデルの「ファミリア ロータリークーペ」
前出のサニー、カローラの登場よりも早く、1963年に発売された大衆車がマツダ初代「ファミリア」です。同社初の本格的な乗用車としてデビューした初代ファミリアは、ランボルギーニ「カウンタック」を始め、数多くのスーパーカーや名車を手掛けたイタリアのカロッツェリア、ベルトーネによるデザインで、実際に欧州車を思わせる秀逸な外観となっていました。
1967年には2代目がデビューし、外観は比較的オーソドックスなフォルムのセダンを基本として、ライトバン、ピックアップトラックを設定。
そして1968年に、「コスモスポーツ」に続くロータリーエンジン搭載車第2弾として「ファミリア ロータリークーペ」が登場。
ボンネットまわりのデザインはセダンと共通ながら、キャビンは流麗なフォルムのファストバックスタイルに変えられ、とくにロングテールのデザインはスピード感あふれるものでした。
また、フロントグリルは専用のメッシュタイプとなり、センターにはロータリーエンジンのローターを模した形状のエンブレムが装着され、テールライトも丸形4灯式の専用デザインとするなど、ロータリーエンジン車であることをアピール。
その後、レシプロエンジン車は「ファミリアプレスト」の車名に変更され、1973年にはデザインをキープコンセプトとした3代目が登場し、全車レシプロエンジンとなり、ロータリーエンジン車は消滅してしまいました。
■大衆車でもおしゃれに着飾ったモデルとは!?
●ホンダ「シビックカントリー」
実用性と遊び心を両立していた「シビックカントリー」
ホンダは1972年に新世代の大衆車である初代「シビック」を発売。今の軽自動車ほどのコンパクトボディながらFFを採用したことで広い室内を実現し、高い動力性能と優れた経済性によって大ヒットしました。
そして1979年には、デザインは初代を継承しながらもボディをひとまわり大きくした2代目が登場し、1980年にはライトバンをベースにした同社初のステーションワゴンをラインナップ。
このステーションワゴンは「シビックカントリー」と命名され、5ドアハッチバックをベースにリアの荷室部分を伸ばすことで開発されました。
外観の大きな特徴はボディサイドからリアゲートまで木目調パネル(ステッカー)を採用していたことで、アメリカのステーションワゴンを意識したデザインとなっており、発売から最初の1500台にはこの木目調パネルが標準装備だったことから、シビックカントリーのイメージを強く印象づけました。
エンジンは通常のハッチバックが1.3リッターと1.5リッターをラインナップしていたのに対し、シビックカントリーは1.5リッターエンジンのみで、トランスミッションは5速MTとホンダ独自のATである「ホンダマチック」を設定。
また、テールゲートは運転席からボタンを押すだけでロック解除できる、電磁式オープナーが採用されるなど装備も充実し、ステーションワゴンとして使い勝手も良いことから人気となります。
しかし、シビックカントリーの名前は1代限りで消滅。3代目では5ドアハッチバック近いショートワゴンスタイルの「シビックシャトル」が後継車で、シャトルの名は現在も残っています。
●ダイハツ初代「シャレード クーペ」
今見てもかなりアグレッシブなデザインの「シャレード クーペ」
ダイハツは1907年にエンジンメーカーとして創業した、国内でも屈指の老舗の自動車メーカーです。
その後、高度成長期に個人商店の物流を支えた名車「ミゼット」が大ヒットするなど、軽自動車や小型車に特化したメーカーとして成長し、1967年にはトヨタと業務提携契約を締結してトヨタグループの一員となり、1969年に提携第1弾として誕生したクルマが、トヨタ「パブリカ」をベースにしたFRコンパクトカー「コンソルテ」です。
しかし、1970年代にはライバル車が次々とFF化されたことから次第に競争力を失い、ダイハツはFFコンパクトカーの自社開発に着手。
1977年に世界初の量産直列3気筒エンジンを搭載したリッターカーの、初代「シャレード」が発売されました。
ボディバリエーションは、発売当初5ドアハッチバックのみでしたが、1978年に3ドアハッチバックの「シャレード クーペ」が登場。
オーソドックスなスタイルの5ドアハッチバックに対し、3ドアハッチバックは若い世代をターゲットにしたユニークなデザインを採用。「Jライン」と名付けられたリアサイドと、さらにその後方にある直径20cmほどの丸いサブウインドウが特徴でした。
この丸い窓は「マリンウィンド」と呼称され、ヨットやクルーザーに採用されていた窓をモチーフにデザインしており、開放感と個性をアピール。
しかし、初代シャレードは優れた経済性によって支持されましたが、若者から人気があったとはいえず、1983年に発売された2代目ではオーソドックスなデザインに改められ、若者に訴求するモデルは1984年の「シャレード デ・トマソターボ」登場まで待たなくてはなりませんでした。
※ ※ ※
現在は、ひとつの車種で複数のボディタイプを設定するモデルは少数派になってしまいました。セダンとステーションワゴンをラインナップするのは欧州車では珍しくなく、国内でもカローラや「マツダ6」が採用していますが、そうしたモデルはわずかです。
むしろ、トヨタ「ヤリス クロス」のように別車種とされるのが主流で、グレードのひとつというよりも派生車とした方が、販売的にも売りやすいのかもしれません。
また、ボディタイプの減少は生産の観点でも合理的で、昔ほどニーズも無いことから、今後もこの流れが続くことでしょう。
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