2個もターボがあるなんてステキ! 往年の国産ツインターボ車5選
くるまのニュース / 2021年2月22日 6時10分
現在、ターボエンジンは高性能モデルだけでなく、エコカーにも広く普及しています。一方、1980年代に一気に普及した頃のターボエンジンは、出力は向上したものの扱いにくい部分もありました。それを解消するために採用されたのが「ツインターボ」です。そこで、往年の国産ツインターボ車を、5車種ピックアップして紹介します。
■走り好きが憧れた国産ツインターボ車を振り返る
1979年、日産は「セドリック/グロリア」に国産車で初のターボエンジンを搭載しました。そこからターボ車は急激に増加し、1980年代にはメーカー間でパワー競争が始まって国産車の高性能化が加速。
しかし、ターボによってパワーアップは実現したものの、大きな課題として、アクセルを踏んでから出力が立ち上がるまでに時間がかかる「ターボラグ」がありました。
ターボチャージャーは排出ガスのエネルギーを使ってタービンを回し、空気を圧縮してエンジンに強制的に送り込むコンプレッサーのひとつですが、排出ガスの流速が速くないと空気が満足に圧縮されず、パワーが得られません。
アクセルを踏み込んでからブースト圧が上がるまでの時間的なロスをターボラグと呼び、各メーカーともターボラグの改善に取り組みました。
そして、採用されたのが「ツインターボ」で、文字どおり2個のターボチャージャーをエンジンに装着。
ターボチャージャーを小型化することで、タービンの慣性重量を抑えてターボラグを改善し、ふたつのターボチャージャーによってブースト圧を高める効果で、レスポンスの改善と出力向上の両立が図られました。
後にツインターボは、2リッタークラス以上のモデルに次々と採用されることになりました。そこで、往年の国産ツインターボ車を、5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「マークII/チェイサー/クレスタ」
日本初のツインターボエンジンを搭載した「マークII3兄弟」の1台「クレスタ」
国産車で初のツインターボエンジンを搭載したのは、1984年に登場したトヨタ5代目「マークII」と「チェイサー」、「クレスタ」を含む、いわゆるマークII3兄弟です。
ハイソカーというムーブメントをけん引していたマークII3兄弟も、パワー競争の真っ只中に置かれ、1985年に2リッター直列6気筒DOHCツインターボの「1G-GTEU型」エンジン搭載車を追加ラインナップしました。
最高出力は185馬力を発揮し、最大のライバルであった日産6代目「スカイライン」がグロスで205馬力でしたから、実質的にはマークII3兄弟が2リッタークラスでトップに君臨。
さらに直列6気筒DOHCにツインターボという組み合わせもスカイラインを凌駕しており、マークII3兄弟の人気はさらに高まりました。
この1G-GTEU型エンジンは、トヨタのミドルクラス以上の2リッター高性能モデルではスタンダードなエンジンとなり、2代目「ソアラ」やA70型「スープラ」にも搭載され人気を博し、最終的には210馬力まで出力が高められています。
●日産「スカイラインGT-R」
伝説的名機といわれる「RB26DETT型」エンジンを搭載した「スカイラインGT-R」
日産もトヨタに負けじとツインターボエンジンを開発し、1989年に発売された4代目(Z32型)「フェアレディZ」に搭載。3リッターV型6気筒DOHCツインターボの「VG30DETT型」エンジンは、最高出力280馬力を絞り出し、これがきっかけで国産メーカーによる馬力自主規制上限値が決まったといわれています。
そして、4代目フェアレディZ登場のすぐ後には、3代目となるスカイラインGT-Rがデビュー。
16年ぶりに復活を果たしたスカイラインGT-Rは、市販車をベースにしたグループA規定の「全日本ツーリングカー選手権」で勝つことを目的に開発され、エンジンは2.6リッター直列6気筒DOHCツインターボの「RB26DETT型」を搭載しました。
最高出力は前述のとおり280馬力に設定されましたが、実際のポテンシャルは400馬力以上も可能だったといわれています。
さらに、スカイラインGT-RはRB26DETT型エンジンに、FRを基本とする可変トルク型4WDシステムの「アテーサE-TS」が組み合わされており、1990年シーズンのレースから参戦。
初戦でデビューウインを飾り、その後も勝ち続けた結果29連勝を達成し、グループA規定の全日本ツーリングカー選手権は終焉。トップカテゴリーでは、あまりにも強すぎるスカイラインGT-Rに対抗できるライバルがいなくなったためです。
●三菱「GTO」
新世代の4WDスポーツカーとして開発された「GTO」
かつて三菱には「スタリオン」というスポーツモデルが存在しましたが、昭和の終わりには旧態依然とした設計の古さは否めず、新たなスポーツカーを開発。
そして1990年に、スタリオンの後継車として登場したのが「GTO」です。
北米市場を意識したGTカーとして開発されたGTOは、全長4555mm×全幅1840mm×全高1285mmのワイド&ローな3ドアファストバッククーペで、迫力あるフォルムはまさに新世代のスポーツカーにふさわしいものでした。
搭載されたエンジンは3リッターV型6気筒DOHCで、最高出力225馬力の自然吸気に加え、最高出力280馬力を誇るツインターボが設定され、駆動方式は全グレードともフルタイム4WDを採用。
同時期に発売されたフェアレディZやスカイラインGT-Rが直接のライバルでしたが、GTOは1.7トンに迫るヘビー級のボディだったことから、スポーツカーとしてのポテンシャルは両日産車にアドバンテージがあったといわれています。
しかし、スポーツカー然としたデザインの外観や、オールラウンドな走りが期待できる4WDのGTカーは大いに魅力的な存在で、人気を獲得しました。
■出力とレスポンスを両立した「シーケンシャル・ツインターボ」の2台
●スバル「レガシィ」
2リッターエンジンで初めて280馬力に到達した2代目「レガシィ」
ツインターボには大きく分けて2種類が存在し、前出のRB26DETT型のように常にふたつのターボチャージャーで過給するタイプと、低回転域ではひとつのターボチャージャーで過給し、高回転域ではふたつのターボチャージャーで過給する「シーケンシャル・ツインターボ」と呼ばれるタイプがあります。
このシーケンシャル・ツインターボを搭載したモデルが、1993年に登場した2代目スバル「レガシィ」です。
トップグレードには初代から継承した「EJ20型」水平対向4気筒DOHCエンジンをベースに、ふたつのターボチャージャーが搭載され、水冷式から空冷式にあらためられたインタークーラーを装着し、最高出力は250馬力を発揮。
なお、スバルではこのエンジンを「2ステージツインターボ」と呼称していました。
さらに、1996年のマイナーチェンジでは、セダンの「RS」グレード5速MT車が、2リッターエンジンでは日本初となる280馬力に到達。
ほかにもビルシュタイン製倒立式ダンパー、17インチタイヤなどが装着されるなど、280馬力の出力を受け止めるにふさわしい足まわりにアップデートされています。
●マツダ「RX-7」
最後のロータリーターボエンジン搭載車となった「RX-7」
マツダの現行モデルでは「CXシリーズ」に代表されるSUVが主力車種となっていますが、かつてはライトウエイトスポーツの「ロードスター」と並び、ハイパフォーマンスカーの「RX-7」が存在しました。
RX-7は「サバンナ」から続くロータリーエンジンのスポーツモデルで、最終モデルの「FD3S型」は1991年に発売。
ハイパワーなロータリーターボエンジンを搭載したピュアスポーツカーとして開発されたモデルで、曲面を組み合わせた美しいフォルムのボディが特徴です。
エンジンは654cc×2ローターのシーケンシャルツインターボが搭載され、仕組みはレガシィと同じく、低回転域でシングル、高回転域でツインと、ターボチャージャーの作動が制御されました。
発売当初は最高出力255馬力を発揮しましたが、段階的にパワーアップが図られた結果、1999年には280馬力に到達。
その後、排出ガス規制の対応が困難ということから、2003年に生産を終了してしまいましたが、ロータリーターボエンジンを搭載した最後のスポーツカーということとから、現在も国内外で高い人気を誇っています。
※ ※ ※
いまでも高性能車ではツインターボを採用したモデルが存在し、国産乗用車では日産「GT-R」やスカイライン、海外モデルではメルセデス・ベンツやポルシェなどがラインナップしています。
さらに、かつてBMWでは直列6気筒ディーゼルエンジンに3つのターボチャージャーを搭載したトリプルターボ、現行モデルのブガッティ「シロン」では、W16気筒エンジンで4つのターボチャージャーを搭載したクワッドターボもあります。
確かに、ターボチャージャーの数を増やせば、より自然なフィーリングで高出力化は可能ですが、コストやスペース、整備性の問題もあり、やはりツインターボまでが一般的です。
また、近年はシングルターボでも吸気管長の短縮や、エンジンの制御技術の向上で、ターボラグをほとんど感じさせないレベルまでレスポンスが向上しています。
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