1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

なぜ中国車は日本登録が難しい? 紅旗「H9」ナンバー取得間近で見えた複雑な基準とは

くるまのニュース / 2021年2月19日 9時10分

中国生産の車両が間もなく日本でナンバープレートを取得し、正式に展開するという発表がおこなわれます。これまで中国生産された車両は日本市場で登録(ナンバー取得)するのが難しいといわれていました。その理由とは、どのようなものなのでしょうか。

■日本上陸後、どんな検査を受ける?

 60年以上にわたって中国の要人に愛されてきた高級車「紅旗」の最上級車種「紅旗H9」が日本に上陸し、実車の撮影や取材をおこなったことはすでに報道されています。
 
 これまで中国生産された車両は日本市場で登録(ナンバー取得)するのが難しいといわれており、「排ガス規制はキチンとクリアできているのか」「今まで純中国車(乗用車)はナンバーついたことない。ホントに登録できるのか?」などの声も出ていました。
 
 では、今回の紅旗・H9はどのようにして日本のナンバーを取得したのでしょうか。

 自動車運搬船による海上輸送や、貨物機による航空輸送などの輸送手段に関わらず、日本国内に入って最初に直面するのが通関手続きです。

 輸入申告書やインボイスなどを用意し、輸入するクルマが保管されている港・空港を管轄する税関で通関手続きをおこない、そこで「自動車通関証明書」が発行されます。

 通関証明書は日本国内での正式登録時は当然ですが、整備や各種検査で移動する際に必要な「自動車運行臨時許可(通称:臨番、仮ナンバー)」を各市区町村の役所で交付してもらう際にも必要です。

 通関証明書から仮ナンバー取得のあとは、自動車排出ガス試験(通称 ガス検)と加速走行騒音試験のふたつの試験を受けることになります。

 自動車排出ガス試験は、シャシダイナモメータに直結したローラ上で一般の道路走行状態と同じ負荷を加えながら走行し、その間に排出されるガスの量を計測します。

 加速走行騒音試験は定員分のウェイトを載せ、時速50キロで進入後、フルスロットルで走行した状態の騒音を計測する試験となります。

 両試験ともに日本国内の基準に適合するためには不可欠な試験ですが、「58協定」(1958年に締結された国連欧州経済委員会(ECE)の多国間協定『車両等の型式認定相互承認協定』のこと。日本は1998年に加盟)の締結国で製造される自動車や、製造者による技術適合証明などの書類があればこれらの試験は免除となる場合もあります。

 中国はアメリカ同様、58協定の締約国ではないため、紅旗・H9はこれらの試験をまず受ける必要がありました。

 ガス検と騒音試験は主に国が指定する主に3つの専門機関で試験を受けます。

 紅旗・H9はいずれも一発合格となりました。同時に受けた別の外国製中古車は複数回不合格になっていたそうです。

 紅旗・H9は、中国が2020年から適用する独自の排ガス基準「軽型汽車汚染物排放限値及測量方法(中国第六階段)」(日本語訳 小型自動車車排出ガス基準及び計測方法(中国第六段階)、通称 「国VI」(くにろく)をクリアしているため、ガス検などの試験も余裕で合格したとのことです。

 なお、中国独自の排ガス規格「国VI」は基準の異なる「国VI a」と「国VI b」が存在し、新車に対して前者は2020年7月までに、後者は2023年7月までに満たすことが義務付けられています。

 とくに「国VI a」は欧州連合(EU)が制定する最新基準の「EURO 6」よりも厳しい基準です。

 紅旗H9は、その厳しい「国VI a」に適合しているのですから、日本での排ガス試験も特段難しいことではなかったのでしょう。

■中国第一汽車の全面バックアップで技術適合も問題なし!

 ところで、なぜ中国車は日本で登録をすることが難しいといわれてきたのでしょうか。

 実は、純中国車であっても、すでに日本で登録されているクルマがあります。

 バスやトラックなど架装部分の仕様が多様に存在するクルマの場合、乗用車に比べて合理的で簡素化された検査システムを用いての審査となるため乗用車よりはかなりハードルが低くなります。

 その代表的なものが比亜迪(BYD)の日本法人となるビーワイディージャパン株式会社によって輸入されている各種のBYD製電気バスです。

 2015年に京都市内の路線バスに採用されたのを始まりとして、全国各地の路線バスや上野動物園のシャトルバス、羽田空港での職員用シャトルバスなどにも採用されてきました。

 BYDジャパンでは日本のニーズに合わせて開発された新型電気バス「K8」を、2025年までの5年間で2000台販売することを計画しています。

 一方、乗用車の場合は現地ディーラーからクルマを買って輸入する並行輸入車において、日本での登録は非常に困難であるとされてきました。

 前述したように、欧州各国や韓国、日本が締約する58協定の締約国で生産されたクルマであれば、各国の保安基準に適合する安全性を備えているとみなされるため(認証の相互承認)、とくに苦労もなく日本で登録することが可能ですが紅旗・H9は58協定に入っていない中国で生産されています。

 日本国内の公道を走るための登録には製造者(紅旗の場合は第一汽車)から直接、安全を証明できる書類が必要となります。

 今まで中国で生産されたクルマが研究目的でナンバーを取得しない「輸入」は可能でしたが、「登録」は非常に難しく、莫大な費用が掛かるといわれてきたのもこの制度が大きく関わっています。

 今回の紅旗・H9の日本進出は紅旗を展開する第一汽車主導でおこなわれています。

 第一汽車とは、中華人民共和国で最初に設立された国営自動車メーカーで、紅旗ブランドは中華人民共和国の歴史と深く関わっている伝統のブランドです。

 中国建国の父、毛沢東主導の第一次五カ年計画によって1953年に設立され、1958年に毛沢東が軍事パレードを閲兵するための専用車として最初の紅旗を完成させました。

 そのため、中国の国営メーカーとなる第一汽車主導でおこなわれているため、日本で登録するために必須となるこれらの書類も問題なく入手可能となるため、保安基準適合のためのプロセスもスムーズにおこなわれているのです。

中国の高級ブランド「紅旗・H9」が日本に上陸した様子。写真は、最初の3台中国の高級ブランド「紅旗・H9」が日本に上陸した様子。写真は、最初の3台

 紅旗・H9が「道路運送車両法」が定める「保安基準」に適合するためには、前述の承認に必要な各種書類はもちろんですが、細かい部分で突起物や灯火類などが「日本の保安基準に適合しているか?」などの確認、調整をおこなうことになります。このような作業を「保安基準適合のための改善作業」といいます。

 なお、輸入販売元によれば、中国での保安基準はほとんど日本と一緒となるため、日本の保安基準にクリアするための改善作業もそれほど多くないとのことです。フロントグリル部の赤く光るエンブレムも解錠時のみ点灯する仕様なので、日本の保安基準には引っかからない仕様となっています。

 間もなく、第一汽車および、日本の輸入元から紅旗・H9の販売に関する正式な発表が出される予定です。

 日本へ輸入されるモデルやグレードの詳細や価格はそのタイミングで公表されます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください